黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ピースメーカー』小路幸也(ポプラ社)

2011-02-24 | 読了本(小説、エッセイ等)
昔から、伝統的に文化部と運動部の戦いが続いている赤星中学校。
文化部総合顧問の菅野と、運動部総合顧問の玉置という、二大巨頭と呼ばれる二人の古株の先生が犬猿の仲で、事あるごとに争っていることが原因で、他の先生達もやむをえず、いずれかの派閥に所属している。
そのどちらにも属さない教師・コウモリこと中山俊一は、一計を案じ、近所に住んでいる少女・林田みさき…容姿端麗で成績優秀、おまけに美声の持主…に、<ピースメーカー>に…文化部と運動部の橋渡しになって欲しいと頼む。
その能力を発揮した彼女は、放送部員として校内に平和をもたらし、伝説を残して、卒業していった。ところが、その後再び両者の仲はさらに険悪になり、放送部も三年生で部長の沢本香苗ひとりを残すだけとなっていた。

一九七四年。そんなところへ入学してきたのが、“僕”こと、みさきの六歳下の弟・良平。姉のように優秀ではないが、家がジャズ喫茶をしている友人のケンちゃんとふたりで、日々放送部の活動に勤しんでいる。
そんな中、菅野の息子で元バスケ部員の光男と、玉置の娘である吹奏楽部員の裕子が付き合っているという話を聞いたふたり。彼らの関係は親には内緒にしていたのだが、どうやらバレてしまったらしい。
真面目な彼女が思いつめて、何かしでかさないかと心配する、コウモリは、ふたりに何とかしてみて欲しいといって……“一九七四年の<ロミオとジュリエット>”、
剣道部の二大剣士…折原と河内が、八百長するのではという噂が立っているらしい。取材にかこつけ、彼らの練習の様子を見にいったふたり。
確かに河内は折原との練習の時に、わざと打ち込む隙を作っているような様子。折原を個人戦の代表にするために、今のうちから、わざと負けて怪しまれないようにしているのでは?というのだ。
しかし、良平はその様子に違和感を感じて……“一九七四年の<サウンド・オブ・サイレンス>”、
九月三日。文化祭<赤星祭>間近。その赤星祭では、フォークソング同好会によるフォークソングのグループが、ステージ演奏するというのが、ここ三年くらいの傾向だという。そんな中、元サッカー部で問題児との噂だった三年の岩島が、ロックバンドを結成。そのプログラムに加えられないかとのことだったのだが、菅野が猛反対。おまけにフォークソングのリーダー・倉持と岩島が、昨年相当派手に対立し、同好会の反発もある。何とかしようと画策するふたりは……“一九七四年の<スモーク・オン・ザ・ウォーター>”、
十一月。コウモリの薦めで、みさき似の美声の持ち主の転校生・三浦文枝が、放送部に入部。転校前の学校でも、放送部に所属していたというからうってつけ。
その矢先、<お昼の校内放送>の<音楽鑑賞プログラム>で、ロック音楽を流してはいけないことになりそうだと、部長の沢本…お嬢様ゆえに習い事が多いため、幽霊部員。その孤高さゆえに<女王>と呼ばれる…が、聞いてきた。校内の服装の乱れが、ロックの所為だと玉置が難癖をつけたのが原因らしい。
翌日、コウモリからそれが決定したと聞かされた彼らは意気消沈。
そんな中、三浦のアナウンス練習を聞いていた良平は、ある策を思いつく……“一九七四年の<ブートレグ>”、
十二月。沢本から、放送部が廃部になるかも知れないという話を聞かされた良平たち。
みさきとコウモリがデートしているところを目撃したものがおり、問題に。しかもみさきが在学中からの関係ではないかということになり、極秘裏に問題を闇に葬ろうとしている学校側は、部を潰してしまうつもりらしい。
折りしも、有名ロックバンド<パープルウェザー>のベーシストである、ケンちゃんの兄が年の離れた彼女と結婚して、故郷に戻ってきていた。
彼らの手を借り、学校側の思惑を阻止する計画を立て…………“一九七四年の<愛の休日>”、
沢本邸でクリスマスパーティをしていると、書道部部長の柴田から電話があり、<ピースメーカー>にSOSが。
書道部では、お正月に書き初めイベントの為、体育館を使う予定。しかも今年は、有名書道家の村崎大点が来るのだという。
ところがバスケ部でも王志工業バスケット部がやってきて、試合をする予定があるらしい。それぞれに理事長と校長の口約束が原因なのだが、どちらもゲストの存在がある為、譲れない……“一九七五年の<マイ・ファニー・バレンタイン>”、
二月に入ったある日曜。沢本から放送室に呼び出された良平。そこで渡されたものとは……“ボーナストラック”を収録。

文化部と運動部が対立する中学校で、<ピースメーカー>として名を馳せた姉同様、放送部に入り、その二代目となった良平と仲間たちが、学校の平和の為に奔走する話。青春モノ。
放送部ならではの知恵と技術(笑)を使い、何とかしていくところが楽しいです。是非続編を!

<11/2/24>