ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産法の体系(連載第14回)

2020-03-06 | 〆共産法の体系[新訂版]

第3章 環境法の体系

(2)世界地球環境法の根本理念
 共産主義的環境法の統一的法源となるのは、世界地球環境法である。これは世界共同体が制定する世界法の一つであり、現行の国連条約に匹敵するような法規である。
 この世界地球環境法には、各領域圏が制定する環境法典の基礎を成す重要な環境原則が示される。その基盤にあるのは、共存権の法理である。共存権とは、人類を含む多様な生物の共存の権利を意味する。
 その意味では、生命共存権と言い換えてもよいが、それは仏教における殺生戒のような宗教的な観点からの倫理ではなく、人類を含む多様な生物の生存場である地球環境の保持を導く根拠である。
 すなわち、全生物の共存を図るための地球環境の保持ということである。そこから、現今環境保全上のキーワードとなっている「持続可能な開発(発展)」という用語は、「持続可能な共存」へと置換される。
 「持続可能な開発」とは環境的持続可能性と資本主義的経済開発の両立という理念を含意する標語である。それは資本主義経済の枠内で環境保全も図ろうという折衷的な理念であり、環境破壊を招く開発一辺倒の資本主義を修正する原理としての歴史的意義は認め得るが、用語の組成からしても、あくまで「開発」に主眼を有していることは明らかである。
 従って、「開発」を本質的に阻害するような環境保全策、特に資本主義経済の根幹を揺るがす根本的な政策は回避・否定され、環境保全策は常に中途半端でびほう的な手段にとどまらざる得ない。一方で、環境保全を営利ビジネスに誘引しようとする企図を隠さない。
 世界地球環境法はこのような「緑の資本主義」理念とは根底から決別し、環境法の根本理念を多様な生物生存の持続可能性の保障へと革命的に転換することになるのである。

コメント