一学期の期末試験最終日の放課後。三年松組のクラス担任・鹿取真紀が物陰で潜んでいるところを見かけた祐巳は、一服いかがですかと薔薇の館へと誘う。
最近薔薇さまたちの間でブームとなっているハーブティでもてなして……“フェアウェル ブーケ”、
美術部の亜深は、ある日『ストレッチ愛好会』という看板を見つけて立ち止まっていたところ、参加希望者だと間違われて、成り行きから参加する。
リリアンの生徒だと思った愛好会の代表者・大杉和夏子は、産休の教師の代わりに来ていた臨時教諭だとしった亜深。
彼女に惹かれ通いつめるが、ある噂を聞いて……“飴とストレッチ”、
数学が苦手な華奈子の為に、父親が連れてきた家庭教師・アケミ。
父はリリアン女子大三年生だと紹介するが、実は華奈子のクラスメイト・貴良だった。週一回の約束で、彼女が教えにきてくれることになり、華奈子は乗れなかった自転車の乗り方も教わるが……“プライベートTeacher”、
クラス会帰りに集まった、元美術部員三人……党江、組美子、緩世。
彼女たちにとって思い出深い、教育実習生・天知市子と美術教師・入間とのエピソードに思いを馳せる。
実習最終日、天知にクッキーを焼いて来るようにと告げた入間。その言葉に対し、彼女は手製のおっぱい型のクッキーを持参してきたのだった。その出来栄えは、三人それぞれの現在の職業選択にまで影響を及ぼすほどだったが、皆その出来事の解釈の仕方に違いがあった。
同日に結婚式に出席していた為、クラス会には参加できなかった市子の妹・未子があとから合流。意外な真実を語る……“おっぱいクッキー”、
祐巳のクラスメイト・麻丈は、歴史が嫌い。
祐巳や蔦子らで、その克服法を考えることになって……“昨日の敵”、
三年からリリアンに編入してきた千脇毛莉。数学教師・尾上実美に惹かれ、教務室まで押しかけ猛アタックの日々。
出した年賀状の返事を持参した尾上は、卒業式まで会いにこないようにといって……“卒業式まで”、
友人の結婚式の二次会で知り合った牧宜行からプロポーズを受け、結婚した鹿取。
ところが三年の担任を半ばにして、妊娠が発覚。休職することになったのだが、生徒たちの卒業を見届けられないことが心残りで……“アナウンスメント”、
七月後半の水曜日。ハーブティーが美味しいという喫茶店で待ち合わせ、お茶をしていた祥子と祐巳。
今年もまた小笠原家の別荘で過ごすことの相談をするためだ。
そんな二人はそれぞれに手土産を持参していたのだけれど……“薬香草茶話”を収録。
シリーズ第39作。連作短編で、表題作はそれぞれ合間に分割して入る構成。
いつものメンバーが登場する話もあり、いない話もあり。
“おっぱい~”が少女小説にあるまじきタイトルですが(笑)、なかなか楽しいオチ。
表紙の祐巳が、ちょっと薔薇さまっぽく大人びた表情なのが良いですね。
個人的に、妊婦が避けなければならないハーブを、彼女たちが判っているのか否かがちょっと気になるところですが;
<12/6/19>