最近手に入れた2冊の本のご紹介。
最初が、ジョージ・ミケシュ著 English Humour for Beginners(初心者のための英国的ユーモア 1980年)。
今や英国を紹介する本としては古典的な部類になるかもしれない。
ジョージ・ミケシュはハンガリー人である。20代半ばに新聞社から派遣されてロンドンにやって来た。
彼にとって英国は「不思議の国」だったのだろう。
いろいろと英国の不思議を解説しているが、最後の方にHow to be a General Alienという項目がある。そこで彼は、英国人と欧州大陸人の差異を面白おかしく説明している。
以下のような具合である(赤い字の部分):
「欧州大陸(英国以外の欧州)では日曜日になると、もっとも貧しい人たちでも自分が持つ最も良いスーツを着て、他人から尊敬を得ようとし、したがって国全体がとても明るいものとなる。しかし英国では日曜日に金持ちですら適当な服を着て、男はひげも剃らないため、国全体が暗くだらしなく見える」
今やリモート・ワークな時代だから、このあたり(↑)は、ハンガリーあるいは欧州大陸のどこの国だってかなり変わっただろう。常時カジュアルみたいなところも多いはずだ。しかし著者によるこの比較に当てはめて話をすると、日本の生活スタイルって英国型かもしれないね。日本人は休日は自宅で寛ぎたいのであり、寛ぐためには多少はだらしない恰好がしたいものなのである。私なんて、オンでもオフでもいつもそうで、今これを書いている日(=休日である)もヒゲがボウボウで、ジーンズを履いて、シャツの裾を外に出している。それで何が悪い?(笑)
一方、英国と日本の日曜日を比較すれば、日本は英国以上にカジュアルというか、くだけた格好をしている人が多いように思う。日曜日の正装の度合いでは、欧州大陸>英国>日本という微妙な差異による順位が成り立つかもしれない。
「欧州大陸では避けられるべき話題のひとつは天気である。ところが英国では少なくとも1日200回は『いいお天気ですわね?』なんて言わないことには、変に思われる」
欧州大陸ではそうなのか? 天気を話題にしちゃ、洗練されていないとみなされるのか? 知らなかったな。英国人が天気の話題が好きなのは有名だし、私も辟易するくらいそれを言われたことはある。しかし少なくとも日本じゃ、それを言って嫌がられることはないな。斯様に、この点でも英国は日本に近いのかもしれない。
次の本の話に移ろう。
こちらは東大の先生である新井潤美さん著 <英国紳士>の生態学。
これがまた英国の古典的な社会階層について書いた本である。
マイ・フェア・レディというミュージカル(舞台あるいは映画化されたもの)をご存じの方も多いことでしょう。同じ英語を人々はしゃべっているのに、その人々が属する社会階層や地域によってアクセントあるいは言葉の表現自体があまりに違うことがそのミュージカルの主題になっている。英語に限らず、どこの国の言葉でも似たようなことはあるのだろうけれどね。
英国の名優スタンリー・ホロウェイは、ロンドンやニューヨークの舞台でマイ・フェア・レディに出演したし、米国でそのミュージカルが映画化された時にもそれに出演した。
そのことが、この本でも紹介されている。
彼が演じたのはミュージカル主人公のイライザ・ドゥーリトル(オリジナル・キャストはジュリー・アンドリュースがそれを演じ、映画ではオードリー・ヘップバーンが演じた)の父親であるアルフレッド・ドゥーリトル役だ。これがまたどうしようもない男で、働かないし、飲んでばかり。娘であるイライザは、その美しくない英語のアクセントを矯正して上品に話せるようになるため、音声学者のヘンリー・ヒギンズ教授宅に住み込んで話し方を学んでいるのだが、その意味を誤解したイライザの父親アルフレッドは、ヒギンズ教授にカネをせびりに来たりする。
この動画はその父親アルフレッド(スタンリー・ホロウェイ)が歌うWith A Little Bit of Luck♪ (邦題は「運が良けりゃ」)
3人の男の先頭を歩いているのがアルフレッド役のホロウェイである。
いわゆるコックニー訛りなので、何を言っているのかさっぱりわからない・・・。
かつて日本でも、この曲は大正製薬のゼナのCMで使われた。
いかにも昔の所ジョージ的だ。
CMの中ではこの曲は、最初に所ジョージによって、最後に男性コーラスによって歌われる。
この<英国紳士>の生態学の著者である新井さんは、もうひとつの英国的ミュージカルであるメリー・ポピンズについてもかなりのページを割いている。
第七章の表題は「階級を超えるメ(ア)リー・ポピンズ」。
メリー・ポピンズもまた米国において、ウォルト・ディズニーによってジュリー・アンドリュース主演で映画化された。マイ・フェア・レディが映画化されたのと同じ年、1964年の作品である。
銀行員であるバンクス氏宅に2人の子供の乳母として空から現れたメリー・ポピンズ。彼女はバンクス邸で乳母として働いている時は英語をとても正確に話すが、煙突掃除人でボーイ・フレンドのバート(ディック・ヴァン・ダイク)や子供たちと外に出かけた時はちょっと違った振る舞い、言葉遣いも見せる。
歌や踊りが多い作品だが、こちらはなかなかのシーンだ。
因みにこの「ヴァン・ダイク」はオランダ系の姓だが、彼は米国生まれで米国育ちであり、生粋の米国人である。したがって映画出演に先立って、彼は英国労働者階級の英語のアクセントを習得するのにかなり苦労したらしい。
話があちこち飛ぶが、この<英国紳士>の生態学を読んでかなり時間が経ってから、私は著者である新井さんの別の本をかつて読んだことがある事実に気が付いた。それがこの本だ(↓)。
話がまた変わるが、そしてこれは以前にも書いたことがあるかもしれないが、私は10代の後半にジュリー・アンドリュースのファンクラブに入っていた。ジュリー・アンドリュースが来日した際は、ファンクラブ経由でS席のチケットを入手し、大阪フェスティバルホールのコンサートに出かけたことを覚えている。この時のライブ録音はその後LPレコードなり発売された。海外でも売られたようで、今も稀にそのLPレコードが売買されている。
どんどん話が変わるが、こちら(↓)はマイ・フェア・レディのロンドン・オリジナル・キャスト版CDである。我が家にあって、先にご紹介したスタンリー・ホロウェイや、舞台で主役を務めたジュリー・アンドリュースや、ヒギンズ教授役を務めたレックス・ハリソンの声が聴ける。こちらは現在でも簡単に手に入る。Amazonでもどこでも。ご関心ある方はお探しください。
ジュリー・アンドリュースついでに、こちらもどうぞ。名画サウンド・オブ・ミュージックからド・レ・ミ♪
ジュリー・アンドリュースは存命だが、ここで長女リーズル(動画の姉妹の中で最も背が高い)役を演じたシャーミアン・カーは数年前にお亡くなりになったね。
話があちこちに飛んで、なんだかよくわからない説明になってしまった。
本を読んでいると、そこに書いてあることがあちこちの古い記憶をつなげて行くので、面白い。
最初が、ジョージ・ミケシュ著 English Humour for Beginners(初心者のための英国的ユーモア 1980年)。
今や英国を紹介する本としては古典的な部類になるかもしれない。
ジョージ・ミケシュはハンガリー人である。20代半ばに新聞社から派遣されてロンドンにやって来た。
彼にとって英国は「不思議の国」だったのだろう。
いろいろと英国の不思議を解説しているが、最後の方にHow to be a General Alienという項目がある。そこで彼は、英国人と欧州大陸人の差異を面白おかしく説明している。
以下のような具合である(赤い字の部分):
「欧州大陸(英国以外の欧州)では日曜日になると、もっとも貧しい人たちでも自分が持つ最も良いスーツを着て、他人から尊敬を得ようとし、したがって国全体がとても明るいものとなる。しかし英国では日曜日に金持ちですら適当な服を着て、男はひげも剃らないため、国全体が暗くだらしなく見える」
今やリモート・ワークな時代だから、このあたり(↑)は、ハンガリーあるいは欧州大陸のどこの国だってかなり変わっただろう。常時カジュアルみたいなところも多いはずだ。しかし著者によるこの比較に当てはめて話をすると、日本の生活スタイルって英国型かもしれないね。日本人は休日は自宅で寛ぎたいのであり、寛ぐためには多少はだらしない恰好がしたいものなのである。私なんて、オンでもオフでもいつもそうで、今これを書いている日(=休日である)もヒゲがボウボウで、ジーンズを履いて、シャツの裾を外に出している。それで何が悪い?(笑)
一方、英国と日本の日曜日を比較すれば、日本は英国以上にカジュアルというか、くだけた格好をしている人が多いように思う。日曜日の正装の度合いでは、欧州大陸>英国>日本という微妙な差異による順位が成り立つかもしれない。
「欧州大陸では避けられるべき話題のひとつは天気である。ところが英国では少なくとも1日200回は『いいお天気ですわね?』なんて言わないことには、変に思われる」
欧州大陸ではそうなのか? 天気を話題にしちゃ、洗練されていないとみなされるのか? 知らなかったな。英国人が天気の話題が好きなのは有名だし、私も辟易するくらいそれを言われたことはある。しかし少なくとも日本じゃ、それを言って嫌がられることはないな。斯様に、この点でも英国は日本に近いのかもしれない。
次の本の話に移ろう。
こちらは東大の先生である新井潤美さん著 <英国紳士>の生態学。
これがまた英国の古典的な社会階層について書いた本である。
マイ・フェア・レディというミュージカル(舞台あるいは映画化されたもの)をご存じの方も多いことでしょう。同じ英語を人々はしゃべっているのに、その人々が属する社会階層や地域によってアクセントあるいは言葉の表現自体があまりに違うことがそのミュージカルの主題になっている。英語に限らず、どこの国の言葉でも似たようなことはあるのだろうけれどね。
英国の名優スタンリー・ホロウェイは、ロンドンやニューヨークの舞台でマイ・フェア・レディに出演したし、米国でそのミュージカルが映画化された時にもそれに出演した。
そのことが、この本でも紹介されている。
彼が演じたのはミュージカル主人公のイライザ・ドゥーリトル(オリジナル・キャストはジュリー・アンドリュースがそれを演じ、映画ではオードリー・ヘップバーンが演じた)の父親であるアルフレッド・ドゥーリトル役だ。これがまたどうしようもない男で、働かないし、飲んでばかり。娘であるイライザは、その美しくない英語のアクセントを矯正して上品に話せるようになるため、音声学者のヘンリー・ヒギンズ教授宅に住み込んで話し方を学んでいるのだが、その意味を誤解したイライザの父親アルフレッドは、ヒギンズ教授にカネをせびりに来たりする。
この動画はその父親アルフレッド(スタンリー・ホロウェイ)が歌うWith A Little Bit of Luck♪ (邦題は「運が良けりゃ」)
3人の男の先頭を歩いているのがアルフレッド役のホロウェイである。
いわゆるコックニー訛りなので、何を言っているのかさっぱりわからない・・・。
かつて日本でも、この曲は大正製薬のゼナのCMで使われた。
いかにも昔の所ジョージ的だ。
CMの中ではこの曲は、最初に所ジョージによって、最後に男性コーラスによって歌われる。
この<英国紳士>の生態学の著者である新井さんは、もうひとつの英国的ミュージカルであるメリー・ポピンズについてもかなりのページを割いている。
第七章の表題は「階級を超えるメ(ア)リー・ポピンズ」。
メリー・ポピンズもまた米国において、ウォルト・ディズニーによってジュリー・アンドリュース主演で映画化された。マイ・フェア・レディが映画化されたのと同じ年、1964年の作品である。
銀行員であるバンクス氏宅に2人の子供の乳母として空から現れたメリー・ポピンズ。彼女はバンクス邸で乳母として働いている時は英語をとても正確に話すが、煙突掃除人でボーイ・フレンドのバート(ディック・ヴァン・ダイク)や子供たちと外に出かけた時はちょっと違った振る舞い、言葉遣いも見せる。
歌や踊りが多い作品だが、こちらはなかなかのシーンだ。
因みにこの「ヴァン・ダイク」はオランダ系の姓だが、彼は米国生まれで米国育ちであり、生粋の米国人である。したがって映画出演に先立って、彼は英国労働者階級の英語のアクセントを習得するのにかなり苦労したらしい。
話があちこち飛ぶが、この<英国紳士>の生態学を読んでかなり時間が経ってから、私は著者である新井さんの別の本をかつて読んだことがある事実に気が付いた。それがこの本だ(↓)。
話がまた変わるが、そしてこれは以前にも書いたことがあるかもしれないが、私は10代の後半にジュリー・アンドリュースのファンクラブに入っていた。ジュリー・アンドリュースが来日した際は、ファンクラブ経由でS席のチケットを入手し、大阪フェスティバルホールのコンサートに出かけたことを覚えている。この時のライブ録音はその後LPレコードなり発売された。海外でも売られたようで、今も稀にそのLPレコードが売買されている。
どんどん話が変わるが、こちら(↓)はマイ・フェア・レディのロンドン・オリジナル・キャスト版CDである。我が家にあって、先にご紹介したスタンリー・ホロウェイや、舞台で主役を務めたジュリー・アンドリュースや、ヒギンズ教授役を務めたレックス・ハリソンの声が聴ける。こちらは現在でも簡単に手に入る。Amazonでもどこでも。ご関心ある方はお探しください。
ジュリー・アンドリュースついでに、こちらもどうぞ。名画サウンド・オブ・ミュージックからド・レ・ミ♪
ジュリー・アンドリュースは存命だが、ここで長女リーズル(動画の姉妹の中で最も背が高い)役を演じたシャーミアン・カーは数年前にお亡くなりになったね。
話があちこちに飛んで、なんだかよくわからない説明になってしまった。
本を読んでいると、そこに書いてあることがあちこちの古い記憶をつなげて行くので、面白い。