落葉松亭日記

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中国の政治宣伝工作

2021年04月29日 | 政治・外交
中国では、報道とは「中国共産党の政治宣伝」を意味するという。
インターネットSNSの普及
中国インターネット情報センター(CNNIC)は2020年9月29日、「第46回中国インターネット発展状況統計報告」を発表した。報告によれば、中国のインターネット利用者数は2020年6月時点で9億4,000万人に達し、インターネット普及率は67.0%になった(添付資料図参照)。このうち、スマートフォンなどの携帯端末によるネット利用者は9億3,200万人となり、インターネット利用者全体の99.2%を占めた。・・・
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/ffa117a145649134.html
「宮崎正弘の国際情勢解題」令和三年(2021)4月30日(金曜日)通巻第6887号
https://www.mag2.com/m/0001689840.html?l=olz13dd180
 中国の宣伝工作の舞台が代わった

既存メディアへの中国の浸透工作は猛烈で、しかも相当の効果を挙げていた。SNSの登場で、中国の戦場は交替し、ネットへ宣伝戦争の場所が移動した。それが新しい認知戦争の舞台なのである。
思い起こせば、トランプの登場前まで米国はチャイナマネーにすっかり汚染されていた。それも目も当てられないほど酷い状態で、ハリウッド映画まで中国礼賛だった。

トランプが中国に貿易戦争を仕掛け、それまで米国の対中政策を操った「パンダ・ハガー」(愛中派)らが敗れ去った。替わって「ドラゴン・スレー ター」(龍処刑人)が、米国の対中国交の主導役となった。 劇的な変化である。

中国は2009年から、450億人民元(8000億円強)もの天文学的巨費を投じて、対外宣伝作戦をはじめた。
中国にとって「報道とはプロパガンダ」のこと、メディアは政治宣伝機関という位置づけだから、外国にも同じ手口が通じると思ってしまうのだ(すくなくとも日本では産経を除き、中国報道は北京の命令があるかの如くである)。

中国が 世界各地で展開した政治宣伝作戦を、米国を例にしてみると、NY42丁目のタイムズスクエアの電子広告板(液晶ビ ジョン)は中国の宣伝一色だったことがある。
米国の新聞にはい『チャイナ・ディー』(英語版の人民日報のような宣伝紙)の折り込みを入れ、あるいは 紙面に挿入させるという大胆な手法で、米国にチャイナロビィを形成し、多彩で幅広い領域へとプロパガンダを拡げていた。

この侵略的な宣伝戦争をペンス副大統領は演説で指摘した(18年10月4日)。
  新聞記者、学者、政治家の籠絡も派手に展開された。有力な大学には北京語を教えるとした孔子学院をつくった。
議会人にはあご足つき、ときに美女付きの招待旅行を次々と繰り返し、他方、シリコンバレーなどでは高給で釣って優秀な人材をスカウトし、中国のハイテク向上に役立てた。

何も対応策を採らず、指をくわえて見ていたのは歴代政権だったが、クリントンとオバマ政権幹部、とくに副大統領だったバイデンは親子して中国マネーで薄汚く籠絡されていた。
ロスアンジェルスタイムズは怪しげな華僑の資力によって買収された。この手法は香港と台湾でも、あらかたの新聞、ラジ オ、テレビ、出版社が中国の資力によって陥落してしまった。

▲香港大乱の前の段階でそうだった。

  香港の出版界の実情と言えば四分の三の出版社が中国資本となり、中国共産党批判の書籍は大きな書店には並んでいない。辻々の屋台で売っているという有様だった。
 オーナー、社長ごと拉致されて、国際問題となった銅鑼湾書店はどうなったか、筆者は二〇二〇年一月にも見に行った。シャッターが降りて鍵がかかったままだった。かつては良心的と言われた『星島日報』や『明報』もじわりと真綿で首を絞められるように代理人を通じて中国資本が入り、 やや論調が変わってしまった。

何清漣、福島香織訳『中国の大プロパガンダ ──おそるべき大外宣の実態』(扶桑社)は指摘する。
「これら新聞(『大公報』を含めて)の香港に於ける信用度はきわめて低く」うえに、香港の人々からまったく信用されていない。「親共メディアは読む人などいない」。
香港大乱の取材で二〇一九年と二〇二〇年に三回香港に取材で行ったが、中国礼賛の『文わい報』など、新聞スタンドで、 まったく売れていないことに驚いた。

対照的に「リンゴ日報』は飛ぶような売れ行きと比較して、これはどういうことかと思っていると、早朝七時。辻々におばさん達が立って『文ワイ報』を無料で配りだしたではないか!
つまり大量の買い上げによって成り立っているのだ。それゆえ中国共産党はリンゴ日報を目の仇として、嫌がらせを繰り返し、広告主に圧力を駆け、さらには中国批判の集会を主催したリンゴ日報の創業者ジミー・ライを、違法集会だと難癖をつけて逮捕し、拘留した。

米国の首都、ワシントンの「Kストリート」というのは、ロンドンにあった「軍艦街」とは異なって、政治ロビィストとシンクタンクの集中地区である。(ロンドンの「軍艦街」は政府批判を吠えるような論調の新聞社が並んでいた時代に、そう愛称された)。
このKストリートの保守系シンクタンクにも中国資金がぶち込まれた。中国は、「委託研究」とかの名目で、あらかたのシンクタンクに法外な研究費を資金提供し、事実上、研究員を間接買収し、中国贔屓の提言を作成させた。

レーガン政権に大量の人材を送り込んだ保守の殿堂「ヘリティジ財団」も、一時は親中派に傾きかけてほどだった。
中国はKストリートがワシントンの政策決定を動かし、ウォールストリートが米国経済を動かし、メインストリートが、米国の支配層を領導する構造を知っているからだ。
2015年までの米国は、取り憑かれたようにチャイナ礼賛が続いていた。いったい何事が起きているのか、訝った人も多 かっただろう。

 ▲「紅色浸透」によって、オバマ政権下では「G2」が叫ばれた。

  何清漣女史はこう指摘期する。
「ワシントンのシンクタンクが外国政府から大量の資金提供を受け、ロビイ機構に成り下がっており、米国官僚にその国に有利な政策を推進させていた」(何清連前掲書)。
中国の米国メディアへの浸透、ロビイストたちの籠絡、そのうえアカデミズムの世界への乱入があり、こうした「紅色浸透」によって、オバマ政権下では「G2」が叫ばれた。ズビグニュー・ブレジンスキー(学者、カーター政権で大統領安全保障担当補佐官)やロバート・ゼーリック(元世銀総裁)が声高に提唱し、「世界を米中で分かち合う」などと中彼らは高らかに言い放っていた。

日本ではどうかと言えば、中国は別にカネを使わなくても、日本人の政治家も新聞記者も、尻尾をふってやってきた。このチャイナの傲慢はいつまで続くのか、懸念が拡がった。
台湾ですら同じ状況が出現していた。嘗て国民党の宣伝ビラとまで言われた『連合報』も『中国時報』もダミーを経由して中国から資本が入り、台湾のテレビ、ラジオもそうである。

香港と台湾ではどうやって真実をしっているのかと言えば近年猛烈な勢いで発達したSNSであり、とくに若者 たちは新聞をまったく読まず、SNSで正確な、客観的情報を入手している。

米国の状況に戻ると、トランプの登場によって、こうした紅色浸透の作戦は、転覆した。百八十度、その効果がひっくり返り、反中国、アカデミズムでもキッシンジャーもエズラ・ボーゲルも孤立のなかで旅だった。

パンダ・ハガーから転向したピルスベリーが代表するドラゴン・スレーターが世論をリードするようになった。

温家宝前首相の正論
温家宝前首相の発言が波紋、中国は「公平と正義に満ちた国であるべきだ」と主張 2021/04/20 09:59 読売新聞
写真;温家宝前首相(ロイター) 【読売新聞社】
https://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/world/20210419-567-OYT1T50269.html

 【北京=比嘉清太】中国の 温家宝 前首相(78)が、マカオ紙への寄稿で「中国は『公平と正義に満ちた国』であるべきだ」と主張し、波紋を呼んでいる。ネット上では、国内の統制を強める 習近平 政権を批判する意図があるのではないかとの見方が流れている。中国のSNSでは、温氏の寄稿の転送が制限された。

  胡錦濤 前政権で首相を務めた温氏は、政治改革推進を訴えた改革派指導者として知られる。寄稿は「私の母親」と題して亡母への追憶を記したもので、3月下旬以降、4回にわたり週刊紙「マカオ導報」に掲載された。

 注目を集めたのは、温氏が最終回で「侮辱や抑圧に反対する」と強調したことだ。「永遠に人の心や人道、人の本質が尊重され、永遠に青春や自由の気概があるべきだ」との記述もあった。

 寄稿によれば、教師だった父親は、1966〜76年の大衆政治運動「文化大革命」に際して迫害され、視界が遮られるほど顔を殴られたという。習政権下では、中学校で使われる歴史の教科書で文革の章が削除されており、文革への批判のトーンが弱まったと指摘されている。