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僕の前世はたぶんオランダ人。

おもしろきこともなき世をおもしろく

塞王の楯(今村翔吾)

2024年01月28日 | よむ

うわぁー
これ読みたかったんだー。
な2022年1月の直木賞受賞作。
電車広告は偉大だな。
分厚いけれど一気に読めてしまう。
既読感があると思ったら
のぼうの城にまぁ似てる。
近江の国が舞台だが
百地三太夫は出てこない。
中国故事の矛盾を
日本の戦国に場面を移した
砲術vs城壁の熱い戦い。
熱すぎて時折目頭が熱くなる。
戦国末期の15年のみ存在し
関ケ原前哨戦となった
「大津城の戦い」を描いたもの。
京極高次と立花宗茂という
珍しい武将が出てくるのも面白い。
よくあるっちゃよくあるし
王道っちゃ王道の定番エンタメ作品なのだが
熱くならずいられない。
実写化を前提に書かれた作品のように思えるので
しゅららぼん、
翔んで埼玉2に続く琵琶湖作品として
ぜひ映画館でお会いしたいものだ。

黒祠の島(小野不由美)

2024年01月20日 | よむ

ジャパニーズホラーの第一人者
小野不由美の2001年作品。
祟り・呪いといったお得意分野かと思ったら
サスペンス・ミステリーのカテゴリーだった。
金田一耕助がドタドタ駆け寄ってきそうな
土着慣習ものミステリー。
あれやこれやと考察しながら
没頭せずに読み進めると
なんとなく思った展開になったりならなかったり。
ガッチガチに世界観にはまり込んで
ミスリードにしっかり乗ってのめり込むのと
どっちが正解なんだろう。
馬頭観音と土着宗教については
大変勉強になりました。
国内に残った黒祠は実在するのだろうか。
封建時代のキリスト教も
独自の発展を見せていそうで面白いだろうな。

按針(仁志耕一郎)

2024年01月07日 | よむ

歴史小説って
アマチュア作家さんのような方が執筆したような作品が多くあり
文庫コーナーなんて
ちょっと凝った連作物のようなタイトルで
あふれかえっていて
その敷居の低さがまたよさになっているわけだが
これもその一つなのだろうか。
なじみのない作家さんだが
つい先日読了したばかりの
徳川家康つながりで
「按針」のタイトルにひかれて手に取った。
いわずもがな青い目の侍こと
三浦按針の伝記小説なわけだが
現代風な描写も多く
かなり読みやすい。
すいすいと片手間に3日もあれば十分なほど。
徳川期は完全なるサ・コ・ク!
として歴史を学ぶが
世界史の一つとして俯瞰的に日本史を眺めると
しっかり世界とのつながりがあったことが分かる。
これだけで歴史の面白みがグンッと増すというものだが
なんでこのダイナミックさを教科書で伝えないかなぁ。
関ヶ原の5カ月前に漂流したということで
家康の天下統一に大きな役割を果たしたことは間違いないが
秀忠以降の将軍に重宝されなかったのは残念。
家康が長生きした場合
ウィリアムアダムスをどう用いて
大海原へ漕ぎ出していったか
もう少し見たかった。
欧州新興国と古豪との宗教戦争、
地球一つ分の制海覇権争い、
金銀財宝の経済戦争に
対峙する日本という構図で見ると
日本史が一層面白くなる。

パーク・ライフ(吉田修一)

2024年01月01日 | よむ

2002年の芥川賞受賞作。
日比谷公園を出たり入ったりするのみで
ただただ事件は起きない。
一人称の僕でやりきると
どうしても村上直樹が脳裏をよぎってしまう。
まぁ
公園をぷらぷらしている人の日常なんて
往々にしてこんなものだろう。
近所の公園でなく
新宿御苑サイズの公園でなく
雑多な往来のある都心の空間てところがちょうどいい。

この公園を時折上空から見下ろす機会があるが
次はゆっくりベンチに座ってみよう。
と思えるような
人間観察ブック。

空白を満たしなさい(平野啓一郎)

2023年12月18日 | よむ

少し前にドラマ化した「平野版黄泉がえり」。
初期平野作品とのことで
分人なんかもまだまだでてくる。
今まで読んだ平野作品の中では
圧倒的に読みやすい。
ハードカバーと文庫本の間のような製本も
敷居の低さの表れなのだろうか。
音楽に例えると
ピンクフロイドの
「コンフォータブリーナム」と
「ザウォール」を
交互にきいているようで
心の痛みと麻痺が波のように襲ってくる。
相変わらず虚実の織り交ぜ方が変態的で
現実と想像の境がわかりにくい。
この世で絶対なんてことはないが
生まれた後に死ぬ。
という理が破られることだけはないんじゃないかと思う。
働きすぎたり
思い詰めたりしないように気をつけよっと。