安永七年、初秋。出羽山形の帰路に着いた、佐々木磐音、吉原会所の園八と千次の三人は、日光道中の千住掃部宿に入ったところで、大粒の雨に降られ、茶店に駆け込んだ。
しばし雨宿りをしていると、必死の形相で馬を駆る若侍とそれを追う一団に遭遇。つい両者の間に入った磐音は、その若侍・大村源四郎に手助けをするが、その間に彼の姿は消えていた。
そして無事江戸へ戻って来た磐音。思いがけず雨に濡れてしまった為、吉原で風呂と着替えを借り、家に帰ってきた磐音は、おこんたちに山形での顛末を語る。
後日、おこんとともに今津屋を訪れた帰り、磐音を待ち受けていたのは先の一団の一人である剣術家・菱沼佐馬輔。しかしうかつにも道場周辺で聞き込みをしていたことから不審に思われ、尚武館の面々が駆けつけたことから立ち去っていった。霧子がその後をつけると、常陸麻生藩一万石、新庄駿河守直規の上屋敷に入っていったという。
竹村武左衛門を見舞った磐音は、怪我の治りの遅い彼を気遣い、そろそろ武士として刀を捨てることを考えるべきではないかと意見する。
その後、竹蔵親分の地藏蕎麦に顔を出すと、南町の笹塚孫一と木下一郎太に出会う。いつもの如く磐音の助力をあてにする笹塚の発言に、苦言を呈するおこん。
佐渡相川金銀山の水替え人足が不足し、人手が足りないことから、七月五日、江戸とその周辺の無宿人を水揚げ作業に従事させようと送り込んだが、その中にいた野州無宿の竜神の平造ら一統四人が逃げ出したという。どうやら彼らが江戸に舞い戻ってくるようなのだが、平造らはこれまでに貯めこんでいた大金を隠しているらしく、その一件に磐音の手を貸して欲しいらしい。
そんな中、桂川国瑞が桜子を伴って尚武館を訪れた。桜子の剣術の稽古に来たと見せかけて、国瑞が磐音に伝えた伝言は、家基がお忍びで江戸散策をしたいと考えているということだった……
シリーズ第二十七弾。山形から帰ってくる途中でお家騒動がらみの若侍に遭遇から始まり、後半は西の丸の家基がお忍びで江戸散策したいと言い出して、彼の命を狙う田沼意次らから守るべくいろいろ奔走…な展開。
歴史的にもうすぐ亡くなってしまうことが決定している家基くんが、念願叶って宮戸川の鰻を食べられたのは良かったのですが、この先を考えるとちょっと切ない…;
<11/2/3>