宮応かつゆきの日本改革ブログ

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「米黒人暴行死の背景」-京都大人文科学研究所教授 竹沢 泰子さん=「毎日」紙で語る

2020年07月07日 | 未来社会へのプロセス

 米国の新型コロナ感染者数は288万人超、死者数は13万人に及ぼうとしています。(7月6日午後3時現在)その米国で植民地主義や奴隷制を問う市民運動が全米各地で起こっています。世界最大の資本主義国の新自由主義の矛盾が噴き出し、同時に、資本主義の歴史そのものが問われる事態となっているのではないでしょうか。

「毎日」紙7日付、「オピニオン」欄に「米黒人暴行死の背景」について、京都大人文科学研究所竹沢泰子教授のインタビュー記事が掲載されました。以下、紹介させていただきます。

― 米国は2009年に黒人として初めてオバマ大統領(民主党)が就任し、人種の融和が期待されました。依然として警察が差別的な対応をするのはなぜでしょうか」

「(竹沢教授)南北戦争の結果、1863年に奴隷解放宣言が出されましたが、人種隔離制度や差別的条例などは1964年の公民権法制定まで1世紀以上も続きました。この間に黒人の経済的、社会的地位を劣悪にする社会構造が別の形で作られ、黒人に対する差別の緩和には至りませんでした。黒人の代弁者にみられることを恐れたオバマ氏は、人種問題ではむしろ大胆な施策を打ち出せませんでした」

 ― 差別が終わらない構造とは」

(竹沢教授)34年の連邦住宅法に基づき、政府当局は、全米諸都市の居住区を4分類し、黒人居住区は赤色地区とし、ローンや保険を拒絶できるようにしました。後にレッドライニング(赤線引き)=と呼ばれるこの施策は60年代末に終わりましたが、差別の実態は残りました。今も黒人は白人に比べ持ち家保有率が低く、旧赤色地区は土地評価額が低いままです。投資がさけられたため、まともなスーパーマーケットも病院もない黒人居住区が少なくありません」

「このレッドライニングが、人種差別を再生産してきたさまざまな構造の一つだと考えます。健康的な食事や医療ケアへのアクセスが乏しく、持病に悩まされる黒人が多くて、新型コロナウイルスの黒人の感染率が白人の5倍近いことに影響しています」

「黒人が白人居住区へ移ると、『地価が下がる』と白人は更に郊外に移転しました。また黒人らしい名前か白人らしい名前かで、就職活動で面接まで行く可能性が約5割違うという調査もあります。だから1対10という資産価格は解消されないいのです」

「 ― 警察の取り締まりにも影響するのでしょうか」

(竹沢教授)ニクソン政権(共和党)が『麻薬戦争』を開始したのですが、その後のレーガン政権(共和)やクリントン政権(民主)の時代に、薬物の徹底取り締まりにより大量収監政策を進めました。米自由人権協会によると、マリファナの使用率はほば同じなのに、黒人の方が白人の約4倍と高い比率で逮捕されています」

民間刑務所の建設も進み、囚人たちの安価な労働力を利用した刑務所ビジネスが盛んになりました。その結果、『黒人=犯罪者』という偏見がさらに強まりました。警察官は偏見の目で黒人らを頻繁に呼び止め、差別的な捜査や暴行・殺人を繰り返してきました。また、一度有罪になると生涯、選挙権を剥奪する州も多かったので、多くの黒人の政治発言権も奪ってきたのです」

「 ― 公民権法の制定後も、さまざまな人種差別解消策が図られてきたのではありませんか」

(竹沢教授)歴史的に差別されてきた黒人らの少数派に対して、同等の能力であれば優先するというアファーマティブアクション(植民地差別是正措置)が大学入学などでとられてきました。大学の黒人が、中上流階級に進出するのに一定の効果はありました。しかし黒人内部の格差が開く一方、多くは深刻な貧困に直面しており、黒人社会全体の底上げには不十分でした」

「人種差別の制度的解消には政治家の力が必要です。白人の既得権を守ろうとする政治家が選出され、権力を握れば、後退します。トランプ政権(共和)がその典型です。フロイドさんの事件をきっかけに、大きな抗議活動が起きていますが、人種差別の解消へ向けた抜本的な施策が進むかどうかは今後にかかっています」