「国家安全維持法」を成立させ、香港を完全に掌握して自由や人権を抑え込もうとする中国。
軍事面でも南シナ海の権益拡張に一歩も譲らない姿勢だ。
一方のアメリカは中国への牽制を強めている。
領事館の閉鎖が大々的に報道される。ファーウエイ排除を各国に強要している。
「米中対立が激しくなって、香港の金融センターは壊滅する」というような論説をする評論家や学者が少なくない。
中国嫌いを全面に出して、個人の願望に沿った情報だけを集めて誇大に掻き立てている印象である。
中国が今にも孤立してしまって経済も崩壊するような論調である。
ところが、どの国もせいぜい抗議文を出すくらいしかできない。実質的な対抗措置はとっていない。
中国が各国からかなり警戒されているのは事実である。
強引な領土拡張志向に周辺国から不満や不信が高まっている。香港のほかにもチベットやウイグルの人権弾圧への批判も続いている。
だが、中国と経済的に濃密な関係が築かれているのも事実だ。
中国との経済的取引を損ねてもよいから、香港の自由や人権を支援する、とはならない。
“民主主義のために”自国企業の収益が失われるのは困るということだ。
カネが動くところに吸い寄せられるのはいつに時代も変わらない。
各国は中国の取引に影響が出ないようにしたい、というのが本音である。
国連人権理事会で、先進国など27カ国が「香港国家安全維持法」に反対する共同声明を発表した。
これに対して、中国を支持した国が53カ国もあった。
多くは小国で、中国から経済援助を受けている国が多い。
中国のカネの力を見せつけた格好だ。
そうは言うものの、日本だって例外ではない。
「香港国家安全維持法」制定に反発して、”習近平を国賓として招くことを中止しよう”と、自民党外交部会が決議案をまとめたら、二階幹事長が猛反発している。
日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国にとっても日本はアメリカに次ぐ第二位の貿易相手国である。
中国への企業進出は第一位、直接投資額は第三位で、相互に結びつきは深く依存度が極めて高い。
さてアメリカはどうか。米中対立が激しさを増しているように見える。
貿易摩擦で関税引き上げの応酬、領事館閉鎖の応酬とエスカレートしている。
「香港人権民主主義法」に基づき制裁する。香港に進出している企業を自国に回帰させる。と米中対決がエスカレートしている点を強調している感がある。
しかし決定的な措置は避けている。強硬に出ればアメリカも返り血を浴びる。
アメリカも自国のマイナスになることには踏み込んでいかないだろう。
香港の金融センターとしての機能に影響が出るような強硬な対抗措置をアメリカは取らない。
中国のダメージは表面的だ。
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