聖徳太子研究の最前線

聖徳太子・法隆寺などに関する学界の最新の説や関連情報、私見を紹介します

戦中・戦後の聖徳太子観変化に関わる近代仏教史研究会(6月4日)での二つの発表

2011年05月14日 | 聖徳太子・法隆寺研究の関連情報
 日本近代仏教史研究会の研究大会が6月4日に開催されます。このうち、「シンポジウム」でのクラウタウさんの発表と「個人発表」の部の石井発表は、近代日本のナショナリズムと聖徳太子の関係に関わります。

日本近代仏教史研究会 第19回研究大会
於 淑徳大学 埼玉みずほ台キャンパス 1号館206教室

【個人発表】
9:30 徳永前啓(立正大学大学院)
   「近代日蓮教団の動向--松森霊雲の行動を中心に--」
10:00 ベルナット・マルティ・オロバル(バレンシア大学)
   「清沢満之の宗教哲学における霊魂滅否論について」
10:30 森新之介(日本学術振興会)
   「鎌倉新仏教史観の形成過程」
11:00 坂輪宣政(立正大学日蓮教学研究所)
   「東京の寺院の敷地移動--明治維新前後を中心に--」
11:30 石井公成(駒澤大学)
   「「人間聖徳太子」の誕生--戦中から戦後にかけての聖徳太子観の変遷--」
(昼休み)
13:30 山本彩乃(仏教大学大学院)
   「近代仏教メディアの誕生とそのメディア学的意義」
14:00 栗田英彦(東北大学大学院)
    「真宗僧侶と岡田式静坐法」
14:30 寺戸尚隆(龍谷大学)
   「戦時教学としての「日本仏教」と林銑十郎内閣」

【シンポジウム:十五年戦争と近代仏教】
15:10~
  八木英哉(浄土宗総合研究所)
  「『時局伝道教化資料』に見る浄土宗の戦時布教方針
    --特に天皇=阿弥陀仏の表現について--」
  オリオン・クラウタウ(日本学術振興会)
   「十五年戦争期の日本仏教論--アカデミズムを中心に--」
  白川哲夫(甲南大学)
   「もうひとつの靖国--戦死者追弔の近現代史--」
 司会:大谷栄一(佛教大学) コメンテータ:武田道生(淑徳大学)

 クラウタウさんの発表は、以前、このブログの「「聖徳太子→鎌倉仏教」という図式:オリオン・クラウタウ「一五年戦争期における日本仏教論とその構造」」という記事で紹介し、かなり関心を呼んだ論文を踏まえたものですね。「アカデミズムを中心に」という副題が示すように、宮本正尊・花山信勝など東大印度哲学科の仏教学者たちを中心にして検討する予定とのことでした。森新之介さんの「鎌倉新仏教史観の形成過程」という発表も、この問題に関係しそうです。

 私の発表は、15年戦争時に国家主義的な聖徳太子像が声高に説かれた一方、重苦しい状況下で太子の「世間虚仮」の語や「共に是れ凡夫なるのみ」の語に着目して「凡夫を自覚した太子」といった面を重視するようになった人や、敗戦後にころっと変わって「民主憲法の元祖」などと言い出した人などを中心として、戦中から戦後にかけての太子観の変遷を追う、というものです。こちらは、仏教学・仏教史学以外の分野の学者、民間の超国家主義運動家、文学者その他も扱う予定です。

 会員以外も参加可能ですが(大会参加費1000円、懇親会費5000円)、当日は学生食堂が使えないため、昼食希望者や懇親会参加希望者は、事前の申し込みが必要だそうです。
大会事務局: dosho[アットマーク]ccb.shukutoku.ac.jp