落葉松亭日記

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石平氏のチャイナウォッチ 「失聯・土豪」

2014年12月06日 | 世相
メルマガ「石平(せきへい)のチャイナウォッチ」より。
~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~
石平(せきへい)のチャイナウォッチ 2014年12月5日 10:58:02JST
http://www.seki-hei.com

■ 金融不安、貸し渋り、ヤミ金融…「失聯=夜逃げ」ドミノに見る中国経済の末日

中国の新聞に今、 頻繁に登場する新造語に「失聯」というのがある。
「連絡を絶つ」という意味だが、 多用されるのは企業経営者の場合である。
倒産寸前の企業の経営者が突然連絡を絶って夜逃げする、 それが失聯事件となって世間を騒がすのだ。
もちろんその際、企業の借金や未払い賃金などが 踏み倒されるのは普通である。
 たとえば最近、新聞に報じられた失聯事件を拾ってみよう。

10月22日と24日、広東省にある 2つの照明器具企業の経営者が相次いで失聯した。
そのうちの1つの企業の場合、 踏み倒された借金は7千万元(約13億4千万円)に上る。

23日、陝西省の企業経営者が 数億元の借金を踏み倒して失聯。
25日、山東省でも企業経営者が 従業員の未支払い給料45万元を踏み倒して失聯。

11月5日、雲南省では、 不動産開発会社の経営者が 県の「重点開発プロジェクト」の工事の途中で失聯している。
13日、中国中古車のトップブランドとされる 「易車匯」の経営者が失聯、 全国に点在する数多くの店舗が閉鎖された。

同じ13日、河南省の物流大手「東捷物流」の経営者が失聯、 同社に商品を供給している数百の企業は 売掛金の回収ができなくなってしまった。

そして14日、大連市で前代未聞の失聯事件が起きた。
中之傑物流と邁田スーパーという 2つの会社の経営者が同時に失聯したのだが、 この2人は実は夫婦だったのである。

このように多くの業界で、 経営者たちによる夜逃げ事件が多発しているが、 経済環境全体の悪化以外に、 「高利貸」と呼ばれる闇金融の氾濫も、 失聯事件を多発させた大きな原因である。

金融不安が高まってきている中で、 保身に走る国有銀行が民間中小企業への融資を渋った結果、 多くの中小企業が生き延びるために闇金融に手を出すことになった。

だが、借りた金の法外な高金利に耐えられなくなると、 経営者たちは結局、元本を踏み倒して失聯を選んでしまうのである。

このような現象が広がると、窮地に立たされるのは 高利貸をやっている民間金融業者である。
貸金が踏み倒された結果、 破綻に追い込まれるのは彼らの方だ。
そうすると今度は、民間金融業者の失聯も始まる。

たとえば、四川省の成都市では10月20日、 民間金融業者、創基財富会長の 段家兵氏の失聯が発覚したが、それに先立って、 9月4日には聯成●という民間金融の経営者が姿をくらまし、 同12日には、内江聚●融資理財公司の経営者が 飛び降り自殺した。
※●=晶の三つの日を金に

そして10月初旬、 地元民間金融大手の四川財富聯合が破綻して、 経営者の袁清和氏は夜逃げ先で拘束された。
9月からの一連の破綻・失聯事件で 焦げ付きとなった融資総額は百億元にも上ったという。

かくして今の中国では、 多業界にわたる「失聯」が各地で広がり、 そのドミノ現象で民間金融の破綻を誘発する という悪循環が始まっている。
民間金融から大量の資金を調達しているのは 不動産開発業者だから、現在進行中の不動産バブル崩壊はまた、 悪循環に拍車をかけることとなろう。
バブル崩壊後にやってくるのは金融の崩壊であるから、 中国経済の末日が確実に近づいてきているのが分かる。

習近平国家主席がアピールしてきた 「大国中国」の経済という名の土台はすでに崩れかけている。
( 石 平 )

~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~
石平(せきへい)のチャイナウォッチ 2014年11月17日 15:04:12JST
http://www.seki-hei.com

■ 成り金「土豪」が横行する中国

中国では今、「土豪」という新造語がはやっている。
日本語に意訳すれば、「泥臭い成り金」、 あるいは「あか抜けていない成り金」といった意味合いになる。

何らかのはずみで大金持ちとなった人が、 金のあることを露骨に誇示して世間の注目を集めようとしている。
こうした連中が、軽蔑と嘲笑の意をこめて「土豪」と呼ばれているのである。

それでは、土豪たちは一体、どのような行いで世間を騒がせているのか。

たとえば先月6日、江蘇省塩城地区の大豊市で 人々が仰天するような出来事が文字通り「天から降ってきた」。
この町で生まれ育った土豪の一人が「中秋の名月」の帰省のため、 自家用のヘリコプターで町の真ん中に降り立ったからである。

彼の生家がそこにあったわけでもない。 町の真ん中にヘリコプターを着陸させた唯一の目的は 「自家用ヘリを持つほどの大金持ちとなったこと」 を多くの市民に知らせることであろう。
よそで成功し郷里に帰って自己顕示する土豪は別にもいる。
昨年11月、重慶市栄昌県で老婦人が亡くなると、 企業家の息子は帰郷して盛大なお葬式を執り行った。
その際、この「大土豪」の息子は何と500卓の食卓を設置して 数千人参加の大宴会を催した。

生前の故人と縁があるかどうかはいっさい関係なく、 町の人なら誰でも、あるいはそこを通りかかった人なら誰でも 自由に参加して飲み食いすることができた。
宴会は空前のにぎやかさの中で大いに盛り上がったが、 それはどう考えても、亡くなった母親のためというよりも、 まさに土豪息子による、土豪息子のための、 単なる「見えっ張り大会」だったのではなかろうか。

お葬式が土豪たちの「金持ち自慢」の場となることがあれば、 結婚式も同様だ。今年8月、浙江省台州市では、 地元の土豪が高級ホテルで自分のための結婚披露宴を催した。
そのとき、会場の真ん中にピカピカの金色に塗られた机が置かれ、 金や銀や宝石の装飾品の類と一緒に、新札の山が「展示」されていた。
それらは全部、新郎から新婦への贈り物だというが、 決して、「新婦のため」でないのは誰にでも分かっているはずである。

札束の「展示」で驚くのはまだ早い。
今年3月、福建省長楽市で、 ある地元土豪の結婚披露宴が盛大に開催された。
宴会の最後、大皿に盛られて出された圧巻の「料理」を目にしたとき、 賓客たちは酔いがいっぺんにさめ、驚愕(きょうがく)の声を上げた。
それは別に「料理」でも何でもない。 大皿に載せられているのは実物の札束だった。

このように、今の中国では、カネというもの以外に 自分の存在価値を見いだすことのできない 成り金の「土豪」たちが横行している。
彼らの存在はまた、 この国のこの時代における 精神の貧困と堕落の象徴なのであろう。

その一方で、人々が彼らの行いを 軽蔑のまなざしで捉えて嘲笑していることはまた、 拝金一辺倒の風潮に中国人が嫌気がさし、 より洗練されたものを志向し始めたことの証拠ではないか。
「カネを手に入れたとしてもあの連中のようになりたくない」 と思う人は今でも多くいるはずだ。

おそらく今後、バブルの崩壊に伴って 土豪たちのよりどころとなる経済繁栄の「邯鄲(かんたん)の夢 (人の世の栄枯盛衰は、はかないものであることのたとえ)」 が一度破れた後、中国人は自分たちの身丈のほどをきちんと認識して、 より堅実にして節度のある生き方を求めることになろう。
そういう意味では、中国人自身のためにも、 一度の経済破綻はやはり必要ではないだろうか。
( 石 平 )

夜逃げ、成金は日本でも勿論ある。
罪の意識、ペーソス、少しの同情、滑稽味が加わる。
夜逃げでは取り立て屋にトコトン追い詰められる場合もあるが・・・


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