山極寿一京都大学総長が、「毎日」紙4月28日付、「シリーズ 疫病と人間」に寄稿した文章の一部をまず紹介させていただきたいと思います。
「エイズ、エボラ出血熱、SARS、(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)、ジカ熱など、この数十年ウイルスによる新しい感染症が増加しているにもかかわらず、今回大きく混乱してしまった原因は何なの。 更に、たとえこの感染症が終結しても、もはやこれまでの状態に簡単に復帰できるとは思えない。強固な感染症対策を打ち立てるとともに、新たな経済秩序、国際関係、暮らし方を早急に考えていく必要がある」
そして、次ぎのように述べています。
「今私たちに必要なのは、グローバルな地球と国の動きと、私たち自身の身近な暮らしの双方で、人間にとって大切なことは何かということをじっくり考えることである。コロナ後に、それが決定的な効果を生むだろうと思う」
志位氏が「98年記念講演」で提案した「7項目」と「4つのよびかけ」はこうした科学者のみなさんや多くの方々のご意見を伺いまとめて提案されたものだと理解しています。その最大の眼目は「人間の命と健康をまもる」ことではないでしょうか。関係部分を紹介させていただきたいと思います。
【7項目の提案】
「-第1は、ケアに手厚い社会をつくるということです。コロナ危機が明らかにしたのは、人間は一人では生きていけない、他者によるケアなしには尊厳ある生活は保障されないということでした。にもかかわらず、日本では、医療、介護、障害福祉、保育など、ケア労働ーー命を守る仕事が重視されず、粗末に扱われているということでした」
「医療従事者には平素からきわめて過酷な長時間労働が強いられています。介護・障害福祉・保育では、労働者平均より月10万円も賃金が低く、低賃金による『人手不足』が深刻です。『医療や介護従事者などに感謝する』と言うのであれば、こういう現状こそあらためなければならないのではないでしょうか」
「国全体でみても、日本の社会支出は、対GDP比22.7%で、ドイツの27.0%やスェ―デンの26.7%の8割、フランスの32.2%の7割の水準にあたります。こうした貧しい現状では、危機に対応できないことが、いやというほど実感されたのではないでっしょうか。みなさん、命を守るケアに手厚い社会をつくろうではありませんか」
志位氏の「国際協力の4つの呼びかけ」の第1に、「医療・保健における大規模で包括的な協力」を掲げています。この点については紹介させていただいています。