原発から出る「核のごみ」の最終処分地に応募する自治体が現れた。
北海道寿都(スッツ)町の片岡春雄町長が高レベル放射性廃棄物の「文献調査」に応募する構えである。
選定調査は最終処分地として適当かを3段階の調査を経て決定される。
自治体が調査を受け入れると、最初の「文献調査」で最大20億円が交付金として支払われる。第2段階の「概要調査」は最大70億円支払われる。
いずれの段階も、自治体の意見を十分に尊重し、反対する場合は次の調査に進まないとされている。
片岡町長は「人口減少が進む町の将来を考えると、産業振興のためには財源が必要」、「2年間で20億円は魅力だ」と応募の理由を述べている。
そして「最終処分場の受け入れが前提ではない」としながらも、第2段階の「概要調査」にも意欲を示している。
片岡町長の頭の中は20億円や70憶円の交付金で一杯になっていることだろう。
最終処分場そのものをどの程度現実のこととして認識しているだろうか。
交付金と引き換えにやむなく容認するというのか。それとも最終処分場建設をまったく違和感なく受け入れるというのか。
NUMO(原子力発電環境整備機構)が作成した「科学的特性マップ」では、寿都は処分場としての適性地域として色分けされている。
国やNUMOから片岡町長にさまざまな形で働きかけがあったことは想像できる。
交付金ばかりでなくもろもろの利権や今後の選挙のことも絡んでいるだろう。
ここで仮定をしてみよう。
ある町長が「第1段階の調査に手を上げるが、その先の第2段階の調査は絶対に応じない」と公言して、「文献調査」に応募したらどうなるだろか。
20億円は交付金で貰える。自治体が反対する場合は次の調査に進まない建前なので“貰い得”になる、という理屈は通るだろうか?
ましてや「処分地として適切である」という結論が出たら、「文献調査でお仕舞いにしたい」は通らない。
第2段階の70憶円まではいただくことにして、そのあとの第3段階は断固拒否する、などという芸当ができるはずがない。
梶山経産相は、他の複数の自治体からも問い合わせを受けていると述べた。
寿都町が名乗りを上げたことで、他の自治体が手を上げやすい雰囲気が出来るかどうか今後の注目点だ。
高レベル廃棄物は極めて強い放射線を出し続けるため、数万年~数十万年にわたって人が生活する環境から隔離する必要がある。
そのために最終処分は、硬い岩盤など安定した地層の地下深くに埋める「地層処分」を行うというのが国の方針だ。
しかし、日本にはそのような安定した地層はどこにも無いというのが大方の見方である。
人類が農耕を始めたとされるのがおおよそ1万年前のことである。イエスキリストの時代は2000年前である。
過去の人間の歴史よりはるかに長い先まで、放射性廃棄物を管理しなければならない。
高レベル放射性廃棄物の処理で現実的な手段は、事故を起こした福島第一原発敷地内に貯蔵所を造り、そこに原発の廃棄物を運び込み一手に引き受ける方法である。
それぞれの原発敷地内に新しく貯蔵施設を造って貯蔵することも有効だ。
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