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僕の前世はたぶんオランダ人。

おもしろきこともなき世をおもしろく

オーデュポンの祈り(伊坂幸太郎)

2023年12月08日 | よむ

なんと2000年の著者デビュー作!
人気作家の活躍はここから始まったのか。
2000年デビューってなんだか親しみを感じる。
一人称で淡々とすすむ大事件に
村上春樹とよく似た文体を感じるが
本人は読んだことないらしい。
そんなこともあるのね!
散文的にたくさんの登場人物が現れて
深く掘り下げられることなく退場してゆく。
登場人物は一様に色んな意味で無機質で
熱意をもって行動していたのは
ロクちゃんくらいではなかろうか。
伊坂幸太郎はどの本を読んでも
似た趣味にシンパシーを感じることができ
出現するたびにそれはもう歓喜の声をあげているのだが
デビュー作の本作には
なぜかそれが一度も顔を出さない。
が片鱗を感じることはできる。
淡々と抑揚なくすすめたのも意図的なもので
ファンファーレを鳴らすが如く
曇り空がパッと晴れ渡るように
ラストシーンを登場させたかったからじゃないかな。

徳川家康(山岡荘八)

2023年12月04日 | よむ
なんとか年内に読了したーっ!
全26巻の旅は実に長かった。
特に同タイミングで読み進めていると思われる読者と
図書館で次巻の争奪戦を繰り広げていることに気づいた後は
保有冊数の多い巻を急ぎで読み進め
延長・予約を繰り返して
デッドヒートを繰り広げたものだ。
しかし家康ほど有名な武将はなく
書き手によって表情の異なる武将も少なかろう。
今年の大河ドラマどうする家康は
山岡家康がベースになっていると思われる描写が多いが
本家山岡家康では
世界平和のためなら全てを犠牲にする。
という考えが根底にあり
それは第1巻から完結の26巻まで
揺るぎのない本流となっている。
さすがに26巻もあるので
家康出生時の三河・尾張事情や
今川家との交わり、
武田との境界戦と
細かい事情がふんだんにページを割いて描かれている。
特に関ケ原後の
宗教戦争、忠輝・伊達処遇、大久保事件等は
並の資料では触れられることも少ないので
実に今日深かった。
家康を知るうえでの必読書、
バイブルと言って差し支えない一冊。

徳川家康1(山岡荘八)

2023年03月08日 | よむ
どうする家康に感化されたといえば嘘になるが
2023年は東照君家康公と心中するつもりで
全26巻に手を伸ばす。
序盤は徳川家が今川家に吸収される背景を丁寧に描くことにより
家康のもつ劣等感と孤独に深みをもたている。
中盤以降、
どのように天下を志すのか
興味は尽きないが
まずはトラの化身
松平竹千代の生誕を祝おうとおもう
出だしの1巻であった。

マークスの山(髙村薫)

2023年03月06日 | よむ
今から30年前、
1993年の直木賞受賞作品。
山の経験者か否かで
イメージが随分と変わりそうな1冊。
2000年代の
このオチ以外でしょ?!
の主張が激しい作品群よりも前の作風で
無骨な警察小説の部分を感じながらも
当時としては新しめのサイコパスといった新しい要素が取り込まれている。
ハーケンは痛いぞ・・・。

そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ)

2022年11月03日 | よむ
2019年本屋大賞。
石原さとみの思わせぶりな表情の
映画予告編が印象的。
すごくミステリアスな実写版と裏腹に
文庫版では
ただただハートフル。
これといったミステリー要素も
伏線も回収もないまま
大演壇で幕が下りる。
映画の予告を見なければよかったかもしれないが
予想外の展開を過度に期待しながらページをめくることにより
勝手に肩透かしされてしまったホームドラマ。