ウクライナがロシア軍を一部「押し戻す」、ゼレンスキー氏は「ロシアへの抗議」世界に訴え 侵攻28日目 2022年3月24日
https://www.bbc.com/japanese/60844015
ウクライナのゼレンスキー大統領は世界中の人々にロシアに抗議するよう英語で呼びかけた。
ロシアによるウクライナ侵攻28日目の23日、ウクライナ軍が一部地域でロシア軍を押し戻したと現地市長が述べた。ロシア軍に包囲されたウクライナ南東部マリウポリなど複数の都市では、計4500人以上が人道回廊を通じて避難した。こうした中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、侵攻開始から1カ月となる翌24日に、ロシアへの抗議の声を上げるよう世界中の人々に英語で呼びかけた。北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ロシアの脅威に対応するため東欧4カ国に新部隊を配備することで合意する見通しだと明らかにした。
港湾都市マリウポリではロシア軍による砲撃が続いている。水や食料が不足しているほか、市内の建物の90%が損傷または破壊されたと推定されている。
ウクライナ当局によるとこの日、同国各地の都市から4500人以上が人道回廊を通じて避難した。首都キーウ(キエフ)のメディア「キーウ・インディペンデント」は、このうち約3000人はロシア軍に包囲されたマリウポリからザポリッジャ(ザポロジエ)へ移動したと副首相が述べたと報じた。
キーウでは、ロシアの反政府活動家でジャーナリストのオクサナ・バウリナ氏がロシア軍の銃撃により死亡した。バウリナ氏はロシア軍が砲撃したポドルスク地区の被害状況を撮影していたという。
複数メディアは、ロシアのアナトリー・チュバイス大統領特別代表が辞任したと報じた。ウクライナ侵攻開始以降で辞任したロシア政府関係者としては最高位。報道によると、チュバイス氏はすでに出国し、妻と共にトルコにいるという。ウクライナ侵攻に反対していたとされる。
ゼレンスキー氏、世界規模の抗議呼びかけ
侵攻開始から1カ月となる24日を前に、ウクライナのゼレンスキー氏は世界中の人々に向けてビデオ演説を公開した。
その中で、24日にロシアへの抗議の声を上げるよう呼びかけた。
「ロシアによる戦争は、ウクライナだけに対する戦争ではありません。その意味はもっと広範囲に及ぶものです」と、ゼレンスキー氏は初めて英語で演説した。
「ロシアは自由に対する戦争を開始した」とし、「これはロシアにとっては始まりに過ぎません」と付け加えた。・・・・・
デフォルトは目前 危機に陥るのは本当にロシア経済だけか
2022年3月15日(火)13時20分 ブレンダン・コール
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2022/03/post-98296.php
<ウクライナ侵攻が経済に及ぼす大打撃を警告する声は高まる一方。資源大国の経済破綻で、西側も大量の返り血を浴びかねない>
ロシアは4月半ばにもデフォルト(債務不履行)に陥る可能性がある──。
米金融大手モルガン・スタンレーの新興市場ソブリン債戦略部門を率いるサイモン・ウィーバーは顧客向けのメモでそう述べたと、ブルームバーグが伝えた。「私たちはデフォルトが最もあり得るシナリオだとみている」
特に金融部門を狙い撃ちにした西側の厳しい制裁措置はロシア経済に確実にダメージを与えている。ロシアの一部銀行は国際的な決済システムであるSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出され、通貨ルーブルは底なしの下落を続けている。
ロシアは早ければ4月15日にデフォルトする可能性があるとみられている。この日に満期2023年と2043年のドル建てロシア国債の利払い猶予期間(30日)が終わるからだ。
ロシアのデフォルトは「通常のデフォルトとは比べものにならないだろう」と、ウィーバーのメモには書かれている。ベネズエラのケースが参考になるというのだ。
ベネズエラ政府と国営のベネズエラ石油会社は600億ドルの債務残高を抱えて2017年にデフォルトし、国家経済を奈落の底に突き落とした。
「市場は通常のデフォルトに加え、近い将来において債務再編の望みが全くない壊滅的なデフォルトまでも織り込んだ価格を付け始めている」と、英調査会社オックスフォード・エコノミクスのガブリエル・スターンは本誌に語った。
ブルームバーグによると、2023年満期のロシア国債の価格は現在、額面1ドルにつき29セント前後だ。この価格は「デフォルトするかその直前の他の新興国(の国債)と比べても極端に安い」と、スターンは言う。例えばザンビアは72セント、スリナムは69セント、スリランカは39セントだ。
「今やロシア債を買うのは、ルーブルでの利払いを受け入れるロシア人だけだろう。そういう奇特な買い手がいるとしたら、この価格ならお得な買い物と言えなくもない」と、スターンは付け加えた。
「ロシアにとってこれは屈辱的な事態だ」
世界経済も景気後退に突入?
ブルームバーグによれば、ロシア政府が抱えるドル建てとユーロ建ての債務残高は約490億ドル。その一部は今後何カ月かで利払い期限を迎える。
こうした状況をにらんで、ドイツの資産運用会社・DWSグループのジョージ・カトラムボーンも「(ロシアの)デフォルトのリスクは現実のものだ」とメディアに語った。ロシア債は買い手がつかず、事実上の取引停止状態だという。
ただ、西側企業が扱う新興国の債券市場インデックスファンドにロシア債が占める割合はわずかで、西側の金融機関はロシア債のリスクにほとんど影響を受けない。
ロシアがデフォルトに陥れば、重要な同盟国、つまり中国に真っ先に影響が及ぶと、エール大学の経済学者スティーブン・ローチは米メディアに語っている。「中国に(破産した)ロシアと蜜月を続ける余裕はないだろう」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに仕掛けた戦争が経済に及ぼす大打撃を警告する声は高まる一方だ。
ロシア軍の侵攻開始の4日後、国際金融協会(IIF)はロシアの今年のGDP成長率予想を2桁台のマイナスに修正した。格付け会社のフィッチ、ムーディーズ、S&Pは既にロシア国債の格付けをジャンク債並みに下げている。
一方、この戦争が世界経済に及ぼすより広い影響も懸念されている。欧州市場の指標となる北海ブレント原油の先物価格は3月8日、1バレル=140ドルに迫った。
ロシアは石油、天然ガスに加え、パラジウムなどレアメタルも豊富に産出する資源大国だ。
戦争の激化は西側企業の資源調達にも甚大な痛手を及ぼしかねない。起業家で投資家のニール・デベナムは言う。
「エネルギー価格が上がり続ければ、世界経済はこの3年間で2度目の景気後退に突入する恐れがある」