黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『私と踊って』恩田陸(新潮社)

2013-01-30 | 読了本(小説、エッセイ等)
今朝の十時には内線で、同窓会の話をしていたというのに、午後には会社から突然消えてしまった同僚・樺島。
「ミラーさんが心変わりしちゃってさ、その日仕事なんだよ。富樫によろしく」という、不可解な言葉を残して。
彼の席に、様子を見に来た総務の城山はあることに気づく……“心変わり”、
月に一度の戦略会議の日。渋谷の街中にある、ガラス張りのスタジオで公開形式で行われる会議。都民の平均的な意見を代表する、六人の人々が集まり、私もそのうちの一人だ。だが、いつもとはちがい、女が一人紛れ込んでいて……“骰子の七の目”、
突然言葉がわかるようになった飼い犬・ジョンから手紙を貰った。妻が浮気をしており、愛人とともに彼を抹殺する計画を立てているという……“忠告”、
舞台に上がった、就職活動中の女子大生は、ある日のことを語る。
就職活動のための会社訪問中。一社目でおもいのほか疲労したあたしは、公園でしばらく起こしたことのなかった発作を起こす。しかもそんな時に限って、薬を持ってくるのを忘れてしまう。
連日夜遅くまで、劇団の準備をしていた無理がたたったのだろうと……“弁明”、
今日も世界は動いている。ゆっくりと。少しずつ。分からないように。誰にも予想できない形で。世界は固定しておらず変わり続ける。故に人々は予想する。さまざまな事柄や「彼女」の居場所も。
そんなある日、キリコとマサコとあたしは、公園で金色の箱…マンダラを見つけて……“少女界曼荼羅”
UFOからの謎の光を浴びた、飼い猫のココが女に手紙をよこした。
彼女の夫が浮気してるという。庭の薔薇の根本に、浮気相手の女たちに関わる何かを隠していると書かれており、掘ってみると……“協力”
コーヒーショップで、私がたまたま耳にした同窓会の話。
女性二人の会話で、「同窓会の通知、来た?」「二歳下の妹には来たんだけどね」と。同窓会とは同じ学年で行われるものではないのだろうか?さらに、会話上には五歳年上の兄までも登場し、さらに謎が深まっていく。
そんな中、店の中にキャリーバッグに入れて客が持ち込んだ、犬が逃げて……“思い違い”、
世界的な名声を得た、大陸生まれの映画監督Yは、十年前にアメリカでなくなった。同業者で親しかったKは、この度まとめられることになった彼の全集のリーフレットに思い出を書くことになり、二人にとって特別な街である台北にやってきた。そんなMの元に謎のメールが届く。
生前最後の電話での会話中、切れる間際に向こうで誰かに話しかけたY。「ドアを開けてくれ---蛇口を閉めてくれ」と。あれは誰に向けて言われた言葉だったのか……“台北小夜曲”、
友人の家に遊びにいき、昼寝中の私の頭を踏み越えようとした散歩中の猫が、私の左の耳の穴に落ちてしまった。
何とか出そうと試みるけれど、どうにも取り出せない。落ちたのは二匹の飼い猫…ソコツとウカツの兄弟…のどちらからしいのだが……“理由”、
台南。Kとともに運河の上を行く船に乗っていた私(Y)。台南は甘い街という印象を持つ私。それは子供の頃に、食べた果物に由来していた。
ふとその脳裏に、運河を滑る白い船が浮かび、その中には若い女が横たわり眠っているイメージが浮かび上がる。Kとの会話の間もたびたび浮かぶ女の顔。ふとしたきっかけで誰かを思い出す……“火星の運河”、
死者にふさわしい、死者のための季節というものがこの世にあるとすれば、それはいつ頃だろう。
四月は生命が萌えいずる季節。しかし同時にこの世に存在しない死者の気配を強く感じる、ならば死者にふさわしいのはこの残酷な四月、春なのではないか……“死者の季節”、
芝居を観終え、劇場から出てきた少女Nと男。男は彼女を妹のようにしか思っていない。別れた後、立ち寄った小さな公園で、少女は今観てきたばかりの『桜の園』の台詞を口にする……“劇場を出て”、
二十一歳の秋。音大のピアノ科にいた僕は、よりにもよって音楽コンクールの二次審査に出場する前の晩、親知らずが痛み出してしまった。そして最大級の痛みに襲われた瞬間、誰かが頭の中に入ってきたのを感じた僕。
落ち着く為に、自分にとってお守りのような曲『二人でお茶』を弾くと、何故か二人分の音が聞こえてきた。
そして二次審査当日。上がり症と親知らずの痛みに翻弄される僕の感情の狭間に「彼」が入り込み……“二人でお茶を”、
撮った人と同化するように、一枚の写真からその時の心境を読み取ることがをする能力を持つ青年。
そんな彼の元へ、ナイル河の氾濫を写した、古い写真を持ち込んだ老婦人。それは彼女の父が撮影したものだという。
エジプトを旅していた夫婦は、ある事柄から口論に……“聖なる氾濫”、
エーゲ海。特殊な才能を持つ左右の瞳の色が違う青年に、ロンドン大学の教授が見せたのは ケルスス図書館の前門を写した古い写真。
彼が読み取ったところによると、撮りたかったのは前門ではなく、花、赤いヒナゲシだという……“海の泡より生まれて”、
曾祖父の故郷である奈良へ、初めてやってきた青年。
家に伝わる古い写真を手に。それは日本で最も古い道を、そしてその途中にある古墳を撮ったものだという。奇妙な懐かしさを感じながら歩く……“茜さす”、
壁の花だったパーティ会場で私を誘ってくれた彼女。それが出逢いだった。
やがて彼女は古典的なバレエ音楽をテーマに衝撃的な問題作をひっさげて現れ、ダンス界にセンセーションを巻き起こす存在となる。私は記者の端くれとして劇評を書くようになったけれど、彼女の舞台について書くことはなかった……“私と踊って”、
来日し東京に滞在している私は、祖父と同じように日本製のノートに「東京の日記」と題し、東京での日常、気づいたことなどを手記を綴ることにした。
ある日、東京の戒厳令を解除せよ、というビラを拾った私。日本人の友人・カナコらに見せて訊ねても、やんわりと言葉を濁される。気になったが、それを図書館で調べると危険だといわれる。やがて……“東京の日記”、
どこにいる/どこにいる/返事をしてくれ/返事をしてくれ/……“交信”の19編収録の作品集。

ノンシリーズの短編掌編を集めた一冊ですが、『心変わり』と『思い違い』、『忠告』と『協力』がそれぞれ対。『聖なる~』『海の泡~』『茜さす』は連作になってます。
『東京の日記』で想定されてる祖父は、ブローディガンだそうで、横書き。
いろんなテイストの作品が楽しめましたが、個人的には『理由』がちょっとほのぼのテイストで好き(猫可愛い~/笑)。

<13/1/30>


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