goo blog サービス終了のお知らせ 

725)NAD+前駆体のニコチンアミドリボシドは抗がん剤による神経障害を抑制し、かつ抗腫瘍効果を増強する

図:抗がん剤はがん細胞に作用して(①)、細胞死を引き起こす(②)。抗がん剤は神経細胞にダメージを与え(③)、疼痛や痺れや感覚障害などの末梢神経障害や認知機能低下などの中枢神経系障害を引き起こす(④)。ビタミンB3の一種のニコチンアミドリボシドは、抗がん剤によるがん細胞死を促進し(⑤)、神経障害を阻害する(⑥)。ニコチンアミドリボシドはNAD+(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)の体内量を増やし(⑦)、心臓や肝臓などの臓器を保護し、免疫細胞の機能を高め、骨髄の造血機能を高める(⑧)。したがって、抗がん剤治療にニコチンアミドリボシドを併用することは、抗がん剤の副作用を軽減し、さらに抗腫瘍効果を高めることができる。

725)NAD+前駆体のニコチンアミドリボシドは抗がん剤による神経障害を抑制し、かつ抗腫瘍効果を増強する

【ニコチンアミドリボシドはパクリタキセルの神経障害を抑制する】
ビタミンB3の一種でNAD+前駆体であるニコチンアミドリボシドがパクリタキセル誘発性末梢神経障害を緩和することがラットを使った実験で報告されています。以下のような報告があります。

Nicotinamide riboside, a form of vitamin B3 and NAD+ precursor, relieves the nociceptive and aversive dimensions of paclitaxel-induced peripheral neuropathy in female rats(ビタミンB3の一種でNAD+前駆体であるニコチンアミドリボシドは、雌ラットにおけるパクリタキセル誘発性末梢神経障害の侵害受容性および嫌悪感情を緩和する)Pain. 2017 May;158(5):962-972.

【要旨】
感覚求心性神経の損傷は、化学療法剤の投与後に発症する末梢神経障害の一因となる。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)のレベルを上げる治療薬は、神経損傷から保護することができる。
この研究では、ビタミンB3の第3の形態であり、NADの前駆体であるニコチンアミドリボシドが、ラットを使ったパクリタキセル誘発性末梢神経障害の実験モデルにおいて、触覚過敏症と逃避回避行動を減少するかどうかを調べた。
雌のSprague-Dawleyラットに、6.6 mg/kgのパクリタキセルを5日間かけて3回静脈内注射した。ニコチンアミドリボシドは1日に200mg/kg の用量でパクリタキセル投与の7日前から開始して、毎日経口投与し24日間継続した。
ニコチンアミドリボシドの投与は、触覚過敏症の発症を予防し、場所脱出回避行動(place escape-avoidance behaviors)を抑制した。これらの効果は、2週間のウォッシュアウト期間後も持続した。
この用量のニコチンアミドリボシドの投与は、NADの血中濃度を50%増加させ、パクリタキセルの骨髄抑制効果を妨げず、運動への悪影響を引き起こさなかった。
パクリタキセル投与後の3週間の200mg / kg/日 のニコチンアミドリボシドによる治療は、触覚過敏症を改善し、脱出回避行動を軽減した。
100 mg / kgの経口アセチル-L-カルニチン(ALCAR)による前処理は、パクリタキセル誘発性の触覚過敏症または脱出回避行動を予防しなかった。 ALCARはそれ自体で触覚過敏症を引き起こした。
これらの実験結果は、ミトコンドリアの酸化的リン酸化システムおよび細胞内の酸化還元システムにおいてエネルギー産生と物質代謝において重要な補因子であるNADを増加させる薬剤が、化学療法誘発性末梢神経障害の緩和のための新しい治療アプローチであることを示唆している。
ニコチンアミドリボシドはNADのビタミンB3前駆体であり、栄養補助食品であるため、この仮説の臨床試験は早急に実施できると思われる。

この論文は米国のアイオワ(Iowa)大学の麻酔学部門(Departments of Anesthesia)からの報告です。抗がん剤による末梢神経障害を軽減する治療法としてNAD前駆体でビタミンB3の一種のニコチンアミドリボシドに注目しています。
多くの抗がん剤が神経にダメージを与えます。中枢神経系にダメージが起こると認知機能が低下し、体性感覚神経が障害されると、痛みや痺れを引き起こします。
侵害受容性疼痛は、組織の損傷を感知する痛みの受容器(侵害受容器)への刺激に起因する痛みです。侵害受容器は大半が皮膚と内臓に分布しています。触覚過敏症の程度は侵害受容器への刺激の強さを示します。
場所脱出回避行動(place escape-avoidance behaviors)は痛み刺激がある (あった)場所を避ける行動で、痛みに対する恐怖や不安や嫌悪のような痛みの情動面を客観的に評価できます。
つまり、この論文は、パクリタキセル誘発性末梢神経障害において、侵害受容器への刺激と、痛みに対する情動面(恐怖や嫌悪感)の両方において、ニコチンアミドリボシドは軽減する効果があるという実験結果を報告しています
抗がん剤による末梢神経障害に対してアセチル-L-カルニチンの有効性が他の研究で報告されていますが、この論文の実験系ではアセチル-L-カルニチンには神経障害に対する抑制効果は認めなかったと報告されています。

【ニコチンアミドリボシドはパクリタキセルの抗腫瘍効果を増強する】
ニコチアミドリボシドは体内のNAD+の量を増やします。NAD+は細胞内のエネルギー産生や物質代謝に必須の補因子です。
NAD+の量を増やすことはがん細胞の増殖や生存を助ける可能性もあります。
NAD代謝はは様々ながん種において亢進していることが知られています。特にNAD産生の律速酵素であるニコチンアミド・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ(NAMPT)が多くのがん細胞で過剰発現していることが報告されています。
NAMPTはニコチンアミドをニコチンアミドモノヌクレオチドに変換する酵素です(下図)。

図:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD+)はトリプトファンやニコチン酸やニコチンアミドなどから生成するルートもあるが、特にNAD+の前駆物質であるニコチンアミド・モノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide:NMN)とニコチンアミド・リボシド(nicotinamideriboside:NR)をサプリメントとして摂取すると体内のNAD+を増やすことができる。

前述の論文を報告したアイオワ大学の麻酔学部門の研究グループの最近(2020年10月)の論文で、ニコチンアミドリボシドがパクリタキセルの神経障害を軽減し、さらに抗腫瘍効果を高めることを報告しています。

Nicotinamide riboside relieves paclitaxel-induced peripheral neuropathy and enhances suppression of tumor growth in tumor-bearing rats.(ニコチンアミドリボシドは、パクリタキセル誘発性末梢神経障害を緩和し、担がんラットの腫瘍増殖の抑制を強化する)Pain. 2020 Oct;161(10):2364-2375.

【要旨】
ニコチンアミドリボシドはビタミンB3の一種で、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)の前駆体であり、前臨床実験モデルで糖尿病および化学療法によって誘発される末梢神経障害を緩和することが報告されている。この研究では、パクリタキセルによって誘発される末梢神経障害の発症に関連する表皮内神経線維の喪失をニコチンアミドリボシドが軽減できるかどうかを検討した。
この研究は、乳腺のN-メチルニトロソウレア(MNU)誘発腫瘍を有する雌ラットで行われ、ニコチンアミドリボシドとパクリタキセルの相互作用および腫瘍増殖に対するニコチンアミドリボシドの影響を評価した。
担がんラットにパクリタキセル(6.6 mg/kg)を注射(3回)と同時に、ニコチンアミドリボシドを1日1回200mg/kgの用量で経口投与した。
ニコチンアミドリボシドの投与は、パクリタキセルによって誘発される触覚および冷刺激に対する過敏症および場所脱出回避行動(place-escape avoidance behaviors)を有意に減少させた。
担がんラットおよび非担がんラットの両群において、ニコチンアミドリボシドはパクリタキセル誘発性の表皮内神経線維の喪失を減少させた。
予期せぬことに、パクリタキセル治療中にニコチンアミドリボシドを併用投与すると、腫瘍の成長がさらに減少した。その後、ニコチンアミドリボシドの併用投与を止めると腫瘍増殖は対照群と同じ速度で再開した。 ニコチンアミドリボシドの投与は、担がんラットのがん組織におけるKi67陽性がん細胞の割合も減少させた。
ニコチンアミドリボシドを毎日投与し、パクリタキセルを投与せずに3か月間追跡したラットでは、腫瘍の成長やKi67陽性腫瘍細胞の割合に変化は認めなかった。
これらの結果は、神経損傷後におけるニコチンアミドリボシドの神経保護的な効果を裏付けている。さらに、ニコチンアミドリボシドがタキサン系抗がん剤におる化学療法を受けている患者の末梢神経障害を軽減するだけでなく、タキサン系抗がん剤の抗腫瘍効果を高めることによって追加の利益を提供する可能性があることも示唆している

Ki67は細胞分裂してる細胞に発現する核タンパク質です。細胞増殖能のマーカーで、Ki67の核発現は、免疫組織化学染色を用いて検出されます。「Ki67陽性がん細胞の割合が減少した」ということはがん細胞の増殖を抑制したことを意味します。
この実験では、ニコチンアミドリボシド単独ではがん細胞の増殖を抑える効果は認められませんでした。パクリタキセルを投与中にニコチンアミドリボシドを併用投与すると、パクリタキセルの抗腫瘍効果を増強したということです。
NADはミトコンドリアを活性化するので、ミトコンドリアを活性化させて抗がん剤感受性を高めるジクロロ酢酸のようなメカニズムが抗腫瘍活性を高めるのかもしれませんが、そのメカニズムはまだ不明です。
この論文の実験では、ラットに1日に体重1kg当たり200mgのニコチンアミドリボシドを投与しています。薬に代謝は体表面積に比例するので、体重1kg当たりの人間の投与量はラットの5分の1から10分の1で十分です。つまり、人間の場合は、1日に体重1kg当たりで20mgから40mgで同様の効果が期待できると思われます。体重50kgで1日に1000mgから2000mgということになります。

【抗がん剤による末梢神経障害とは】
神経とは体内の情報伝達を行う組織で、中枢神経系末梢神経系に分類されます。
中枢神経系は、神経系の中で多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになっている領域で、脳と脊髄が中枢神経系になります。
中枢神経系(脳と脊髄)から出て、手や足の筋肉や皮膚などに分布し、運動や感覚を伝える“電線”のような働きをするのが末梢神経系です。
末梢神経には、全身の筋肉を動かす運動神経、痛みや触れた感触などを感じる感覚神経、血圧・体温の調節や臓器の働きを調整する自律神経があります(下図)。

末梢神経がダメージを受けたり、働きに異常をおこした病態を「末梢神経障害」といいます。
運動神経が障害されると、「手や足の力が入らない」「物をよく落とす」「歩行や駆け足がうまくできない・つまづくことが多い」「椅子から立ち上がれない」「階段が登れない」などの症状が起こります。
感覚神経が障害されると「手や足がピリピリしびれる」「手や足がジンジンと痛む」「手や足の感覚がなくなる」などの感覚障害が起こります。
自律神経が障害されると「手や足が冷たい」「下半身に汗をかかない」「便秘や排尿障害」などの自律神経障害が起こります。
薬剤の副作用によって末梢神経障害が起こる場合があります。末梢神経障害を起こす医薬品として、抗がん剤(ビンクリスチン、パクリタキセル、シスプラチンなど)、抗ウイルス剤(抗HIV薬)、抗結核薬(イソニアジド、エタンブトール)などが知られています。
薬剤性の末梢神経障害の程度や症状は、薬剤によって異なりますが、通常は、医薬品を使用してしばらく経過した後に、手・足先のしびれ感・ほてり・痛み・感覚が鈍くなるなどの感覚障害が起こり、次第に上方(腕や脚)へ広がります。多くは両側性に起こりますが、片方だけのこともあります。さらに、筋肉に力が入らない、手や足が動きにくいなどの運動障害が起こります。

【抗がん剤による末梢神経障害は治療が困難】
神経細胞や筋肉細胞は細胞分裂を行わないため、抗がん剤や放射線治療を受けても、ダメージを受けにくいと思われています。
しかし、パクリタキセル(商品名タキソール)やドセタキセル(商品名タキソテール)などのタキサン製剤、ビンクリスチン(商品名オンコビン)やビノレルビン(商品名ナベルビン)などのビンカアルカロイド製剤、シスプラチン(商品名ランダなど)やカルボプラチン(商品名パラプラチン)やオキサリプラチン(商品名エルプラット)などの白金錯体製剤、プロテアソーム阻害剤のボルテゾミブ(商品名ベルケイド)では、高頻度に末梢神経障害による副作用(しびれや感覚障害や痛み)が発現します。
この末梢神経障害の原因として、神経軸索の微小管の傷害や神経細胞の直接傷害などが関連しています
微小管は細胞骨格を形成する蛋白質であり、チューブリンというタンパク質が集まった長い直径約25nmの管状構造をもっています。微小管は細胞内の蛋白質の輸送や細胞内小器官輸送のレールとして機能しており、細胞分裂の時の染色体の移動に必要です。つまり、細胞分裂する際に、複製されたDNAは染色体と呼ばれる構造に凝集し、細胞の両極へと引き寄せられ二等分されますが、このとき染色体を分裂した2つの細胞に分離する働きをするのが微小管です。
近年、抗がん剤の標的の一つとして微小管が注目されています。がん細胞が分裂する時に、チューブリンから微小管が形成される過程を阻害すれば、細胞分裂を防ぐことができるからです。
しかし、微小管の形成を阻害することは、細胞分裂の阻害だけでなく、神経障害の原因にもなります。
神経の軸索(神経線維)は、神経細胞の細胞体から発する1本の長い突起で、他の神経細胞や筋肉に信号を伝達するケーブルのようなものです。軸索の中にある微小管は軸索の発育や物質の輸送に関連しています。神経軸索の中では、微小管は細胞体から神経軸索の先端に向かって伸びていて、微小管の上で、モータータンパク質の助けを借りて、神経軸索内でのタンパク質の輸送が行われます。

図:微小管は細胞が分裂する時に染色体の移動に必要なため、微小管の形成を妨げると細胞分裂が阻害される(上)。
また、神経細胞の信号を伝達する軸索の中にも微小管があり、軸索の発育や物質の輸送に関連している(下)。
したがって、微小管をターゲットにする抗がん剤は、その副作用としてしびれや感覚低下や痛みなどの末梢神経障害の副作用が問題になる。

したがって、微小管をターゲットにする抗がん剤は、その副作用として神経細胞の軸索の働きを傷害し、神経の信号が正しく伝達出来なくなって、しびれや感覚障害や痛みなどの末梢神経障害の副作用を引き起こします。
タキサン系抗がん剤ビンカアルカロイド系抗がん剤は微小管を標的として作用することによりがん細胞の抑えるため、神経細胞の微小管も傷害され、神経障害を引き起こします。多くの場合、指先のしびれ感にはじまり、しだいに上の方に広がっていきます。進行すると筋力低下や歩行困難なども生じます。自律神経が障害されると便秘や排尿障害が起こることもあります。
またプラチナ製剤は、神経細胞に直接ダメージを与える結果、二次的に軸索障害をきたしていると考えられています。下肢やつま先のしびれに代表される感覚性の末梢神経障害が主に起こります。
末梢神経障害を起こると、日常生活において、服のボタンがとめにくくなる、つまづきやすくなる、手や足の先がしびれる、温度感覚が無くなる、味覚が変わるなど様々な症状が発生してきます。強い痛みを感じる場合もあります。聴力障害や耳鳴りが起こることもあります。
抗がん剤による神経障害はいったん発現すると有効な対策が少なく、不可逆的になる場合もあります。したがって、症状が強い場合には、抗がん剤治療の中断や薬剤の変更を余儀なくされます。がん患者が治療を早期に中止する最も多い理由の一つです。
手足の冷感、しびれがある場合は、温かい手袋や靴下を身につけて保温し、血液循環の改善をはかります。低温時には皮膚を露出しないようにし、お湯で温めたりマッサージで血行を良くすることも効果があります。
薬物治療としては、しびれ症状の緩和のためにビタミンB製剤(B6, B12など)を用いたり、疼痛に対しては非ステロイド性抗炎症剤副腎皮質ホルモン剤が使われることがあります。
マッサージや鍼などの補完療法が利用されることもあります。

激痛に対してはオピオイド(麻薬性鎮痛剤)が必要になります。抗うつ薬や抗てんかん薬が試されることもあります。
しかし、抗がん剤による末梢神経障害に対するこれらの治療法の有効性は立証されておらず、末梢神経障害の治療に使用される薬剤の中にはそれ自体に副作用がある場合もあります。すなわち、副作用が無く、抗がん剤治療の効果を妨げない方法が求められています。
副作用の少ないサプリメントとしては、アセチル-L-カルニチンαリポ酸メラトニンカンナビジオールの有効性が示唆されています。糖尿病治療薬のメトホルミンの効果も報告されています。これらは、いずれも抗がん剤と併用して抗腫瘍効果を高める効果も報告されています。
漢方薬では、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)の有効性が報告されています。
しかし、これらの個々の効果は弱く、単独で症状を改善することは限界があります。したがって、これらの複数の方法を組み合わせて、少しでも症状を改善することになります。

【抗がん剤による認知機能の低下(ケモブレイン)が増えている】
ケモブレイン(chemobrain)とは、chemotherapy(化学療法)の「chemo」と、brain(脳)を組み合わせて作られた用語です。「 化学療法後の脳機能障害」という意味で、抗がん剤治療中や治療後に起こる記憶や認知力の低下のことを指しています。
抗がん剤治療中あるいは治療後に、物忘れが強くなったという患者さんが多くいます。抗がん剤治療の進歩のおかげで再発率が低下し、生存期間が延長してくると、抗がん剤治療の後遺症の一つとして、記憶力や認知力の低下が問題になってきました。
命に関わることでは無いのですが、生活の質(QOL)を低下させる点で患者にとっては深刻な問題になっています。
とくにこの問題は乳がん患者の間で、1980年代後半から問題になってきました。乳がんの治療では、神経細胞の障害を起こしやすい抗がん剤が複数使用されることが多いことと、長期間延命する患者さん(乳がんのサバイバー)が多いためです。

記憶」というのは「忘れずに覚えておくこと」、「認知」というのは外界の情報を能動的に収集して処理する過程で、推理・判断・記憶などの機能が含まれます。したがって、記憶力や認知力の低下は、脳の活動の低下によって起こってきます。
記憶力や認知力が低下すると、物忘れ、言葉がすぐに出て来ない、物事に集中できない、一度に複数の仕事や作業ができない、新しいことを覚えられない、といった症状が出ます。倦怠感やうつ症状も症状の一つとなる可能性があります。
このような症状が、抗がん剤治療を受けている乳がん患者の10~40%で見られると報告されています。

ケモブレインの主な原因は、抗がん剤による神経のダメージ(神経毒性)です。
一般的には、細胞分裂を行わない神経細胞は抗がん剤によるダメージは少ないのですが、メソトレキセート、パクリタキセル、5-FUなど、神経細胞に毒性を示す抗がん剤も多くあります。
メソトレキセートは代謝阻害剤で、神経細胞の活動を低下させるので、倦怠感、睡眠障害の原因となる場合があります。
5-FUはプルキンエ細胞(小脳にある神経細胞)にダメージを与え、嚥下障害や不随意運動を起こす場合があります。さらに脳神経にダメージを与えて、言語障害、嗅覚脱失、歩行時のふらつき、舌のもつれなどの症状などの症状が出ることもあります。
ドセタキセルパクリタキセルは末梢神経にダメージをあたえて感覚障害を引き起こし、脳神経のダメージによって言語障害、健忘症、運動失調などもみられます。

症状が軽い場合には、抗がん剤の副作用なのか老化現象なのか判断が困難な場合が少なくありません。また、抗がん剤による神経のダメージだけでなく、治療に伴うストレスが関与している場合もあります。
さらに、抗がん剤によって卵巣機能が低下してホルモンバランスが障害されて、更年期症状として記憶力の低下が起こることもあります。
抗がん剤以外の服用している医薬品の副作用が関与している場合もあります。

いずれにしても、ケモブレインの症状は、老化に伴う記憶力や認知力の低下と似ているため、生活の質を悪化させる要因になっていることは間違いありません。さらにその症状の発症には複数の要因が絡んでいる場合も多いため、有効な治療法がないのが実情です。

ニコチンアミドリボシドは中枢神経系の働きを良くし、アルツハイマー病などの神経変性疾患の改善に効果があります。したがって、抗がん剤治療後の末梢神経障害やケモブレインの治療にニコチンアミドリボシドを使用する価値はあると思います

図:抗がん剤は中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系(運動神経、感覚神経、自律神経)の神経細胞にダメージを与えて様々な症状を引き起こす。抗がん剤による神経障害を軽減する補完医療として、ニコチンアミドリボシド、メトホルミン、アセチル-L-カルニチン、カンナビジオール、アルファリポ酸、メラトニン、漢方薬、ビタミンB製剤などが利用されている。これらは様々なメカニズムで抗がん剤による神経障害を予防・軽減することが報告されている。さらに、これらはいずれも抗がん剤の抗腫瘍効果を増強する作用がある。神経障害の症状が現れてからでは治療は困難になるので、抗がん剤治療の初めから併用することが重要である。

【補酵素は体内の化学反応を活性化する】
私たちの体内では、生きていくために様々な化学反応が起こっています。
食事からの栄養を分解してエネルギーを産生し、細胞分裂で細胞を増やす際には細胞を構成するタンパク質や脂質やDNAを新たに合成する必要があります。
このような体内での化学反応は酵素というタンパク質が行います。酵素(enzyme)は、生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子です。

酵母がブドウ糖(グルコース)を分解してアルコールを産生する反応(アルコール発酵)では、12種類の化学反応が見られ、それぞれの化学反応には別々の酵素がかかわっています。
解糖(glycolysis)では10種類の酵素が作用して1分子のグルコースから2分子のピルビン酸に分解されます。
解糖では1分子のグルコース当たり、2分子のNAD+をNADHに変換し、2分子のATPが生成されます。1分子のピルビン酸からピルビン酸デカルボキシラーゼによって1分子の二酸化炭素が取り除かれ、アセトアルデヒドが作られます。
アセトアルデヒドは還元型NADHの電子によって速やかに還元されてエタノール(C2H5OH)となります。この反応はアルコール脱水素酵素が触媒します。
アルコール発酵の12の化学反応には12種類の酵素が必要というわけで、これらの酵素はすべて純粋なタンパク質として酵母の中に入っています。

図:1分子のグルコース(C6H12O6)が解糖系で2分子のピルビン酸(C3H4O3)に分解され(①)、この間に2分子のATPが産生される(②)。解糖系では脱水素酵素の働きで水素原子が外され、外された水素原子は水素イオンと電子に分かれ、補酵素であるNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と結合し、NADH + H+ になる(③)。ピルビン酸に脱炭酸酵素が働き、二酸化炭素(CO2)が取り去られ、アセトアルデヒド(C2H4O)になる(④)。アセトアルデヒドはNADH + H+ の水素と結合して(⑤)エタノール(C2H5OH)に変化する(⑥)。つまり、アルコール発酵では1分子のグルコースから2分子のエタノールと2分子の二酸化炭素ができ、2分子のATPが産生される。

多くの酵素の中にはタンパク質のみで活性を発現するものもありますが、活性発現にはある種の低分子の有機化合物を必要とするものもあります。
このように酵素作用の発現に必須の低分子有機化合物を補酵素(Coenzyme;コエンザイム)と呼びます。
上述のアルコール発酵では、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が補酵素です。補酵素の多くはビタミンから生体内で作られています。特にビタミンB群やナイアシンは生体内でさまざまな酵素の活性発現に必要な補酵素として機能します。
ビタミンB群やナイアシンの欠乏は補酵素の欠乏を引き起こして、これらの補酵素が必要な各酵素の活性が低下し、生命活動の低下が起こります。

NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)ナイアシンというビタミンから体内で合成されます。NAD+は解糖系だけでなく、ミトコンドリアでのエネルギー産生反応にも必要は因子です。
NAD+レベルは加齢とともに低下し、加齢に関連する疾患の発症に重要な役割を担っていることが明らかになっています。
NAD+の細胞内レベルを上昇させる方法は、動物モデルで老化を遅らせ、筋肉機能を回復させ、脳での神経再生を促進し、代謝性疾患を改善することが示されています

【ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD) は補酵素として多くの酵素反応に関与する】
ニコチン酸ニコチン酸アミドは総称してナイアシン (Niacin) 、あるいはビタミンB3とも言います。水溶性ビタミンのビタミンB複合体の一つで、糖質や脂質やタンパク質の代謝に不可欠です。

ナイアシンは電子伝達体のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD) やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADP) に変換され、酸化還元反応 (電子が供与体分子から受容体分子に転移する反応) に関与する酵素の補酵素として機能しています。

脱水素酵素ではNADを補酵素とし、NADが水素の受け取り手となっています。
NADの構造の中で酸化還元反応に関与しているのはニコチンアミドの部分です。酸化型のNAD+が水素と電子を受け取って還元型のNADHになります。

図;NAD+が水素(H)と電子(e-)を受け取ってNADHになる(①)。NAD+は還元型基質から水素を受け取り(②)、その基質を酸化し、還元型のNADHとH+を生成する(③)。NADH+H+は、他の物質の還元に使われる(④)。

NAD+は、全ての真核生物と多くの古細菌、真正細菌で用いられる電子伝達体です。さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取ります。
NAD+は生物のおもな酸化還元反応の多くにおいて必須成分(補酵素)であり、好気呼吸(酸化的リン酸化)の中心的な役割を担っています。
前述のアルコール発酵では、解糖系で還元されたNADH(還元型ニコチンアミドジヌクレオチド)を酸化型のNAD+に戻すために、アルコール脱水素酵素でアセトアルデヒドをエタノールに変換することによって反応を持続できます。NAD+が無いとアルコール発酵は起こらないことになります。

【ニコチンアミドリボシドの服用は血液中のNAD+を増やす】
NAD+の前駆体のサプリメントとしての補充は体内のNAD+の濃度を高めることができます。以下のような報告があります。

Nicotinamide riboside is uniquely and orally bioavailable in mice and humans(ニコチンアミド・リボシドはマウスおよび人間において、独特かつ経口的に生物学的に利用可能である)Nat Commun. 2016 Oct 10;7:12948.

【要旨】
ニコチンアミド・リボシドは、NAD +前駆体ビタミンとして広く使用されている。 ここでは、人間の血中NAD +代謝におけるニコチンアミド・リボシドの経時的および用量依存的な影響を検討する。
1人の個人の予備試験で、ニコチンアミド・リボシドの単回経口投与で血中のNAD濃度は2.7倍も上昇し、マウスの肝NAD +を上昇させた。さらに、ニコチン酸とニコチンアミドより優れた薬物動態を示した。
さらに、100mg、300mg、および1,000 mgのニコチンアミド・リボシドの単回投与により、血中NAD +は用量依存的に増加することが示された。 また、NRからNAD +への変換の途中の中間代謝産物であるとは考えられていなかったニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NAAD)がニコチンアミド・リボシドから形成されることを報告し、NAADの上昇がNAD +の充足の高感度なバイオマーカーであることを発見した。

以下のような報告があります。

An open-label, non-randomized study of the pharmacokinetics of the nutritional supplement nicotinamide riboside (NR) and its effects on blood NAD+ levels in healthy volunteers.(健康なボランティアにおける栄養補助食品ニコチンアミドリボシド(NR)の薬物動態と血中NAD +濃度に対する影響に関する非盲検非ランダム化研究)PLoS One. 2017; 12(12): e0186459.

【要旨の抜粋】
目的:この研究は、人間におけるニコチンアミドリボシドの経口投与における薬物動態と血液中のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD +)レベルに対するニコチンアミドリボシドの影響を検討した。

背景:ミトコンドリア機能障害は心不全の発症と進行に重要な役割を果たすが、ミトコンドリアを標的とした治療法は行われていない。
最近のマウスを使った研究では、NADH / NAD +比の不均衡と、心筋を含む複数の組織のミトコンドリア機能障害との関連が報告されている。さらに、NAD +前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は心機能を改善し、別のNAD +前駆体であるニコチンアミドリボシド(NR)は筋肉、肝臓、褐色脂肪のミトコンドリア機能を改善した。したがって、人間におけるニコチンリボシドの薬物動態研究は、将来の臨床試験にとって重要である。

方法:8人の健康なボランティアを対象としたこの非盲検非ランダム化研究では、1日目と2日目に250 mgのニコチンアミドリボシドを経口投与し、7日目と8日目に最大用量1000 mgを1日2回に増量した。9日目の朝に1000 mg のニコチンアミドリボシドを投与した後、被験者は24時間の薬物動態研究を完了しました。全血中のニコチンアミドリボシドのレベル、臨床血液化学、およびNAD +レベルを分析した。

結果:経口ニコチンアミドリボシドは忍容性が良好で、有害事象は認められなかった。 ニコチンアミドリボシド(p = 0.03)とNAD +(p = 0.001)の両方で、投与前に比較して有意な増加が観察された。NAD +は100%の増加を認めた。 ニコチンアミドリボシドおよびNAD +レベルの投与前から投与後9日目までの絶対変化は、高い相関を認めた(R2 = 0.72、p = 0.008)。

結論:人間において、ニコチンアミドリボシドは血液中のNAD +を増加させるため、ニコチンアミドリボシドは遺伝性および/または後天性疾患によるミトコンドリア機能障害の患者の治療法としての可能性がある

この研究では、1日目と2日目は1日250mgを1回、3日目と4日目は250mgを1日2回(1日500mg)、5日目と6日目は500mgを1日2回(1日1000mg)、7日目と8日目は1000mgを1日2回(1日2000mg)と増やして投与しています。
9日目の朝に1000mgを投与した時点を0時としてそれ以降24時間の血中濃度を測定しています。
投与前に比べて、9日目にはNAD+の血中濃度は平均100%(35〜168%)の上昇を認めたという結果です。
この研究ではニコチンアミドリボシド服用による副作用は認められていません。
ニコチンアミドリボシドを毎日1から2グラム程度を摂取すると、心臓や神経系などの老化性疾患の進行予防に役立つ可能性は高いと言えます。

NAD+の前駆物質であるニコチンアミド・モノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide:NMN)とニコチンアミド・リボシド(nicotinamideriboside:NR)は以前はかなり高額でしたが、最近は安価に入手できるようになっています。
アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、多くの老化関連疾患の治療に有用です。
1日1から2グラム程度を摂取すると、老化抑制や若返りに効果が期待できる可能性もあります。心臓疾患にも有効です。
加齢とともに筋力がします。この筋力低下を防ぐ目的で運動は有効です。
運動による筋力低下予防において、筋肉のNAD+の量が多いほど筋力を高める効果が高いことが報告されています。
つまり、同じ運動をするときにも、NMNやNRを補充して筋肉内のNAD +の量を増やしておくと、運動の健康作用をより高めることができます。

【ジクロロ酢酸ナトリウムはミトコンドリア機能を活性化する】
ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼを阻害してピルビン酸脱水素酵素の活性を高め、その結果、ピルビン酸からアセチルCoAの変換が促進されて、ミトコンドリアでのTCA回路が亢進します。ビタミンB1αリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性に必要な補因子です。
サプリメントのコエンザイムQ10(CoQ10)とコーヒーに含まれるカフェインは酸化的リン酸化を活性化し、ATP産生を高める作用があります。

長期的にミトコンドリアを増やし、機能を高める方法としてはメトホルミンベザフィブラート、NAD+前駆体のニコチンアミド・リボシドニコチンアミド・モノヌクレオチドなどがが有効です。
つまり、ミトコンドリアの数と量を長期的に増やす方法と、ミトコンドリアの機能を活性化する方法を併用すると、筋肉や心臓などの諸臓器の働きを良くし、運動能力の向上と、抗老化とがん予防効果が期待できます

ジクロロ酢酸ナトリウム(Sodium Dichloroacetate)はピルビン酸脱水素酵素キナーゼを阻害してピルビン酸脱水素酵素を活性化します。ピルビン酸脱水素酵素はピルビン酸をアセチルCoAに変換する酵素で、ミトコンドリアでのTCA回路での代謝を亢進します。
がん細胞のミトコンドリアを活性化するときも使います。がん細胞のミトコンドリアをジクロロ酢酸で活性化するとがん細胞を死滅させることができます。(506話参照)

ジクロロ酢酸ナトリウムはミトコンドリアでのグルコース代謝とATP産生を亢進します。
ALSの動物実験モデルでジクロロ酢酸ナトリウムは脊髄の運動ニューロンの減少を抑制し、ALSの運動機能障害の発症を遅らせ、生存期間を延ばす効果が報告されています。
以下のような報告があります。

Modulation of astrocytic mitochondrial function by dichloroacetate improves survival and motor performance in inherited amyotrophic lateral sclerosis(ジクロロ酢酸による星状膠細胞のミトコンドリア機能の亢進は遺伝性筋萎縮性側索硬化症の生存と運動能力を改善する)PLoS One. 2012;7(4):e34776.

【要旨】
ミトコンドリア機能障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の神経変性につながる病原性メカニズムの1つである。 ALS発症に関連するSOD1(G93A)変異を発現する星状膠細胞はミトコンドリアの呼吸能力の低下を示し、運動ニューロンの死を引き起こす原因と関連する。
星状膠細胞を介した毒性は、ミトコンドリアを標的とした抗酸化剤によって防ぐことができ、神経毒性の発現におけるミトコンドリアの重要な役割を示している。
しかし、ミトコンドリアの代謝を活性化するために現在使用されている薬物がALSの進行を抑制できるかどうかは不明である。
ここでは、ピルビン酸脱水素酵素複合体活性(PDH)の活性化によりミトコンドリアの機能状態を改善するジクロロ酢酸(DCA)の疾患修飾効果をテストした。

SOD1(G93A)変異を発現するラットから分離された星状膠細胞培養にジクロロ酢酸を投与すると、ジクロロ酢酸はピルビン酸脱水素酵素複合体のリン酸化を低減し、ミトコンドリアにおける酸素呼吸を亢進した。
特に、ジクロロ酢酸はSOD1(G93A)アストロサイトの共培養条件での運動ニューロンへの毒性を完全に防止した。

SOD1(G93A)変異を発現しているマウスの飲料水中にジクロロ酢酸(500 mg / L)を慢性投与すると、未投与のマウスと比較して生存が2週間増加した。
全身性のジクロロ酢酸の投与は、SOD1(G93A)変異マウスの腰髄組織で測定された減少したミトコンドリア呼吸を正常化した。

ジクロロ酢酸の顕著な効果は、疾患の末期における握力のパフォーマンスの改善であり、これは、長指伸筋の神経筋接合部領域の回復と相関していた。全身性のジクロロ酢酸の投与は、SOD1(G93A)マウスにおいてアストロサイトの反応性を減少させ、運動ニューロンの損失を防いだ。
以上の結果から、ジクロロ酢酸によるミトコンドリアの酸化還元状態の改善が、ALSの治療に役立つ可能性を示している

ジクロロ酢酸ナトリウムはミトコンドリアの機能を活性化します。ニコチンアミドリボシド、メトホルミン、 ベザフィブラートは長期的にミトコンドリアの新生を亢進し、機能を活性化します。
ミトコンドリアの活性化は正常細胞に対しては機能亢進の方向で作用し、がん細胞ではミトコンドリアが活性化すると増殖が抑制され、細胞死が誘導されます。
つまり、がん治療において、ミトコンドリアを活性化するニコチンアミドリボシドは有用であり、メトホルミンやベザフィブラートやジクロロ酢酸ナトリウムと併用した治療は試してみる価値はあります(下図)。

図:グルコースが解糖系で代謝されてピルビン酸に変換された後、ピルビン酸脱水素酵素によってミトコンドリア内でアセチルCoAに変換される(①)。アセチルCoAはミトコンドリア内でTCA回路と呼吸酵素複合体における酸化的リン酸化によってATPが産生される(②)。R体αリポ酸とビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の活性に必要な補因子であり(③)、コエンザイムQ10(CoQ10)とカフェインは酸化的リン酸化を活性化する作用がある(④)。ピルビン酸脱水素酵素はピルビン酸脱水素酵素キナーゼによってリン酸化されることによって活性が阻害されている(⑤)。ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼを阻害する作用があり、その結果ピルビン酸脱水素酵素を活性化する(⑥)。ニコチンアミドリボシド、メトホルミン、 ベザフィブラートは長期的にミトコンドリアの新生を亢進し、機能を活性化する(⑦)。ミトコンドリアの活性化(⑧)は正常細胞に対しては機能亢進の方向で作用し(⑨)、がん細胞ではミトコンドリアが活性化すると増殖が抑制され、細胞死が誘導される(⑩)。

私はニコチンアミド・リボシド(NR)を3ヶ月前から毎日1から2グラム程度摂取していますが、明らかに心肺機能が向上しています。ジョギングの時のスピードと持久力が明らかに向上しています。
運動する1時間くらい前にジクロロ酢酸ナトリウム(1グラム程度)とビタミンB1(100mg程度)とCoQ10を摂取すると、さらに持久力が向上します。
サプリメントでミトコンドリアを増やしたり、ミトコンドリアの働きを高めることは可能であり、これは健康寿命を延ばす上で有効な方法だと最近実感しています。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 724)ヘッジホ... 726) 筋萎縮性... »