ウクライナに武力侵攻した国がロシアでなかったら、これほどの騒ぎにならなかったと思う。そもそも、アメリカやEUはウクライナを自陣営に引き込みたいと考えているわけではない。
狂気で侵略し問答無用で支配することに、世界中からロシア憎しの声が湧きあがったので、欧米が制裁を強めている面がある。
事実、ロシアの攻撃は常軌を逸しているところがある。避難する「人道回廊」へ弾丸を打ち込む。病院や学校を標的にする。原発を占拠して掌握する。
重要なインフラである原発を支配しようと砲弾を撃ち込めば、一つ間違うと地球規模の大惨事を引き起こす。一体ロシアは何を考えているのか。
SWIFT(国際決済システム)からロシアの銀行が排除されたら、海外との取引で得た外貨を受け取ることができなくなるので、ロシアの経済がひっ迫する。
その一方で、ドイツをはじめロシアからガスや石油、石炭を輸入しているEU内では、エネルギーが断たれると自国経済への影響が大きい、としてロシア銀行の排除は足並みが揃わなかった。
期待されたEU側の遮断は見送られ、ロシア制裁の実弾は発射されなかったと言えよう。
そんな中で3月9日アメリカが単独で、ロシア産原油、天然ガス、石炭の輸入をストップすることを決めた。実弾を発射した。
イギリスも段階的に減らし年内に輸入をストップすると発表した。
さらにアメリカはロシアへの「最恵国待遇」を取り消す措置をとった。ロシアからの輸入に高い関税がかける。EUも追随するか検討に入った。
ロシアにダメージを与えたのは、海外資産の凍結である。
ロシアは外貨を海外の中央銀行に預けているが、これらの資産を欧米が凍結して引き出せなくしたことが効いている。
8年前クリミア併合のとき、ロシアはドルによる経済制裁を受けた。その経験からUSドルを減らしてユーロ、中国元、金などを増やして保有していた。
今回はEUも凍結したので、下落するルーブルをロシアがユーロ使って買い支えることが難しくなった。
さて、ロシアの攻撃を受けてゼレンスキー政権は、体裁を持続させることで精一杯となる。おそらくウクライナ全土が泥沼の内戦のような状況になる。
ロシアは傀儡政権を立てることすら難しい。形だけ出来ても機能しない。
だからといって、広い領土に軍隊を駐留させるのは不可能だ。
長期化すればするほど、ロシアが自壊する可能性が出てくる。
ウクライナとしては長期戦に備えることだ。
ロシアにとって重くのしかかるのが戦費だ。戦争を短期間で決着できなければ財政がひっ迫する。
ロシアとEUとのエネルギー取引はこれからも続くので、SWIFTから排除されなかった銀行を介してユーロ建て外貨がロシアに入る。制裁を受けても完全に遮断されるわけではない。
また中国はロシアとの貿易を拡大して側面支援するはずだ。ロシアが人民元を使った海外取引は可能である。
中国が主導する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」がロシアに資金を貸し出すルートもあり得るが、ロシア救済の融資に中国は及び腰と言われる。
IMF(国際通貨基金)からの救済はもう受けられない(ロシアは過去に一度救済を受けている)。
世界中から噴き出したロシア批難の声が予想外に大きなうねりとなって、各国の企業を動かしたことは驚きであった。
ロシアの銀行がSWIFTから排除されて資金回収に懸念が出ることもあって、ロシアに進出していた各国の民間企業が続々と撤退を始めた。
ガス開発プロジェックトから撤退(日本は苦慮している)。自動車など各国の製造メーカがロシアの工場を閉鎖。スターバックスやマクドナルドをはじめ店舗閉鎖が相次いでいる。
ロシアからの事業撤退や縮小を決断した企業は200社を超えた。
機を見るに敏いロシアの富裕階層は、先を見越して早くからインフレ防衛の行動に出ていたと伝えられる。
都市部ではネットで情報を得た人たちが、ATMに殺到し、反戦デモを行っている。
一方プーチン政権を信じている国民も多く、特に地方では動揺している様子は見られないという。
外から客観的に見たときは「なぜ!どうして?」と思うが、当事者になると案外気づかないのかもしれない。
先の大戦を振り返れば日本人も例外ではない。小学生でもわかる嘘を大人が信じていた。竹やりで戦車と戦う訓練をして、天皇の写真に敬礼していた。
敗戦が決まった時も、「日本が負けると思っていなかった」と多くが述べた。
洗脳され情報統制が敷かれるとたいがいの国民は盲目になるのだろう。
さて、ロシアは軍事大国だが経済的に見ると後進国である。主要産業が鉱物資源と農産物で貧弱だ。
これからは貿易が縮小して外貨が得られなくなるうえ、海外から物資が入らないと物価が急騰する。
戦争が長引けば国家財政は底をつく。国の事業を行う資金が不足する。もしかすると軍事費も賄えなくなる。
たとえてみれば、アル中の旦那がろくな稼ぎ(外貨)もないのに、毎晩飲み歩いている(戦争)。借金(国債発行)しようにも貸してくれるところがない。家計は火の車。
ルーブル紙幣を増刷するとますますインフレが進む。ロシアが疲弊していくのは避けようがない。
インフレで公務員の給与が何分の1にも目減りする。兵士の給与が支給されない状況になるかも。
政府の発表を信じている人たちも、次から次へと進む現実の変化に直面したら、目をさまして実情を察知するようになるはず。
海外からの意見に耳を貸さず、国民の声も封殺するプーチンに忠告できる人物はいない。だが、マグマは徐々に溜まり始めているのではないか。溜まったマグマがどこから噴き出すだろうか。
プーチンは政府や軍を批判するものに対して懲役を科す法律を制定したが、それでも各地で反戦デモ・抗議デモが頻発している。
生活が窮乏し出口が見えない状況に落ちていくとき、国民の不満がプーチンを引きずり下ろすところまで高まるだろうか?
マグマを抱えているのは、経済制裁・金融制裁を科せられて急激に利益を失う人たちかもしれない。
オリガルヒと言われるプーチンを支えてきた新興財閥の面々かも。
それとも、現政権の中枢にいて権力を握ってきたプーチンに近い要人たちか。
プーチンを担いでいると自分たちの権益が干上がる恐れがあると察知したら、彼らは行動を起こすのではないか。
市民のなかに反プーチンの波が沸き上がったタイミングを見計らって、プーチンを失脚させる行動に出る。
そんなストリーが浮かぶのだが・・・。
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