ジジババのたわごと

孫たちさらにその孫たち世代の将来が、明るく希望が持てる時代になってほしい。

お手盛り統計は国を滅ぼす

2019年02月15日 | Weblog
いま問題になっている「毎月勤労統計」は、従業員の賃金、労働時間、雇用の変動を全国的に調べている。国の大変重要なデータの一つである。
このデータは失業保険などの算定に用いられるほか、景気の動向や国民の暮らしが豊かになったかの指標にもなる。GDPの算出にも利用されているので影響が出る。
だから毎月勤労統計は、国勢調査などとともに国の根幹を表す「基幹統計」の一つになっている。

基幹統計には56の統計があるが、国家の政策立案の基本となる統計である。
もしこの基幹統計がわからないと、日本という国が世界の中でどのような位置づけになるか測定できないことになってしまう。
この統計が信頼性に欠けるとなると、すべてに疑いの目が向けられ外国からの投資などにも影響が出る。先進国としての資格を失う



さて毎月勤労統計は、従業員500人以上の大規模事業所はすべて調査する と決められている。
500人未満の小中規模事業所は事業所の数が多いので3分の1を抽出することにされている。


全数行うべき東京都の大規模事業所について厚労省は、内密に2004年から3分の1しか調査しないできた。そして2018年まで17年間続いてきた。
大規模事業所の賃金が小中規模事業所より高いことはわかっている。
賃金の高い大規模事業所が3分の1になったら全体の賃金は低くなる。


この毎月勤労統計のデータは、失業保険、労災保険、育児休業などの算定に用いられている。
すでに支払った延べ約2000万人の給付金を本来の賃金で計算すると、支払額が少ないことが浮かび上がった。
差額をさかのぼって支給すると、事務経費などを合わせると、総額は約800億円にもなるという。
このことが焦点の一つになっている。


賃金の高い大規模事業所数を3分の1にしたら全体の賃金が低くなるから、全数調査に近似させるには3倍にしなければならないことは小学生でも判る理屈だ。
少なくともこの全数調査に近づける補正をしていたら、追加支給になることは避けられたであろう。
だが、こんなわかりきったことをしなかったのはなぜか、謎である。

古賀茂明氏の見方によれば、東京都の大規模事業所は04年のもっと前から3分の1程度しか集計できていない実態にあったのでないか。
3倍にすると前年より異常に上がってしまうので、そのままにしたのだろうと推察している。
だが、そうだとすると、04年のずっと前から給付金が少なく支給されていた、という問題が起きてくる。




ところが、2018年になって厚労省は密かに、実態に近づけようと企み、東京都の事業所分を約3倍にする補正操作をはじめた
この操作で平均賃金額が実態に近づいたのだったが、前年同月比の賃金の伸び率が急に高く出るようになった。

不自然な数値の動きに「ベースアップがない時期なのに賃金が急騰している」などと、疑念の声がほうぼうから高まった

基幹統計を管理する総務省の統計委員会で議題とされることになって、ついに観念した厚労省は「東京都は3分の1しか調査していない」ことを認めた、といわれている。
なお、厚労省は東京以外でも500人以上の事業所について3分の1抽出調査にする予定だったようである。

3分の1しか調査してこなかった17年間の統計不正が、18年になって行った補正(3倍)がきっかけで発覚したわけだが、この補正操作が焦点の一つになっている。

そうなれば、本来はどうであったか、が問題になってくる。
実際に調査されなかった東京の500人以上の事業所の残りの3分の2を計算に入れて再度調べてみたら、この間の「賃金の伸び」がマイナスになっている部分がかなりあるという。
賃金が上がっていると安倍政権が強調してきたことは嘘だったのでないのか、と疑われることになってきた。


組織的な不正・隠蔽だったかが問われてくる。大臣、次官、局長は知っていたか、どのレベルまで関与したのかが問題になる。
不正が明るみに出るなり、厚労省はすぐに外部から有識者をそろえて、内部に特別監査委員会を設置した。
案の定というべきか、「組織的隠蔽はなかった」と早々と調査結果を公表した。
ヒアリングといえるようなものでなく、到底第三者性などと呼べるものでなかった。
原案は厚労省が書いたものだったという


ところで・・・18年のデータについては、別の問題が浮上して追及されている。
500人未満の小規模事業所は、3分の1をサンプル抽出して、それを2~3年ごとに全数入れ替えてきた。
しかし一度に全数入れ替えると差が大きく出るとの指摘があって、2020年から3分の1ずつ入れ替える計画になっている。
経過措置として2017・18年は、2分の1の事業所を入れ替えることになった。

さて18年の賃金について、名目賃金も実質賃金も上昇していると、政府は成果として強調していた。たしかにデータでは18年の賃金が前年と比べかなり上がっている。
しかし、いろいろな機関が試算すると、実際はむしろマイナスになっている、という発表が次々に出てくるようになった。
入れ替えがなかった半分の事業所だけで計算すると、実質賃金はマイナスになる、という。
賃金の伸び率が高くなったのは、調査対象(500人未満事業所)を入れ替えたことに起因している、と浮かび上がったわけだ。

つまりアベノミクスの成果があったように見せるために、恣意的に調査対象を変えたのではないか、という疑惑にいま焦点が当たっている。
不思議なことに、厚労省や政府からは入れ替えによる変動を除いた数値が示されていない。公表するのを嫌っているような印象だ。

なぜこのようなことが起きるのか?
調査対象事業所の入れ替えに関して、厚労省担当者が首相秘書官と接触していたことが明らかになっている。
また麻生財務相の対象事業所の入れ替えに絡む発言のあと、調査が変化しており、忖度や介入が疑われている。


日本の統計は政権の都合でデタラメに集計されていると海外から批判されたとしても、反論できない状況である。
お手盛りで統計を加工したら、粉飾決算と同じだ。

霞が関官僚の劣化・腐敗が目に余る
統計という国家の基幹部分にまで及んできたのかと、危険域を超えた感がある。
その背後に構える安倍政権を抜きには考えられない。

それにしても、安倍政権での改ざんや隠蔽はひどい
財務省の森友加計学園の文書改ざんや隠蔽、 働き方改革での厚労省の裁量労働制の労働時間の捏造、 障がい者雇用率の水増し・・・際限なく続く。


第一次安倍政権の「消えた年金問題」のときは、信じていた自分の年金が将来とんでもないことになるかもしれないという、年金データそのものに対する危機感もあって、国民が強い関心を示した。
安倍政権の度重なる改ざんと証拠隠滅に感覚が麻痺してしまって、少々のことでは驚かなくなっているとは考えたくないのだが。

本来は国会が主導して調査するべきなのだが、自民公明の与党が絶対的な数を確保しているので、拒否されて動きが取れない現状だ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿