kenroのミニコミ

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フランドルからマグリットまで楽しめる  ベルギー王立美術館展

2007-04-15 | 美術
ベルギー王立美術館には2度行ったが、1度目はひどく疲れていて十分に見られなかったこと、それを取り返そうと訪れた2度目は、オフシーズンで半分が閉鎖中であったことから、残念な思いが残っていた。そして日本で開催された今回。フランドルの雄、ルーベンスやヨルダーンス、ブリューゲル(?)の「イカロスの墜落」まで来ていて楽しめた。
「イカロスの墜落」についてはブリューゲルの作であるかどうか論争中であるので展示にも(?)を付していた。同時代の宗教画を多く描くの画家と違い、ブリューゲルは普通の人間を描く人として知られる。もちろん風俗画ばかり描いていたわけではない。ブリューゲル(父)には「バベルの塔」(ウィーン美術史美術館)などもあり、風俗画家、通俗画家に収まりきらないのがブリューゲルのすごさであると言える。今回は(父?)の「イカロスの墜落」と(子)の「婚礼の踊り」などが展示され、たった数枚にしてブリューゲルの表現力の深さを垣間見ることができるし、王立美術館を訪れたことのある者なら、あの「ブリューゲルの間」を思い浮かべることができるであろう。そう、「反逆天使の墜落」や「ベツレヘムの戸籍調査」(厳密にはヨーロッパに「戸籍」はないので「出生地調査」くらいがより適切だと思うが、通常こう紹介されている。)などの傑作が瞼に浮かぶ。あの部屋に足を踏み入れた時のうれしさといったらない。壁一面がブリューゲルなのであるから。
さて、本展は16世紀フランドル絵画から、20世紀クノップフ、アンソール、デルヴォーまでもれなく押さえているので見やすいが、そういったすでに日本でも有名な画家の作品より、ティルボルフやテニールス(子)といった17世紀フランドル絵画の黄金時代を飾った作品が興味深かった。というのは、17世紀といえばフランスではルイ王朝の全盛期、フランドルでもルーベンスやヨルダーンスなどの大作がもてはやされていたのに比べ、小振ながら迫力十分の筆致であったからだ。もちろん、ルーベンスの作品など何百号もあり日本に運ぶのが難しい作品も多いからであるが、キリスト磔刑など劇的な主題は大振りな作品が似合うが、「村祭り」(ティルボルフ)など庶民を描いた作品は小振が似合う。もちろん今回展示されているルーベンス「聖ベネディクトゥスの奇跡」はドラクロアの模写とも比べられて紹介されており圧巻である。
北方フランドルというと、ヤン・ファン・エイクやメムリンクの作品も見たいが多くはベルギー西部の教会などにあることも多く、王立美術館が主展示場ではない。北方フランドルは現地に足を運び、マグリットまで近代を楽しむなら王立美術館へと贅沢な旅をまたしたいものである。そして今回は絵画だけであったが、王立美術館は現代デザインの優れた宝庫であることも紹介して欲しかった。(冒頭は「イカロスの墜落」)
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