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近代革命の社会力学(連載第20回)

2019-09-23 | 〆近代革命の社会力学

四 18世紀フランス革命

(1)概観  
 アメリカ独立革命に若干遅れて、18世紀末の欧州にフランス革命が勃発する。この先、19世紀後半にかけてのフランスは、欧州はもちろんのこと、世界全体においても、未遂を含めた革命が最も頻繁に継起する場所となる。そうしたおよそ一世紀に及んで継起するフランス諸革命の出発点となったのが、1789年に始まるフランス革命である。  
 通常、単に「フランス革命」という場合は、この1789年発のフランス革命を指すことが多いが、当連載では、これを19世紀中のフランス諸革命と区別して、「18世紀フランス革命」と呼ぶことにする。  
 18世紀フランス革命は世界歴史上においてもあまりにも著名な革命であるため、教科書類をはじめとして、内外で様々な角度から膨大な論考がなされているが、当連載ではタイトルに従い、革命の社会力学という観点からとらえ直すことになる。  
 その点、18世紀フランス革命では、民衆蜂起に始まり、革命移行期の動乱、君主処刑、反革命干渉戦争、革命勢力内部の権力闘争とその結果としての革命的独裁、恐怖政治、軌道修正、そして最終的に革命の終息と帝政の樹立という劇的なプロセスが展開された。  
 総体としてみれば、18世紀フランス革命はいったん成功した革命が長期的に失敗した革命の事例であるが、それだけに革命という営為に関わる多くの教訓を含んだ「革命の教科書」と言うべき先例である。
 長期的にも成功した近代革命という点ではアメリカ独立革命が世界初であるが、一国内部での純粋な近代革命という限りでは、18世紀フランス革命が世界初の先例としての意義を持っている。  
 もっとも、アメリカ独立革命は18世紀フランス革命の触媒となり、その独立宣言はフランス人権宣言に影響を及ぼす一方、人権宣言はアメリカ合衆国憲法が当初欠いていた人権条項を修正条項として事後的に追加させる契機となるというように、両者は新旧大陸をまたいで相互に影響し合っている。  
 そうした相互影響を象徴する人物が、ラファイエットである。旧体制貴族ながら自由主義者の彼は義勇兵としてアメリカ独立戦争に大陸軍側で参戦し、帰国後はフランス革命初期に革新的貴族層のリーダーとして活躍し、人権宣言の起草者ともなった。  
 ラファイエットは18世紀フランス革命が急進化していく過程でいったん失権するが、世紀をまたぎ1830年の七月革命で復権し、継起するフランス諸革命においても、二つの革命をつなぐ役割を果たした稀有の貴族革命家であった。  
 19世紀フランス最初の革命となった七月革命は、長いスパンで見れば、18世紀フランス革命が挫折し、旧体制が復活した後、再度の軌道修正としてより民主的な立憲君主制まで巻き戻されたという意味で、18世紀フランス革命の延長と言えなくもないが、社会力学という観点からは、七月革命には独自に考察すべき特徴があるため、後に別途扱うことにする。

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