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民衆会議/世界共同体論(連載第36回)

2018-03-20 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第8章 世界共同体の組織各論②

(4)民際共同武力
 世界共同体(世共)と国際連合(国連)の最大の相違は、世共が国家という政治単位によらない点にあるが、そのことはほぼイコール軍隊(国軍)を前提としないということを意味する。世共は国連のような軍隊を保持する「集団安全保障」ではなく、非軍事的な「恒久平和」の機構である。
 従って、世共の憲法に相当する世共憲章は軍備廃止条項を最重要条項とし、世共を構成する領域圏は独自の軍事組織を保有することが許されない。言わば、日本国憲法9条がグローバルに実現されることになるのである。
 そのため、ほとんどの紛争は前回見た二段階の非軍事的なプロセスを通じて解決がつき、世共に固有の武力は必要ないはずである。とはいえ、そうした非軍事的解決に限界がある場合、あるいは紛争解決後の平和監視のために一定の武力が必要となる場合を排除しない。そこで、世共も現実政策として、一定の武装組織―民際共同武力―を保有することは許されてよい。
 その場合でも、民際共同武力は本格的な軍隊組織である必要はなく、現行制度で言えば、フランスやフランス系諸国の憲兵隊のような武装警察組織で必要にして十分である。こうした世共直属の武装警察組織として、輸送目的限定の小規模な海上及び航空部隊も附属する一定規模の警察軍を常備する。
 ただし、この組織は完全な統合的組織ではなく、平和理事会の監督下に、実際の部隊は同理事会と協定を結んだ領域圏が世共の規定に従って隊員募集・訓練を受託管理したうえで、同理事会の派遣決議に基づき、理事会下部機関としての指揮運用委員会が統合運用する方式が現実的であろう。
 以上に対して、地球全体の防衛のための武力を持つべきかどうかという別問題もある。これは現時点ではいささかSF的ではあるが、地球外からの攻撃や、あるいはより現実的に想定され得る隕石衝突などの事態に対する備えである。
 この問題について確定的な結論は急がないが、仮にこうした全域防衛力を保持すべきだとするならば、ここでもそれは本格的な軍事組織である必要はなく、専守防衛型の防空警戒軍のような組織で必要にして十分であろう。
 いずれにせよ、世界共同体はその究極的な姿においては、一切の武力から解放された恒久平和機構であって、現実的な観点から保持される民際共同武力も必要最小限の補充的なものであるべきことが忘れられてはならない。


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