CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】傾国 もうひとつの楊貴妃伝

2017-12-09 23:46:57 | 読書感想文とか読み物レビウー
傾国 もうひとつの楊貴妃伝  作:中路 啓太

傾城傾国、いずれとも呼ばれる
かの楊貴妃の話を扱った小説でありました
私としては、初楊貴妃なので、これが主軸になってしまうんだが
多分、スタンダードなつくりだったんでなかろうか
そう感じるところであります

主人公は、楊貴妃ではなく、ある宦官で
その男が妙な道士と出会い、その導きによって
宮中で出世し、やがて楊貴妃を皇帝に差し出すこととなると
まぁ、そういうお話でありました
政治臭い話や、戦略謀略なんてものは出てこずに
ただただ、高級官僚として生きていた宦官の話ながらも
なかなかに面白く、中国史ものというよりは
男と女の機微を扱ったような内容で、
静かに楽しめた一冊でありました

ともかく、楊貴妃という頭は弱いが可愛らしい娘が
皇帝に寵愛されて、それによって国が傾いていくと
まさに、傾国の字そのままの転落でありましたが
栄華を極めたものが、何か倦んで行くという様は
リアルといっていいのか、わかる気がすると
何かに飽きてしまう、どうでもよくなるというものについて
考えさせられたのでありました
それとは別に、ただ生きているのに必死な宦官が
哀れのような、わかっているようで何もわかっていなかったようなと
こういうのが人生っぽいなぁと
なんだか感心しきりだったのであります

人間に上下があるかなしか
それはよくわからないが、思うところのレベルに差があるのは確かで
それを理解したり、共感したり、できないものも
多々あるのだろうなと思わされて
ある種の滅びは仕方の無い憐憫なのかもと
感情で片付けてしまいたくなるような
そこが、文章、文学として面白いのだろうかなと
かっこいいことを思い知らされたりしたのでありましたとさ
いい小説だったと思うのであります
とにかく、これで唐という国、時代のことが
だいぶわかった気がするので、まためでたいのであった
次は隋か、宋のあたりを調べたいところ

【読書】ダブルマリッジ

2017-12-07 22:24:43 | 読書感想文とか読み物レビウー
ダブルマリッジ  作:橘玲

なんだかんだ追っかけてしまう、橘玲氏の小説であります
今回は、重婚というテーマで、日本の法制度の隙間を狙った
東南アジア諸国との関係というか、物語においては
フィリピンと日本の関係でもあるといったところで
ある種、闇めいた部分を描いているようで非常に面白かったのでありました

知らないうちに戸籍が乗っ取られていた
いや、書き換えられていたという衝撃の展開から
過去の負債を購っていくかのような話になるのでありますが、
そのかしこで、世間知らずのお嬢様がそういった世界に
身一つで乗り込んでいく、ある種の冒険も加えられたりとかして
小説として非常に読み応えありつつ、
かつ、フィリピンという国についての知識や、
世界の成り立ちについての警鐘までも得られるような
ステキな小説でありました
まぁ、あまり日のあたらない話ではあるけども、
日本人が、相当にフィリピンで悪さをしたというところの
ツケが廻っているということを描いているようにも思えて
そればかりではないだろうが、
そういうことが無視できないレベルで存在することも理解できる
そういう、リアルよりの話で面白く読めたのでありました

物語としては、正直解決も、爽快さもない内容だったのでありますが
そういったことは置いておきつつ、今まさに
生きている法制度の中で、ここまで矛盾といってもいいのか
あらゆることを、先送りにした出来事がまかり通っているのかということを
ありあり描いていて、とても興味深いのでありました
なかなかどうして、世間の闇という
わかりやすい言葉で語りたくなるようなことが山ほどあるのを
戸籍という、一種独特の制度にかこつけて書いてしまうのが
この小説の魅力だよなと感心しきりだったのであります

現状、重婚という事態に陥っている
その頃悪さをした人たちが、どれほど居るのか
あるいは、どれほど身に覚えがあるのかわかりませんが
なかなか、考えさせられるところだなと
しみじみ思い知ったのであります

ありていながらも、こういった事件というか事態を起こすのは
決まったように、大手の海外出向者であるのは
当たり前でもあるし、不思議でもあるなと
つくづく思い知らされるのでありました
自分では発生しえないことなんだけど
こういうのが当たり前の世界で生きている人もいるのだなと
思い知るのであります

【読書】桐島、部活やめるってよ

2017-12-06 21:59:49 | 読書感想文とか読み物レビウー
桐島、部活やめるってよ  作:朝井 リョウ

読んでしまった
本当は、先日のおんな城主直虎の前に読みたかったんだが、
前々から、キャッチーなタイトルに惹かれつつも
機会に恵まれなかった本書であります
読み終わって、あれ?もっと若い人じゃないと楽しめない?
なんて思ってしまったんだが、
何者のときのようなひりひりした感じが、
もうちょっと淡い、でも何かもやもやしているという
独特の青春が見事に描かれていて
脱帽というか、面白く読み終えたのでありました
凄いなぁ、だだ漏れになる若さみたいなのが、
文章でありあり伝わってきて、身に覚えがある何かをなでていくようで
たまらんのでありました

ネタバレにあたるかどうかわかりませんが、
とりあえず表題の桐島が出てこないというのに
まず衝撃を受けてしまったのだけども
桐島と関係がありそうでないような、様々な同年代たちを
オムニバスで見せて、それぞれの青春と悩みが描かれているかと思えば
何か、共通する不安みたいなのが浮かんできて
とても楽しいというか、よくできた小説だと
感心しきりだったのであります
読み終わって、捕まえられない、漠然とした不安が
まさに読めたという感じがして
たまらんと思うのであります

青春小説なのに、ちっとも明るくない、
そんな風にも読めるけども、
陰湿や、鬱屈とした暗さもないという
実に不思議な魅力にあふれていて、
誰にでもあったような、時代を超えて思い出される
その時に感じていたものを追体験できるようで
楽しんで読み終えたのでありました

ところで、会話部分は岐阜訛りなんだろうかしら、
独特の喋り言葉に、音声をつけたくなるんだが
イントネーションがわからんとお手上げである、悔しい

タイトルばかり有名といっては失礼ながら、
なんか面白い小説という誤解をまねいていそうな感じもするんだが
内容は、じっくりと感じさせられる、考えるのではない
思考ではない感覚の物語を堪能できるのでありました
よかった

【読書】儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間

2017-12-05 21:03:35 | 読書感想文とか読み物レビウー
儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間  著:菊地 章太

東アジア、とりわけ中国における宗教観を
ざっくりと語った本でありました
学術書というほどではなく、かなり砕けた調子で書かれていて
笑いながらは言い過ぎなれども、目を細めて読むことができました

著者の名前は、先だって読んだ道教の本の一冊で見かけたと思い、
てっきり道教の達者だろうと思っていたら、
本分はフランスの宗教だか、哲学だかにあるんだそうで
そういう立場から、むしろ離れてそれらを語るということに
意義と意味を見出した一冊でありました

道教を調べていて、どの本にも出てきた
あれこれごたまぜになっているという話が
より解りやすくというか、著者の研究と思考をもとに展開していて
なかなか楽しいのでありました
まずは西洋における宗教の成り立ちがあって、そこから続いての
実際に混淆されていく、儒教、仏教、道教それぞれを描く、
お互いが、影響しあいということが
時代、人物、制度によって行われていったというあたりは
以前に勉強したとおりながら、
今回は特に、仏教、日本における仏教の諸行事を紹介していて
白眉なのは、盂蘭盆会の話で、
そもそものインドで発祥した仏教には、先祖を祭るという概念がないというところ
ここに疑問というか、混淆の痕跡を発見したというところでありました

確かに、よくよく考えてみると
輪廻転生という概念があるんだから、先祖というものを否定ではないけども、
祀ることでつながるということは、理屈にあわないわけで
お盆といえば仏教というのも、どこかおかしいというお話であります
もっとも、このあたりは、中国で、もともとあった儒教的概念と
ごたまぜになったものが、あれこれとカスタマイズされて
日本に導入されたのではないかというのがなるほどな解説で、
地獄という概念の話も、道教的要素が強まっていたりすることと
あわせて納得の内容でありました
そうだよな、お盆てなんだろうな本当にもう

儒教のカウンターとしての道教というのは、
また異なる見解ではあるものの、
孔子に対する老子というものが、そういういきさつなので
こういう諸々の事情によって、お互いが影響しあうというのが
非常に面白い、興味深いと感じられるところでありました

なかなか勉強になったなと満足なのでありますけども、
道教あるいは、老子というものが
現在、まさに今誰に、どのように理解されているのか
実践されているものも含めてまたまた
興味がわいてしまうのでありました

唐代道教の凄い分厚い本を発見したんだが
流石にあれを読むのはなぁと、及び腰なのであるが
ともかく勉強が楽しいと思える昨今である

【読書】「環島」 ぐるっと台湾一周の旅

2017-12-04 21:20:54 | 読書感想文とか読み物レビウー
「環島」 ぐるっと台湾一周の旅  著:一青妙

静かなブームが、いよいよ日本にもやってきた
そんな風に感じていた「環島」について、
台南の観光大使をやっている妙さんがやってきたと
そういうドキュメント本でありました
読んでみると、確かに台湾環島を主軸にしているんだが
気付くとサイクリングというか、自転車本じゃないかと
ちょっとそう思ってしまうくらい、
自転車で一周する楽しさと、その準備や心構えに
大半が割かれていました

ただ、題名をしっかりと守っているのは確かで、
一番メインというか、楽しいと思われる自転車による一周のほか、
電車、バス、自動車、そして徒歩という、それぞれの台湾一周に関する知識も
綺麗にまとめられていたので、いつかやりたいと思ったときに
参考としたい本でありました、とてもいいと思うのである

自転車文化といっていいのか、
ジャイアントという大きな自転車の会社が台湾にあるそうで、
そこ主催の一周ツアーに参加したという話がメインであります
これがなかなか大変だったのは想像に難くないのでありますが、
なかなか楽しそうに、現地の人や、チームと一緒にがんばっているのが
ステキな感じに描かれていまして、
台湾一周というテーマではあるものの、
自転車で走るということが、とても楽しいのだと伝わってくる内容でありました

このロード自体も、よくよく考えられていたツアーのようで、
初心者でも大丈夫なように、日程や、行程が細かに組まれているうえに
相当の援助というか、サポートを得ながら参加できるようで、
これだったら、ちょっと練習したら俺でもやれそうじゃね?と
思わされるような、かなり至れり尽くせりに読めたので
楽しいことこの上ないのでありました、
そういう意味では、ちょっと、その宣伝がかねられているのかしらと
うがったことも考えてしまうが、
広義での口コミでなかろうかという感じでありました

著者の妙さんが馴染みのある、台南に差し掛かったときに
地元の人たちが応援してくれる様だとか、
走りながら、それぞれの土地での美味しいものを食べることの喜びが
あっさりと、それでも確かに届くよう語られていて
とても楽しいと思えたのでありました
釈迦頭食べたいなぁ

そんなわけで、久しぶりに台湾本を読んだと思いつつも、
趣向としては、自転車の楽しさと半々というところ
しかし、そういうイベントを積極的に生かしている
現代の台湾について、イベント企画について考えさせられたのでありました
国を挙げてといってもいい行事であるのは
よいことだと思うのである

そういう文化的火付けとなった、いくつかの環島にまつわる映画紹介もあって
台湾文化にふれる一冊でありました

おんな城主 直虎  信長、浜松来たいってよ

2017-12-03 20:44:46 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」
視聴完了であります
こんな副題反則じゃないか、先週の時点で
笑いすぎておなか痛かったのですが、
内容はいたって真面目で、しかも、最終回に向けて
なるほど、そういう筋書きなのかと驚いてしまったのであります

本能寺、家康も一枚噛んでいた説

なかなか衝撃だと思ったのですけども、
今回の話の流れなら、なるほど、そう思わなくもないなと
ドラマならではと思える納得をしつつでありました
本当、面白い脚本だとうならされてばかりであります

今川まで一枚噛んでいて、そこここでヘイトを貯める信長と
それをふつふつと隠して道化のように振舞う
明智、今川、そして徳川というのがいい塩梅でありました
ブラック企業っぽいなぁ
あえてというほどでもないが、秀吉がまったく出てこないのも
いい意味でリアルだなと思わされるところで、
滝川くらいは見たかったかもと思いつつ、
本能寺がどのように描かれるか、楽しみで仕方ない感じであります
どこまでやって終わるんだろうかな、
万千代大活躍だから、小牧長久手くらいまでやるんだろうか

明智の子供を匿うというのが、
最初竜宮小僧かしらと思っていたんだが、
どのように回収される話になるか
ちょっとこちらも楽しみなのでありますけども、
徳川と明智の間にある謎の友情というか、
天海僧正あたりの話に最終的につなげるつもりじゃないかと
思ったりしながら、わくわくしたいと思うのでありました
まぁ、明智に嫡男というか子供がいたとすれば
もっと大騒ぎだろうから、妾に生ませたとかなんとかにして
なかなか面白い話になりそうだと思わされたのであります
いい展開というか、話だなぁと感心しきり
いや、そうだと誰もいってないから
ずっこけてしまうかもしれないけども

ともあれ、来週楽しみにまた待ちたいのである
気付けばもう、終わりなのだなぁ

【読書】香乱記

2017-12-02 19:59:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
香乱記  作:宮城谷 昌光

秦末期から楚漢戦争にかけて、斉の国を治めた田氏一族、
特にその時代の最後の斉王となった田横を主人公にした小説でした
まったく知らなかったという感じで読んだけども、
多分、過去の宮城谷先生の作品のどれかで
ちろっと出てきたんじゃないかなと思ったりするんだが
聖人といえばいいのか、実に澄み切った王の風情を描いていました

立場というか、この小説では、
項羽、劉邦、韓信といった英雄いずれもが、
狡猾で残忍で、軽薄な人間であると
唾棄すべきというか、まぁくそみそにしているのが
なかなか衝撃的でありまして、
ひょっとして、漢に親を殺されたんじゃないかとか
疑いたくなるような有様で描かれていました
まぁ、実際、漢を建てたあとに要人を殺しまくる劉邦が
いい人なわけがないのも事実だろうと感じるところでありますが
斉の王を主人公としているところもあて、
残忍というか、卑怯極まりない人物というのが
まざまざ描かれていて衝撃的でありました
この小説は、田横の話であるけども、
それを描くことで、項羽と劉邦の悪いところをふんだんに描いたと
そういうものであったという印象を受けたのであります

結構短い期間で、王が建ち滅びと
そんなことを繰り返すように鳴動していた中華が面白くて、
秦という大国の凄さと、その末期の哀れもわかれば、
動乱が続く有様も物凄いもので
いつの世の中も宦官が酷いというのと、
正義とは何かということを考えさせられる、
そういう清潔さを持ったものが滅んでいくという
世の中のあり方が哀しいというお話なんだけども、
根底に最近勉強していた老子があるのもステキというか
中国史を学ぶには、哲学思想として、
論語、老荘あたりは押さえておかないといけないのだなと
改めて思い知らされた次第でありました

面白かったけども、ちょっと覚えていられないんじゃないかと
自分の記憶力の低下を悲しく思いつつも
斉の田氏という一族がいたことだけは
なんとか覚えておきたい、そういう三冊でありました