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民衆会議/世界共同体論(連載第35回)

2018-03-19 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第8章 世界共同体の組織各論②

(3)紛争解決機関
 世界が一つにまとまる世界共同体の下でも、構成領域圏間の境界紛争や特定地域の帰属問題、さらには領域圏内における分離問題などの紛争を完全にゼロにすることはできない。そうした場合に備えて、世共は二段構えの制度を用意する。
 一つは、司法的解決である。このような民際司法は、第一次的には領域圏の地域的なまとまりである汎域圏の民衆会議に設置された司法委員会がこれを担う。汎域圏民衆会議司法委員会(以下、単に司法委員会という)は、紛争当事領域圏以外の当該汎域圏内中立領域圏の出身者たる委員で構成された合議体として設けられた常設機関である。
 司法委員会は紛争当事領域圏の一つが司法委員会に適法に提訴すれば開始され、すべての当事領域圏の合意を必要としない。司法委員会の審決は全当事領域圏を拘束する強制力を持つ。
 ただし、不服の当事領域圏は上訴することができる。その上訴審を担うのは、世界共同体司法理事会である。司法理事会は上訴が行なわれたつど設置される非常設機関であり、理事は紛争当事領域圏以外の中立領域圏の出身者で構成される。上訴審決には終局性があり、三審は認められない。
 国家主権という観念を持たない世共の司法的解決には当事領域圏を拘束する強制力が認められるから、ほとんどの紛争は司法的に解決されることを期待できるだろう。しかし、それでも解決がつかない場合の備えとして、世共平和理事会による紛争調停と平和工作が用意される。すなわち―
 武力紛争の発生または発生の現実的危険を認知した平和理事会はまず、紛争当事領域圏以外の中立領域圏に属する専門家から成る「緊急調停団」を任命し、紛争の終結に努める。
 この「緊急調停団」による調停が功を奏した場合も、再発防止と調停履行の監視のため、平和理事会の下に専門的な訓練を受けた要員から成る「平和工作団」を常備し、同理事会の決議を受けて随時紛争地へ派遣することができるようにする。


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