すばらしい。久しぶりに泣いて笑って気持ちよくなる映画らしい映画に出会った気がした。斜陽産業の地で仕事のなくなる、ない者たちが興味を持てる何かを見つけ、それに邁進する中で自信を持ち、仲間との友情を育んでいくドラマといえばイギリス映画のお手のものでまず「フル・モンティ」(97年)があげられる。「フル…」は実話だが、フラガールと同じ炭坑が舞台の「ブラス!」も人気が高い。あとちょっと違うが「リトル・ダンサー」なんてのもある。どれも感動ものだけれども、「フラガール」はこれらと匹敵、いや上回る出来だと思う。
昭和40年。高度経済成長のまっただ中で石油消費はどんどん増えるが、石炭需要は下がるばかり。本州最大の常磐炭坑も人員削減、解雇される人々の行く先も見えず、街の士気は下がる一方。炭坑会社が打ち出した新たな事業展開は何と北国での「ハワイアンセンター」。フラダンスを教えに来た元SKDレビューのダンサーはやる気全くなし。炭坑の娘たちはダンスを習って未来につなげたいものの親は炭坑一家で激しい反対に遭う。解雇された者は夕張に仕事を求め、フラダンスを真っ先に始めた娘も引っ越しを余儀なくされる。しかし、陰鬱な雰囲気を打ち破ることこそ明日が見えるとばかりにレッスンに励む娘たち。やる気のなかった都落ちの先生もだんだんいい先生に。なんとも簡単。先も読みやすい。でも泣けた、泣けた。
実は主演の松雪泰子さんというのを名前くらいしか知らなかった。3ヶ月の猛特訓で魅せたダンスはすばらしく、つんけんした嫌な東京もんがだんだん優しく、いい表情になっていくのはやはり女優さん。常磐炭礦の実話をもとにしたお話だが、実在のカレイナニ早川さんという人は別に飲んだくれではなく70歳を超えるまで振り付け指導をしたという。驚きなのは40年前に福島の炭坑しかないところにハワイアンリゾートを持ってくるというその大胆な発想だ。プロジェクトXではないけれど、やはりあの頃は何かしら夢を実現する力にあふれていたのだろうか。
炭坑のまちは一山一家。よそ者は排除の雰囲気もあるし、娘に裸のダンスをさせるなど(誤解だが)もってのほか。それでも閉山が近く、なんとかしたいという思いは経営者のみならず働く者、その家族も同じだろう。成功したハワイアンセンターだが一時は人気も低迷、だが、スパリゾートとして現在も繁栄を保っているという。そして、常磐ハワイアンセンターからフラダンス人口は増え、誰も中央の舞台に引き抜かれることなく代を重ねていったそうな。美談だが、苦しいときも当然あったはずでそれを吹き飛ばしたのが笑顔絶やさないフラダンスの真骨頂なのだろう。
イギリス映画はとても好きだが、これほどの心地よさはないように思う。そのあたり、ちょっと慇懃無礼な、いや、シャイな英国の魅力でもあるのだが。とまれ日本映画らしいつくりも当たって、今期の超オススメである。そして「日本映画」と書いたが、監督・脚本は在日3世の李相日、そして製作は「パッチギ」の李鳳宇。まだまだ楽しみな実力者たちである。
昭和40年。高度経済成長のまっただ中で石油消費はどんどん増えるが、石炭需要は下がるばかり。本州最大の常磐炭坑も人員削減、解雇される人々の行く先も見えず、街の士気は下がる一方。炭坑会社が打ち出した新たな事業展開は何と北国での「ハワイアンセンター」。フラダンスを教えに来た元SKDレビューのダンサーはやる気全くなし。炭坑の娘たちはダンスを習って未来につなげたいものの親は炭坑一家で激しい反対に遭う。解雇された者は夕張に仕事を求め、フラダンスを真っ先に始めた娘も引っ越しを余儀なくされる。しかし、陰鬱な雰囲気を打ち破ることこそ明日が見えるとばかりにレッスンに励む娘たち。やる気のなかった都落ちの先生もだんだんいい先生に。なんとも簡単。先も読みやすい。でも泣けた、泣けた。
実は主演の松雪泰子さんというのを名前くらいしか知らなかった。3ヶ月の猛特訓で魅せたダンスはすばらしく、つんけんした嫌な東京もんがだんだん優しく、いい表情になっていくのはやはり女優さん。常磐炭礦の実話をもとにしたお話だが、実在のカレイナニ早川さんという人は別に飲んだくれではなく70歳を超えるまで振り付け指導をしたという。驚きなのは40年前に福島の炭坑しかないところにハワイアンリゾートを持ってくるというその大胆な発想だ。プロジェクトXではないけれど、やはりあの頃は何かしら夢を実現する力にあふれていたのだろうか。
炭坑のまちは一山一家。よそ者は排除の雰囲気もあるし、娘に裸のダンスをさせるなど(誤解だが)もってのほか。それでも閉山が近く、なんとかしたいという思いは経営者のみならず働く者、その家族も同じだろう。成功したハワイアンセンターだが一時は人気も低迷、だが、スパリゾートとして現在も繁栄を保っているという。そして、常磐ハワイアンセンターからフラダンス人口は増え、誰も中央の舞台に引き抜かれることなく代を重ねていったそうな。美談だが、苦しいときも当然あったはずでそれを吹き飛ばしたのが笑顔絶やさないフラダンスの真骨頂なのだろう。
イギリス映画はとても好きだが、これほどの心地よさはないように思う。そのあたり、ちょっと慇懃無礼な、いや、シャイな英国の魅力でもあるのだが。とまれ日本映画らしいつくりも当たって、今期の超オススメである。そして「日本映画」と書いたが、監督・脚本は在日3世の李相日、そして製作は「パッチギ」の李鳳宇。まだまだ楽しみな実力者たちである。