ザ・コミュニスト

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コネティカットの悲劇

2012-12-16 | 時評

14日、小学校で児童20人を含む26人が死亡する銃乱射殺傷事件が発生したコネティカット州は、今年死刑制度を廃止したばかりの、全米で17番目となる死刑廃止州であった。

懸念されるのは、死刑存置派が悲劇を利用して巻き返し、事件の原因を死刑廃止に求める住民世論が高まり、死刑復活への反動が起きる危険だ。ひいては、2000年代に入って生じている米国における州レベルでの死刑廃止の流れに水を差す恐れもある。

しかし、99年のコロンバイン高校事件(コロラド州)や、07年のヴァージニア工科大学事件(ヴァージニア州)のように、学校という本来最も安全であるべき場での過去の重大な銃乱射大量殺傷事件は、死刑存置州で起きている。

上掲の三事件を含め、こうした事件では加害者は犯行直後に自殺することが多いため、刑罰だけでは処理できない。

米国では銃乱射事件が起きるつど銃規制の是非論が繰り返されるが、銃規制だけの問題ではない。銃規制が厳しい日本でも2001年の大阪教育大付属池田小事件のように、学校現場での刃物による大量殺傷事件は発生している。

ドイツ、ノルウェー、フィンランドなど近年欧州諸国でも起きている銃乱射事件も含め、資本主義社会の若年者に普遍的に見られる攻撃的暴発行動の防止のためには行動科学的及び社会科学的な分析を要する。

大量殺傷事件には誰しも強い衝撃と怒りを感じるが、そうしたある意味では健全な感性的反応をどこまで理性的に昇華していくことができるかで、社会の成熟度が試されよう。右傾化を強める自民党の政権復帰で、死刑執行数の激増もあり得る情勢だけに、日本でも他人事ではない問題である。

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