黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ウィンディ・ガール サキソフォンに棲む狐1』田中啓文(光文社)

2012-11-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
B県の須賀瀬高校に通う一年生・永見典子は、吹奏楽部でアルトサックスを吹いている。
二年前、父・光太郎が新宿で不審な死を遂げて以来、母の瑤子と二人暮らしだが、何かを恐れるかのように、典子の行動に対し異常なまでに干渉してくる母に、反発する典子。
人付き合いの苦手な典子が、ひそかにあれこれ相談するのは、中古サックスを質屋で手にいれた時に、ついてきたクダギツネのチコ。
吹奏楽部では、譜面が絶対で、部員に命令を強制する顧問・ボンパこと高垣雷輔、影の部長と噂されるいやな先輩・柿沢らの理不尽な説教、厳しい練習にも負けず、懸命に打ち込む典子。今の目標は、レギュラー・オーディションで選ばれることだ。
そんな中、クラリネットの美登利祥子が、パート練習中にけがをした。その際に、カラスの羽根らしきものをみた典子。その前に、彼女が烏塚を壊した祟りでカラス男に襲われたのだという噂が流れ……“ブラックバード”
8月。全日本吹奏楽コンクールの地区予選を通過し、十日後に迫った県大会のために連日猛練習。
ボンパは、以前いた名門江賀田高校を率いる音大時代の後輩に負けじと、対抗心むき出しで、練習も遅くまで続けられた。そんな中、翌日から学校の工事の関係で二日間、音楽室が使えないことになり、それぞれに自宅で練習することになったのだが、うっかりマウスピースを学校に置き忘れてしまった典子は、夜の音楽室に取りに出かけることに。
ところがそこで噂の怪談で言われていた謎の楽器の音を聞いてしまい、さらに音楽室中に転がされている楽器を目撃して、逃げ帰る。
翌日、練習が休みなのを利用し、母に内緒で新宿に出かけた典子は、たまたま入ったライブハウスで耳にした、ジャズサックス奏者・坂木新の演奏に魅了される。
そこで出会った青年・新沼裕也は、父の事件に関わった刑事だった……“ミッドナイト”、
B県大会で、金賞を獲得し、西関東支部大会へと駒を進めることになった須賀瀬高校。
ライバルの江賀田高校で、ソロをまかされていたアルトサックスの生徒が、動揺からすべて暗譜していたものを忘れてしまい、ダメ金だった為の棚ぼただった。
ところが、須賀瀬高校でもトラブル勃発。アルトサックスの先輩・丸井俊子が、右手を骨折。
「吹奏楽のための民謡・ひらりこ節」というアルトサックスの見せ場のある曲で、典子ともう一人のアルトサックス・児玉路子のどちらがソロを受け持つかオーディションすることに。
一方で、坂木のような音が出せるようになりたいと、いつもとは違うマウスピースを開拓すべく楽器店に出かけた典子は、そこでたまたま坂木に遭遇、セッションに誘われるが、その開催日は、大会前日だった。
その後、ソロを担当することになった典子だったが、さらに問題が。チューバの蔵川とコントラバスの丸亀という二人の三年生が、通学バスで事故に遭い、むちうちで入院。さらに二年のコントラバスの山谷は風邪で高熱を出し、一年は初心者で使えず、低音楽器が全滅という事態に。曲の変更は不可能な為、苦肉の策で長年使われていなかったバスサックスを使うことに。吹きこなせる人間に担当させることになるが、その楽器には<魔女>の呪いの言葉が添えられていて……“フェイヴァリット”、
自分の失敗の責任を感じて、吹奏楽部を辞めた典子。
しかしその所為でサックスの練習場所に困ることになってしまった典子は、あちこち彷徨った末、辿り着いたジャズ喫茶<ファーストバード>でバイトすることに。そこは自分が好きなジャズを聴かせる為、意に添わない客をたたき出すことも厭わない女店主・矢竹麗子が営む店。
誰かにジャズを習いたいと考えた典子は、以前出かけた楽器店の店員に相談。長谷部邦夫に習ってはどうかと勧められ、教室に通い出した。
そんな中、店に服部ミリアという、昔のアイドル歌手のレコードが置かれているという事件が起きて……“オーニソロジー”の4編収録の連作短編集。

アルトサックスに情熱を傾ける少女が、吹奏楽からジャズの魅力に惹かれるようになる成長物語でありつつ、学校で起こる謎や父の死にまつわる謎はミステリ、チコの存在はファンタジー…と、いろんな要素を兼ね備えたお話。
すごーく気になる終わり方をしてるので、続きが気になるところ……。

<12/11/8>