黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ヒア・カムズ・ザ・サン』有川浩(新潮社)

2011-12-22 | 読了本(小説、エッセイ等)
出版社で、編集者として働く古川真也。昔から物や場所に残された人の記憶を読み取ることができる能力を持っていた。
そんな彼は、部署が変わっても担当を続けて欲しいと頼まれるほど、作家に気にいられる性格の、同僚・大場カオルにはコンプレックスを刺激されまくり。
そんな中、真也の関わる雑誌『ポラリス』で、アメリカで大ヒット映画<ダブル>シリーズに関わった謎の日本人脚本家・HALこと白石晴男のインタビューを載せることが決まる。
実は、彼はずっと別れて暮らしていたカオルの父だという。母と自分を捨てて、アメリカへ渡った晴男に対して、屈託のあるカオル。
DVDに収録されていたHALらしき人物が、彼と別人であったことから、偽物ではないかと軽率な編集部員が言い出して……『ヒア・カムズ・ザ・サン』、
同じ出版社で働く真也とカオルは、付き合いはじめて三年の恋人同士。結婚を考えるにあたり、真也は意を決して自分の不思議な能力について、打ち明けた。だが彼の心配をさらりと流し、カオルは自分の秘密を打ち明ける。
亡くなったと告げていた彼女の父が実は生きており、この度20年ぶりにアメリカから帰国するのだという。二人で成田空港で出迎えることになったが、カオルは急遽仕事で招集がかかり、真也ひとりで出迎えることに。カオルに会いたいという晴男は、真也が止めるのもきかず会社まで押しかけるが、昔から自分の見得のために嘘ばかりついていた父が、自分を利用しているのではないかと考えていた……『ヒア・カムズ・ザ・サン parallel』の2編収録。

“真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年たっても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、まったく違う風景が見えた”……という、演劇集団キャラメルボックスの舞台のあらすじに触発されて、有川さんが描かれたお話が前者、その実際の舞台を観られた有川さんがそれを元に描かれたお話が後者、だとか。
他人の書いたあらすじから、別の話を起こすというのがおもしろい試みですね~。

<11/12/22>

『木挽町月光夜話』吉田篤弘(筑摩書房)

2011-12-21 | 読了本(小説、エッセイ等)
昔は一年中着ていたという黒いうわっぱりのこと、一行目だけ書いて先に進まない小説の為の秘策、若い頃若い頃落語家になりたかった父と絵描きになりたかった母、そして地震のこと。銀座木挽町で曽祖父が営んでいたという鮨屋に思いを馳せつつ描く、日々のエッセイ。

吉田さん初めてのエッセイ集……だそうですが、あまり初めてという感じがしないのは何故だろう(笑)。
日々のいろんなことについて書かれているのですが、曽祖父さんが銀座でお鮨屋さんを営んでいて、その関係で本籍が銀座にあるということを知り、たびたびそのことに触れつつ、今はなきその店を探したりしているので、ちょっとノスタルジックな色が強め?

<11/12/20,21>

『黄昏に佇む君は』篠田真由美(原書房)

2011-12-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
2000年、どんな学生時代を過ごしたかと問われた私立W大文学部教授・神代宗は、いままで語ることのなかった、自分の大学時代を語る。
子供にめぐまれなかったW大講師の神代清顕と、宗の実姉・藍川沙弥の養子となっていた。
1966年。大学の授業料値上げ問題が持ち上がり、紛糾する中、姉たちに経済的負担をかけることからそのまま勉学を続けるべきかを悩む宗。
義父の勧めにより、西洋美術史専攻の宮地崇仁に会いに行った宗は、そこで小森文也と名乗る混血の美少年に出会う。小森は、宮地の甥にあたり…宮地の弟である今は亡き画家・葛城龍星と、フランス人と日本人女性のハーフ・富士子の子であるという。
小森に乞われ、彼の絵のモデルを引き受けることになった宗は、自由奔放な彼に翻弄されつつ親しくなるが、事件に巻き込まれることに……

建築探偵シリーズ外伝で、神代さんの大学時代のお話(名画の贋作の話や、葛城兄弟の確執などを絡めつつ)。
やっぱり何だか年下の子に懐かれる?…というか面倒見のよさを発揮してますね(笑)>神代さん

<11/12/18,19>

ミルフィーユ(里芋)@Parisパイ

2011-12-18 | スイーツ
 チラシをもらってきたのに消失!……うろ覚えですがどこかの学校との(新大付属中?)とのコラボ商品で、かなり限定販売(3日間くらい、各日25個)。
 いつものパイ生地に挟まれているカスタードに、里芋が入っていた模様。
 味的には普通にカスタードですが、後の食感というか、残るぬめり感が里芋な感じかも。

 Parisパイ:新潟(長岡)

『ゆみに町ガイドブック』西崎憲(河出書房新社)

2011-12-17 | 読了本(小説、エッセイ等)
ゆみに町に関するガイドブックであるし、空間的な広がりであるゆみに町のガイドブックであるだけでなく、時間的な広がりであるこの町についてのガイドでもある……ゆみに町二丁目に住む三十五歳の女性作家“わたし”は語る。“ゆみに”は、弓二とも夢爾(夢のようなの意)が由来とも言われる町。
かつてフランス料理店でたまたま同席したことから知り合った、外科医・イプシロン。後に三つ下の彼
と恋人同士となったわたしは、彼が去ったこの町に暮らしはじめた。
アルファで出会った佐久間さん。佐久間さんの実家は、代々神社の神主職をしており、自身は輸入食品の会社に勤め、弟がその家の職を継ぎ、今はその息子に継がれているという。
彼が思い描いていた“365カフェ”という、本とコーヒーの店を開店する準備に手を貸したわたし。開店を前に、あることから気まずくなり疎遠に。
わたしには、生まれてすぐに失われた双子の妹がいた。彼女は、架空の世界・デスティニーランドに。
片耳をもがれたくまのプーさんは逃げながら、クリストファー・ロビンを探し、散歩する雲マニアの行動はある影響を及ぼす……

ゆみに町について語る“わたし”の他、“雲マニア”と、追われる“プーさん”のパートに3つに分けて語られる物語。幻想小説、かな(ちょっとホラー?)。
現実感があるようなないような、ちょっと不思議な雰囲気。

<11/12/16,17>

『あまからカルテット』柚木麻子(文藝春秋)

2011-12-15 | 読了本(小説、エッセイ等)
中学時代からの仲良し四人組……自宅でピアノを教える葛原咲子、サンチョ・パンサ出版の編集者・島田薫子、化粧品メーカー<ボーテ>の美容部員・立花満里子、ブログ<ごろぱんだな毎日>でレシピを公開している料理上手な専業主婦・深沢由香子。
三十代目前なった今でも、月に一度は咲子の家でティーパーティーで盛り上がる。いつもは皆の話を聞く側の咲子が、語り出したのは、ひとめ惚れした相手のこと。
件の相手はピアノ教室の人々と一緒に行った花火大会で、たまたま隣にいて稲荷寿司をくれた男性。しかし、その名前を聞く前に、彼の連れ“サッチモ先輩”が倒れて運ばれ、慌しく別れることになってしまったという。その男性の手がかりは、彼の店で出しているらしい絶品の稲荷寿司と、そのときに交わした会話だけだった。
奥手な咲子のために一肌脱ごうと、それぞれの得意分野から心当たりを探すことになった仲間たち……薫子は、同じ出版社の<月刊 男の玉手箱>の名物グルメ記者兼手土産番長“バキ”さんこと膳場恭一郎とともに心当たりの寿司屋を回り、満里子は、出席していた合コンで一緒になったジャズ好きの男・高須雄太から耳にした“サッチモ”という言葉からジャズ関係を、由香子は、自分の舌から件の稲荷寿司のレシピを推理し、再現してみるが……『恋する稲荷寿司』、
由香子は、薫子の担当している雑誌に紹介されたことで、一躍人気ブロガーに。念願だった書籍部に異動になった薫子は、由香子のブログ本を手がけることになり張り切るが、それを目前に、肝心の由香子は、ネットで叩かれたことを知り、料理もせずに家に引き篭もるようになってしまった。
そんな彼女を勇気付ける為、刊行予定の本の冒頭エッセイで書いていた、思い出…小学三年生の春休みに四ツ谷の祖母の家に預けられていた折、つかの間遊んだ少女・ノンちゃんとの出会いと、彼女の母が焼いてくれたという甘食のエピソード…を手掛りに、ノンちゃんを探すことに……『はにかむ甘食』、
咲子の一件で知り合った雄太と、恋人同士となった満里子。仕事では店長になるも、給料は少ないのにやることは三倍で、心の休まる暇がない。
そんなある日、雄太のマンションで食事を作って待っていた満里子。ところが彼は酔って帰り、ユキコという名を口に出す。曰く、学生時代吹奏楽部で一緒だった友人・雪子で、ハイボールや食べ物の美味しい居酒屋で店主として働いているらしい。
恋愛感情はないと主張するが、ハイボールのCMの小雪めいたその存在に危惧感を抱く満里子。
彼女の店を突き止めることに成功し、誤解は解けたかに思われたが……『胸さわぎのハイボール』、
膳場と結婚して新居に引越した薫子だったが、仕事が忙しい上に、近所づきあいの為に草とりにも参加せねばならず、てんてこ舞い。
引っ越し荷物の入ったダンボールを開けることもできず、散乱しているのに片づけもできていない。いっぱいいっぱいになってしまい、ただでさえ苦手な料理もできない中、玄関のドアノブにかかっていた手作りのラー油に救われる。
てっきり、由香子かご近所の人からのものと思っていたが、心当たりの者はいないという。部屋を片付けに来て、そのラー油の送り主の手掛かりをひょんなことから手にした仲間たちは、その送り主を探す……『てんてこ舞いにラー油』、
膳場の母が正月に鹿児島から出てくることに。彼女を快く思っていないらしい姑を見返すべく、おせち料理をつくることを安請け合いした薫子。
しかし家庭にめぐまれずに育った薫子は、料理が得意でない上に、おせちを作ったこともない。そんな訳で、大晦日に薫子の部屋に集まり、皆の力を借りて、おせち料理を仕上げるという計画を建てる。
ところが、当日。天気は猛吹雪に見舞われる中、夫は編集者仲間と千葉の勝浦に。
咲子は悪天候で薫子の元に迎えずにいたところ、思いがけず昔の恋人と遭遇、同宿するはめになり、由香子はテレビ局で急遽、雪で届かないおせち料理作りを頼まれ、満里子は福袋の準備をしていた、携帯の電波も入らぬ旧館の建物の中に、派遣社員や扱いにくいお局社員らと閉じ込められるという事態に。
皆が薫子の元に向かうことができない中で、雪に備えて前乗りしてきた姑登場。それぞれのピンチに直面した四人の運命は……『おせちでカルテット』の5編収録。

中学時代からの仲良し四人組のアラサー女子たちが、それぞれの悩みや困難を団結して解決するラブコメ連作(『おせち~』のみ中編)。
各話食べ物がらみで、いろいろ美味しそうなものが出てくるので、空腹時は危険(笑)。
だいぶご都合主義ではあったりしますが、楽しく読めるお話でした♪

<11/12/15>

『煙とサクランボ』松尾由美(光文社)

2011-12-14 | 読了本(小説、エッセイ等)
ひょんなことから言葉を交わすようになった、自称早期退職者の紳士・炭津と、榛名ルナという名で漫画家をしている会社員・立石晴奈。ふたりは、炭津が馴染みにしている小さなバーで、たびたび語らうように。
しかし炭津は実は幽霊。十四年前に交通事故に遭い、亡くなっているのだが、この世に心残りがあり、留まっている。店のバーテンダーの柳井は、幽霊と出会った場合、それと見抜く能力を持つ人物で、ある事件をきっかけに炭津と知り合ったのだった。
晴奈には長年抱き続けている謎があった。幼い頃、北海道に住んでいた彼女の自宅が、一家が旅行に出かけている間に、何者かに放火されたのだが、その現場から見知らぬ女性が写った写真が見つかったのだという。
柳井の勧めにより、その一件を炭津に相談することにしたのだが……

兼業漫画家の女の子と、幽霊(見た目50代半ばのおじさん)、そしてバーデンダーが織り成すちょっと切ない、ファンタジックなミステリ。
この作品内では、死者と面識がないか、その人物が死んでいるという事実を知らなければ見えるし、言葉も交わせる…行動には制限あるけれど…という設定(柳井のみ例外で、相手が死者だと認識していても、見えるし相手も消えない)。
ある程度、途中で火事の謎についてはわかってしまうのですが、それでもやはり、物語設定が絶妙。

<11/12/13,14>

『花咲小路四丁目の聖人』小路幸也(ポプラ社)

2011-12-12 | 読了本(小説、エッセイ等)
衰退の一途を辿る花咲小路商店街で、両親の始めた<矢車英数塾>を営む、矢車亜弥・二十五歳。そんな彼女の父は、かつてイギリスで紳士怪盗として名を馳せていた“セイント”こと、ドネィタス・ウィリアム・スティヴンソン。
亡き母・志津の為に帰化し、矢車聖人という名になり、現在は七十歳。プロモデラーをしているご隠居の身。
そんな父が、先頃、近所の若者…亜弥の四つ下の幼馴染・皮革店の白金克己と、電器店の跡取り・松宮北斗とともに、盗まれた看板を取り返してそっと戻したりと、昔のような行動をしているのが心配な亜弥。
そんなある時、亜弥の塾の生徒・シンゴの父である、ラーメン屋の<南龍>の主人が、飲み屋の女と浮気をしているらしいと知れる。他にも、不倫やらホスト通いやらと商店街の人々によからぬ噂が。
どうやらそれが、商店街の敷地に埋蔵されているらしい宝を得るべく、土地買収をもくろむ、香港の資本家マッシュグループの総帥ウォン・ラーピンの差し金であると知り……

その昔、イギリスで怪盗として活躍していたセイント(セイさん)が、愛する商店街の危機に立ち上がるお話。視点は、セイさんが次にどんな行動に出るのか知らない、娘の亜弥視点なので、読者も一緒に彼の行動の意味を、あれこれ考えられる感じ。
小路さんらしい楽しい展開で楽しめました♪

<11/12/12>

『モナ・リザの背中』吉田篤弘(中央公論新社)

2011-12-11 | 読了本(小説、エッセイ等)
大学で教鞭を取る“私”は、五十歳。
ある日、助手のアノウエ君(本名・イノウエ君)に借りた目薬『メニポン』改め『メヲサラ』を差した後、上野の美術館で観に出かけていた『受胎告知』の中へと入り込んでしまう。そこで出会ったおかしな男。
さらに、アノウエ君所蔵のポスターの世界に入り込んだり、たびたびおかしな事態に遭遇する羽目に……

ひょんなことから絵の世界の中に入り込むようになってしまった、大学の先生である曇天先生(アノウエ君に倣って、作った判子が『曇天』)とアノウエ君の冒険幻想譚。
入り込んでるのは絵の中ですが、めくるめく言葉遊びの世界かな?
理屈っぽくなり勝ちですが、アノウエ君との掛け合いが軽さを出していて、コミカルな感じに。

<11/12/10,11>

『study in green 緑色の研究』勝本みつる(月兎社)

2011-12-10 | 読了本(小説、エッセイ等)
緑色に染められた毛糸や動物の毛を中心に、さまざまなものを組み合わせ、古い箱の中に表現される独自の世界。2002年から展開されているグリーン・シリーズを収録。

装丁などでも活躍されている、勝本みつるさんのオブジェ(コラージュ)作品集・第3弾。
緋色ならぬ緑色の研究というだけあり、緑色のふかふか(まりもっぽい?)やみつあみなどのモチーフがふんだんに盛り込まれています。
ようやく入手♪\(^o^)/
いつか実物も観に行きたいです~v

<11/12/10>