いろいろなことを教えられ、考え、そして去来した。
まず野田正彰さんが、『戦争と罪責』で旅順戦犯管理所で自己の罪責と向き合った人たちを取り上げたのが思い起こされた。戦争の性格を語るとき、その戦争が「正しかった」「美しい思いの上で」といった価値がすでに付与されている抽象的な意味づけより、まず実相を語ることの大切さを、その人たちは教えてくれた。同じく「沈黙を破る」のイスラエルの元兵士の若者たちも、自分たちが占領地で何をしたかを語ってくれたのに、「占領」の実態を教えられた。
「沈黙を破る」のメンバーは、イスラエル国内では裏切り者呼ばわりされたり、非国民呼ばわりされたりしていると言う。日本でも旅順戦犯管理所での経験から戦地での自分たちの犯罪を告白し、反戦運動に与する人たちを「反日」「中国共産党に洗脳された左翼」などとレッテルを貼る人たちもいる。
「沈黙を破る」メンバーが、学校教育の中でくり返し教え込まれてきた「イスラエル兵は世界で最もモラルの高い兵士」とは違う実態を語る教育関係者のコミッティで、そこでは「教育のことに限って、政治的発言は控えましょう」という了解があるにもかかわらず、一人メンバーを強く非難する女性がいた。「(占領地でのイスラエル兵がパレスチナ民衆や子どもを無理矢理家から引きずり出す暴挙を言う前に)テロリストから襲われる恐怖を感じているイスラエルの子どもを考えよ」と。
日中戦争中の日本であれば、中国での皇軍の残虐性をあげつらう前に(もちろんそんなはっきりとした発言をした人はいなかった)、「中共やそのアカの息のかかった匪賊に襲われる(満州にいるなどの)日本人が襲われる恐怖に思いをはせよ」と、なるであろうか。あるいは、現在では石原都知事のように北朝鮮に「先にミサイルをぶち込め」みたいな発想につながるのであろうか。
「沈黙を破る」メンバーはシオニストではもちろんないが、ハマスやその他パレスチナ側の「強硬派」に与するのとももちろん違う。自分たちが「占領軍」として国家のために忠実に任務をこなしてきた中で「おかしい」、これまで教えられてきたことと違うと感じたことを、除隊後語り始めたに過ぎない。世界一モラルの高い兵士が、パレスチナ人に対しては、テロリストを支援しているとし、家から引きずり出し、戦車が通れないからと大切なオリーブの木々を切り倒し、そして無差別爆撃。
イスラエル兵は除隊後、占領地での経験を封印、忘れるためにドラッグ、酒、セックスにまみれる者も少なくないと言う。イラク帰還兵の30%がなんらかのPTSDに悩んでいると読んだことがある。戦争、占領の実態とは決して本当のことを語ってはいけない。沈黙を破ってはいけないこと=現実を見たことをありのままに語ってはいけないものなのであろう。
土井監督はパレスチナ側からの映像を取り続けてきたが、イスラエル側からの取材もないとかの地での実態を伝えることはできないと思ったという。土井監督のこの姿勢、そして、「沈黙を破る」顧問のラミ・エルハナンの言葉に深く感銘を受けた。エルハナンは自分の娘をパレスチナ人の「自爆テロ」によって失っているが、イスラエル側の犠牲者、パレスチナ側の犠牲者の遺族らの橋渡し運動を続けている。彼は言う。「すべての争いの解決には、結局、話し合うしかないのです。」
修復的司法の可能性をここにも見たのには楽観的にすぎるだろうか。
まず野田正彰さんが、『戦争と罪責』で旅順戦犯管理所で自己の罪責と向き合った人たちを取り上げたのが思い起こされた。戦争の性格を語るとき、その戦争が「正しかった」「美しい思いの上で」といった価値がすでに付与されている抽象的な意味づけより、まず実相を語ることの大切さを、その人たちは教えてくれた。同じく「沈黙を破る」のイスラエルの元兵士の若者たちも、自分たちが占領地で何をしたかを語ってくれたのに、「占領」の実態を教えられた。
「沈黙を破る」のメンバーは、イスラエル国内では裏切り者呼ばわりされたり、非国民呼ばわりされたりしていると言う。日本でも旅順戦犯管理所での経験から戦地での自分たちの犯罪を告白し、反戦運動に与する人たちを「反日」「中国共産党に洗脳された左翼」などとレッテルを貼る人たちもいる。
「沈黙を破る」メンバーが、学校教育の中でくり返し教え込まれてきた「イスラエル兵は世界で最もモラルの高い兵士」とは違う実態を語る教育関係者のコミッティで、そこでは「教育のことに限って、政治的発言は控えましょう」という了解があるにもかかわらず、一人メンバーを強く非難する女性がいた。「(占領地でのイスラエル兵がパレスチナ民衆や子どもを無理矢理家から引きずり出す暴挙を言う前に)テロリストから襲われる恐怖を感じているイスラエルの子どもを考えよ」と。
日中戦争中の日本であれば、中国での皇軍の残虐性をあげつらう前に(もちろんそんなはっきりとした発言をした人はいなかった)、「中共やそのアカの息のかかった匪賊に襲われる(満州にいるなどの)日本人が襲われる恐怖に思いをはせよ」と、なるであろうか。あるいは、現在では石原都知事のように北朝鮮に「先にミサイルをぶち込め」みたいな発想につながるのであろうか。
「沈黙を破る」メンバーはシオニストではもちろんないが、ハマスやその他パレスチナ側の「強硬派」に与するのとももちろん違う。自分たちが「占領軍」として国家のために忠実に任務をこなしてきた中で「おかしい」、これまで教えられてきたことと違うと感じたことを、除隊後語り始めたに過ぎない。世界一モラルの高い兵士が、パレスチナ人に対しては、テロリストを支援しているとし、家から引きずり出し、戦車が通れないからと大切なオリーブの木々を切り倒し、そして無差別爆撃。
イスラエル兵は除隊後、占領地での経験を封印、忘れるためにドラッグ、酒、セックスにまみれる者も少なくないと言う。イラク帰還兵の30%がなんらかのPTSDに悩んでいると読んだことがある。戦争、占領の実態とは決して本当のことを語ってはいけない。沈黙を破ってはいけないこと=現実を見たことをありのままに語ってはいけないものなのであろう。
土井監督はパレスチナ側からの映像を取り続けてきたが、イスラエル側からの取材もないとかの地での実態を伝えることはできないと思ったという。土井監督のこの姿勢、そして、「沈黙を破る」顧問のラミ・エルハナンの言葉に深く感銘を受けた。エルハナンは自分の娘をパレスチナ人の「自爆テロ」によって失っているが、イスラエル側の犠牲者、パレスチナ側の犠牲者の遺族らの橋渡し運動を続けている。彼は言う。「すべての争いの解決には、結局、話し合うしかないのです。」
修復的司法の可能性をここにも見たのには楽観的にすぎるだろうか。