じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」

2023-06-11 19:48:01 | Weblog

★ 中学校の期末テストが近づいてきたので、塾生がパラパラと勉強にやってきた。近隣の中学校では最近中間テストをしないので、期末テストの範囲がやたらと広い。これからおよそ10日間、また慌ただしい日になりそうだ。

★ 伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」(創元推理文庫)を読み終えた。

★ 大学に進学するため上京した青年。一人ぼっちのアパート暮らしが始まる。まずは隣近所へのあいさつ回り。この辺は、吉田修一さんの「横道世之介」と二重写しになる。

★ 隣に住む河崎という男。愛想よく招き入れワインなどをごちそうしてくれたのだが、彼の誘いに主人公はびっくり。なんと広辞苑を奪うために本屋を襲撃するというのだ。準備よくモデルガンまで用意されていた。

★ やがて物語は話者を変え、現在と2年前が交錯して進む。河崎の本屋襲撃にはある理由があったのだ。さらに驚くことには・・・。

☆ 話は変わるが、高校の教科名が新しくなって戸惑う。英語は「コミュニケーション英語」と「論理・表現」。従来の「英語表現」が「論理・表現」に衣替えした。私の時代は「リーダー」と「グラマー&コンポジション」で、当時の方が内容を把握しやすいように思う。

☆ 国語も「現代の国語」と「言語・文化」。「言語・文化」はほとんど従来の「古典」なので、「古典」のままで良いと思うのだが。

☆ 一番不思議なのが「公共」。従来の「現代社会」が衣替えしたもの。社会への主体的な関りをより強く求めたものらしいが、高校の「道徳科」という声も。個人から社会へ、ベクトルが動いているような気がする。

☆ 教育は「国家百年の計」とは言いながら、「改革」を叫ばなければ予算がつかないのか、なかなか腰を据えた取り組みができない。国際化、情報化も必要だろうが、現場は振り回されっぱなしで、結局それが教員の多忙化に至っているように思える。

☆ 1980年代、アメリカでは教育に危機感を覚え、新自由主義を背景に改革が行われた。日本でもちょうど「臨時教育審議会」が開催され、さまざまな提言が行われたが、果たしてどれほど実現されたのか。また改革はどのように総括されているのだろうか。情報化などはアメリカから40年は遅れている気がする。

 

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東野圭吾「悪意」

2023-06-10 20:08:52 | Weblog

★ 映画「インビジブル・ゲスト」(2016年)を観た。新進の青年実業家が不倫相手を殺した疑いで、裁判にかけらえる。彼は資金力を利用して逮捕を逃れようとする。検察側は新たな証人を立てるという。顧問弁護士は彼のもとに凄腕の助っ人を送る。歴戦必勝を誇る女性だが、そのためには真実を話してほしいと彼に迫る。そして、少しずつ彼は真相を語り始める。

★ 作品の中で「水平思考」という言葉が出て来たが、物事は視点によって全く構図が変わることを知らされる。芥川の「藪の中」やその映画化「羅生門」のように。

★ 作中で彼がハメられるトリックは、ポワロかホームズで見たような。

★ 見方によって真相の風景が大きく変わるというのは、東野圭吾さんの「悪意」(講談社文庫)でも感じた。

★ 新進のベストセラー作家が仕事場で殺害された。第1発見者は彼の幼なじみで、二人は家族ぐるみの付き合いをしていた。部屋は密室状態。果たして、彼は誰に殺されたのか。そして最も大きなテーマはその動機だ。

★ 犯人は早々に逮捕されるが、動機を語ろうとはしない。多くの証言を基に、加賀恭一郎が真相に迫っていく。そこには高校時代の事件があった。

★ かなり粘着性の高い作品で「これでもか、これでもか」と容疑者に迫っていく。加賀恭一郎がかつては教員をしていて、そして、ある出来事をきっかけに、わずか2年で教壇を去ったということを知った。

★ 今日の教訓、物事は見方によって大きく変わるということ。

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堤未果「堤未果のショック・ドクトリン」

2023-06-08 15:12:14 | Weblog

★ 市府民税の納付書が届いた。その金額を見てびっくり。例年こんな金額だったか。この分では近々届く国民健康保険料も気がかりだ。果たして納付した税金や保険料は有意義に使われているのだろうか。知らないうちに搾取されているようにも思う。

★ そんな気分の最中、「堤未果のショック・ドクトリン」(幻冬舎新書)を読んだ。ジャーナリストの本なので、学者の本のような小難しさがない。30分もあれば読めるのでありがたい。

★ 堤さんは、NHK「100分de名著」で、ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」を解説。本書の表題はそこから来ているようだ。

★ そもそもショック・ドクトリンとは何か。堤さんは「ショック・ドクトリンとは、テロや戦争、クーデターに自然災害、パンデミックや金融危機、食糧不足に気候変動など、ショッキングな事件が起きたとき、国民がパニックで思考停止している隙に、通常なら炎上するような新自由主義政策(規制緩和、民営化、社会保障の切り捨ての三本柱)を猛スピードでねじ込んで、国や国民の大事な資産を合法的に略奪し、政府とお友達企業群が大儲けをする手法」(37頁)と定義されている。

★ そしてチリの事例から、そのプロセスを「①ショックを起こす ②政府とマスコミが恐怖を煽る ③国民がパニックで思考停止する ④シカゴ学派の息のかかった政府が、過激な新自由主義政策を導入する ⑤多国製企業と外資の投資家たちが、国と国民の資産を略奪する」(43頁)と分析している。

★ 現代史を振り返ってもショックは至る所に存在する。本書では9.11以降のアメリカの急展開がルポされていた。自由な国が全体主義国家に転換する様子を。

★ 日本でも3.11が1つの転機になっているようだ。本書では特に3つの政策(マイナンバー制度、コロナショック、脱炭素)に焦点を当て、疑問を投げかけている。

★ 本書ではあまり取り上げられていないが、安全保障などは来るべき課題になりそうだ。防衛(軍事)予算の増額、反撃(敵地攻撃)能力、徴兵を含む戦争協力や緊急事態の名による自由の剥奪など、かなり現実味を帯びている。

★ 「すべてを疑え」という先人の名言を思い浮かべた。 

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川端康成「雪隠成仏」

2023-06-06 21:31:58 | Weblog

★ NHK「100分de名著」、今月は、ナオミ・クラインさんの「ショック・ドクトリン」が取り上げられている。戦争、クーデター、テロ、自然災害、パンデミックなどの惨事に便乗して政府などの支配階層が、平時では実現しにくい改革を断行するというもの。

★ 第1回は、アメリカの巨大ハリケーンやチリ・クーデター、そしてイギリスのサッチャーリズムが取り上げられていた。そうした改革は、フリードマンの新自由主義を援用し、民営化、市場開放、社会保障費の削減を導入し、経済を市場競争に委ねようとした。

★ 当然ながら富は富裕層に集中し、(国内だけではなくグローバルな)経済格差は拡大、市場化によって公共サービスが崩壊する。

★ 「なるほどなぁ」と感心した。日本の介護保険制度なども近い気がした。軍事費(防衛費)や有事体制などももし某国のミサイルが日本に国土の着弾し死者でも出ようものなら、世論の盛り上がりを受け、一気に保守派が憲法改正を含めた強硬な政策を実行するだろうなと想像した。

★ 番組で解説されている堤未果さんの「ショック・ドクトリン」(幻冬舎新書)を即購入した。

★ さて、今日は川端康成さんの「掌の小説」(新潮文庫)から「雪隠成仏」を読んだ。落語のネタが引用されているとか。

★ 今日の行楽地嵐山。桜の季節になると多くの観光客が訪れるが、昔は十分なトイレの施設がなく、農家の雪隠を借りてしのいでいた。

★ あるとき、才気ある農家が「貸雪隠」をはじめ、それが当たって一財産を築いた。それを見た別の農家もより豪華な「貸雪隠」をつくった。豪華なので使用料も高額。一時の排泄にそれほどの出費はできないと想定外の不評に。そこで主は、ある作戦を考えたのだが・・・。

★ いつの時代の商才に秀でた人はいるものだ。しかし度が過ぎると身を亡ぼすことに。

 

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重松清「セッちゃん」

2023-06-05 14:10:21 | Weblog

★ 今日、宇治橋商店街界隈は「あがた祭り」で賑わうことだろう。4年ぶりに出店も出るというので、子どもたちを中心に人であふれかえりそうだ。今日の塾は開店休業になるかな。

★ さて、重松清さんの「ビタミンF」(新潮文庫)から「セッちゃん」を読んだ。

★ ある家族。中学2年生になった娘の話によると、クラスにセッちゃんという転校生が入ってきて、みんなに嫌われているという。娘は「いじめ」ではないという。ただ嫌われているだけ。そして「ひとを好きになったり嫌いになったりするのって、個人の自由だもん」という。

★ 物語は父親の視点で進むが、彼は年頃の娘に困惑している。愛しているのは間違いない。でもどう接してよいのかとまどっている。できれば、逃げたい気分でさえある。妻つまり娘の母親もどうしてよいのかわからず、「あなたは逃げている」と夫を責めることしかできない。

★ この夫婦はやがてショッキングな真実を知る。実は「セッちゃん」などという転校生は存在せず、それは娘が作り出したフィクションなのだと。同級生から嫌われ疎まれているのは「セッちゃん」ではなく娘自身だということ。

★ 娘は自分を「セッちゃん」に投影して難局に耐えている。

★ 父親はふと立ち寄った民芸品店で「流し雛(身代わり雛)」を目にし、家族でそれを川に流すシーンで物語は終わる。

☆ 塾生、特に小学4,5年生ぐらいの女子の話を聞いていると、彼女たちの社会の難しさを感じる。同級生の好き嫌いがはっきりし、徒党を組んで露骨に嫌ったりしている。「いじめ」予備軍を思わせる。

☆ 学校としても学年が変わる時期を利用して、クラス替えで改善しようとしているようだが、物語の中で娘が言っているように「ゲンジツ」はなかなか厳しいようだ。

☆ 最近「M3GUN/ミーガン」という映画が話題になっている。子どもの友達になるようにつくられたAIロボット「ミーガン」が暴走する映画のようだ。かつての「チャッキー」を思い起こさせる。

☆ 西洋ではストレスは内に向かわず、外に向かって発散されるのかも知れない。時には銃乱射のような暴力として。

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貫井徳郎「乱反射」

2023-06-03 10:44:37 | Weblog

★ 高校の中間テストも終わって、束の間の平穏。貫井徳郎さんの「乱反射」(朝日文庫)を読み終えた。

★ 街路樹が倒れ、母親とベビーカーに乗っていた2歳の子どもが下敷きになった。母親にケガはなかったが、子どもは頭から血を流していた。

★ すぐに駆け付けた救急車は子どもを病院に搬送しようとしたが、最も近い病院からは受け入れを拒否され、次の病院へは渋滞に巻き込まれた。どうやら車庫入れがうまくできず、道路の真ん中に車を乗り捨てた人がいたらしい。

★ ようやく病院にたどりついたものの、子どもは亡くなった。

★ 子どもはなぜ死ななければならなかったのか。なぜたいした風でもないのに街路樹は倒れたのか。両親は真相を追い求める。そこで見えてきたのは、「些細な自分勝手」の乱反射だった。

★ バタフライ・エフェクトという言葉があるが、いくつもの小さな無責任が連鎖し、悲惨な事態を招いてしまった。誰もが当事者意識をもっていない。非を追及されると、謝罪はおろかみんな一様に開き直って怒り狂う。彼らにとってみれば「言いがかり」に過ぎないのだ。

★ 法や司法制度には限界がある。しかし、不運で終わらせるにはあまりに悲惨だ。

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宮本輝「アルコール兄弟」

2023-06-02 13:38:39 | Weblog

★ 大雨警報が発令されているので近隣の小中学校は休校。子どもたちには思いがけない3連休と言うところか。週明けは数年ぶりに宇治の「あがた祭り」。久々の人込みになりそうだ。

★ さて、宮本輝さんの「五千回の生死」(新潮文庫)から「アルコール兄弟」を読んだ。新聞系列の広告代理店の同期の男が二人。1人は入社早々に組合活動に入り、どうやらそれ以来疎遠になっていたらしい。

★ ところがどういう風の吹き回しか、その二人がスナックの止まり木でしこたま酔っぱらっている。

★ たわいもない話だが、酔っ払いのやりとりはそれはそれで面白い。両者10年ぶりの和解かと思いきや、翌朝になってのどんでん返し。何がホンネで何がタテマエなのか。サラリーマンは辛いね。

☆ ここ数日、教育相談が相次いだ。親御さんたちの悩みは、我が子が家で勉強しないということ。特に兄弟(姉妹)間での落差にとまどっておられる様子だった。

☆ 「親の心、子知らず」「子の心、親知らず」。近さゆえの葛藤かな。親も子も発散する場がなくて閉塞気味。

☆ 「叱らず、ちょっとしたことでも褒めてあげてください」と伝えておいた。今や塾稼業は昔の駄菓子屋のおばさんのようなもの。斜めの関係の一翼を担えれば良いのだが。

 

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