kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

アダム・クーパー 「危険な関係」

2005-02-27 | 舞台
キリスト教美術などと同じでダンスもストーリーを知っていたほうが断然面白い。恥ずかしながら、ド・ラクロの「危険な関係」は原作を読んだこともないし、これまでいろいろ舞台を変えて映画化されてきたことも知らなかった。そしてバレエ、ダンスについても全然知らない。けれどこれは楽しめた。もちろんパンフレットを子細に読んでいたのだが。
18世紀の貴族社会の退廃を背景にして恋愛ゲーム、駆け引き、罠、そしてそれらを戒める道徳的価値観。200年前の書簡小説が原作だというのに全然古めかしくない。そのように脚色しているのだろうが、すぐれた文学作品は本来普遍的なものだ。シェークスピアもの然り、オースティンもの然り。人間の欲望、(恋愛)感情、心の機微などは人間である限りなくなったり、描き尽くされたりすることはない。大柄なクーパーのダンスが、その他の出演者も含めてこの物語の魅力を描ききったのだ。濃厚なベッドシーン、篭絡の劇的なセンス、自重自戒の苦悶まで卓越したテクニックで表現できるなんてすばらしい。バレエでもR指定にしなくていいのかと心配になったほどだ。
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スペイン美術館巡り ミロ美術館&ピカソ美術館

2005-02-26 | 美術
カタルーニャはピカソ、ミロ、ダリなどシュールレアリズムの巨匠たちを生み出した地方。時間がなかったため今回はフィゲラスのダリ美術館に行けなかったのが残念。パリにもダリ美術館はあるがとても小さい。ただピカソ美術館はバルセロナのここもよいが、閑静な住宅街であるマレ地区の個人宅を改造したパリも素敵だ。バルセロナは旧宮を改築したと言い、大変広く、迷路のようだ。ベラスケスの「ラス・メニーナス」を模した作品もあり興味深い。80年間近くも創作し続けたピカソの画業をたった1館で物語るのがそもそも難しい注文なのかもしれない。
「ああ、ミロだ」とすぐわかるのがミロの作品。よく並び称されるクレーともやっぱり違う。ただよくモチーフにされる男性・女性像はエルンストの影響(どっちが?)は明らかだ。しかしエルンストはキュビズム的であるのに対しミロの曲線はやさしく、親しみが持てる。日本でもミロ展はしょっちゅうしているが、平面が多く、ここまで来ないと多くの立体には出会えない。それにしてもカタルーニャのシュールレアリストたちはどこからあんな変な構造を考えつくのだろう。
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スペイン美術館巡り グッゲンハイム美術館&ビルバオ美術館

2005-02-22 | 美術
ニューヨークのグッゲンハイム美術館は建物の面白さ、展示順、そして収蔵作品の素晴らしさで大好きな美術館の一つ。その新規分館ということで期待したのだが。ビルバオはバスク地方の中心地。でも工業発展で人口流入もあってバスク語を解する人はほとんどいないそうな。けれど旧市街の何とも言えない雰囲気やトラムが川沿いに走るゆったりとした町並みはマドリッドなど大都会にはない趣がある。ビルバオのグッゲンハイムは常設展なし、特別展だけ。フランスの現代アーティスト、イブ・クラインの作品の吸い込まれるような群青にはっとさせられた。クラインと言えば、青、そして炎。ビデオ映像で回顧される彼の仕事ぶりはやはり変。裸の人が青ペンキまみれになってカンバスにまといつくって、なんだ、こりゃ。でも楽しい。向かいのビルバオ美術館は思いもかけない広さと収蔵作品の素晴らしさ。カソリックの匂いぷんぷんする木製の磔刑像など、とてもよかった。グッゲンハイムは建物を楽しむものだが、ビルバオ美術館は常設展で勝負。ロマネスクから現代美術まで飽きさせない展示も素敵だった。
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スペイン美術館巡り 国立ソフィア王妃芸術センター

2005-02-20 | 美術
パリのポンピドーにあたる現代美術ばかりを集めた同館の一番の人気作はピカソのゲルニカである。1937年のパリ万国博覧会のスペイン出品作としてピカソがバスクを襲ったナチスドイツによる空爆のニュースに衝撃を受けて制作したことはあまりにも有名。それと同作品がパリ万博後、スペインには戻らずノルウェーなどヨーロッパ各国で公開された後39年ニューヨークに渡り、寄託先をMoMAとしてスペインを除く各国に貸し出されたことも話題の大きさを語っている。81年やっとプラド美術館別館に返却され、92年現在のソフィア王妃センターを多分安住の地として最終的に落ち着いたのである。95年に京都国立近代美術館において「ピカソ 愛と苦悩 「ゲルニカ」への道」展が開催された際は本物は出展されず、実物大の写真図版が展示されたが、ソフィアという日本の美術館に比べて大きなところで見ると本物は案外小さく見えた。日本でピカソ展というと青の時代やそれ以前のものはあまり来ないが、さすが本家、ピカソの若い頃の作品もふんだんにあり、キュビズムに至る前のピカソの確かなデッサン力が「ゲルニカ」で結実していることがよくわかる。個人的にはピカソやミロよりゴンザレスやカルガーリョの彫刻も多いのが同館の楽しみであった。
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スペイン美術館巡り ティッセン・ボルネミッサ美術館

2005-02-19 | 美術
パリの国立美術館が時代区分ごとにルーブル、オルセー、ポンピドーと並んでいるのに対し、このティッセン・ボルネミッサはオルセーにあたる。だから印象派の作品がやたら多い。けれど19世紀以前あるいはポスト印象派以降の作品もあり、フェルナン・レジェやホアン・グリス、フランシス・ベーコンが並んでいるのは楽しい。プラド美術館の斜め向かいというのも便利だが、1日に2館も見られる規模ではない。ただスペインの美術館は7時あるいは8時まで開いているのが普通なので、もともと宵っぱりの民族性(夕食は早くて8時以降)にあっていて閉館までぎりぎり見てあとはバル(居酒屋)へという楽しみもある。
キュビズム、シュールレアリズム、シュプレマティズムの作品もそれなりにあって楽しいが、どうしてもドローイング中心で近代~現代彫刻は少ない。そこが残念だが、マレーヴィッチのTシャツを半額セールで買って喜んでいた。
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スペイン美術館巡り プラド美術館2

2005-02-16 | 美術
ヒエロニムス・ボッス(ボッシュ)の「快楽の園」は見る者を圧倒する。左翼にエデンの園、右翼に地獄、そして中央は性におぼれる人間たちの現実世界とするならばこれほどわかりやすい絵もない。しかし、図録によれば中世を通して北ヨーロッパに拡がったアダミトという異端セクトの教義と現実を結ぶ諺が作品のあちらこちらに含意されているらしい。ボッスは造形美術アカデミー(ウイーン)の「最後の審判」では奇妙な生き物がたくさん登場し、目が離せなかった記憶がある。いずれにしてもボッスの絵は長年その解釈をめぐって論争を巻き起こし、とても祭壇画には見えないのもむべなるかなといった感じである。
プラド美術館は教科書にも出てくるような有名な作品が目白押しである。ボッス以外にもベラスケス「ラス・メニーナス」、ゴヤ「着衣/裸のマハ」「我が子を喰らうサトゥルヌス」、ムリリョ「スルトの無原罪のお宿り」などなど。どの作品にも見入っていていると時間が足りなくなるのが残念だ。
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スペイン美術館巡り プラド美術館1

2005-02-14 | 美術
1階の正面玄関を抜けるといきなり右手に現れる鮮やかな色彩。フラ・アンジェリコの「受胎告知」はフィレンチェのサン・マルコ修道院の壁画でも見たが、こちらの方が断然保存状態が良い。ルネサンス以前にこれほど物語的な、遠近法の萌芽も見られる(と思う)斬新な光景が繰り広げられているとは。大天使ガブリエルの告げる姿勢とマリアのそれを受ける仕草は完璧にも見える。
プラド美術館には中世、バロック絵画の逸品がたくさんある。それもこの作品のとなりにこの作品と。イタリア絵画で言えばティツィアーノやコレッジオ、ティントレットなど。一方スペイン絵画もこれまたエル・グレコの切れ味するどい青、大げさなリベラ、風俗画的な楽しみもあるシルヴァなど。素人が見ても十分面白い数々は、できればその作品が描かれた背景がわかったほうがよい。そして、スペイン語も(もちろん私はさっぱり)。
コメント (1)
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