じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

浅田次郎「うたかた」

2023-06-12 20:40:48 | Weblog

★ 私も間もなく高齢者の仲間入り。今の時代、65歳などはまだまだ現役世代だが、リスクは着々と高まっている気がする。少しずつ家財を整理しなければ。終活を始めなければいけない。

★ ということで、今日は浅田次郎さんの「見知らぬ妻へ」(光文社文庫)から「うたかた」を読んだ。

★ 今や限界集落となった団地。最後の一人となった女性の高齢者の遺体が発見された。餓死だった。部屋はきれいに片づけられ、冷蔵庫も空っぽ。ベランダから満開の桜を見下ろすような姿勢だった。まるで眠るような幸福そうな表情だったという。覚悟の最期だったのだろう。

★ 物語は彼女が若い頃、昭和の高度成長期、抽選に当選して、夫と二人の子どもとともに団地に入った時代にさかのぼる。6畳一間のアパートから近代的な団地へ。夫婦は幸福の極致にいた。

★ 周りには同じような家族が一斉に住み始めた。月日は流れ、子どもは成長し巣立つ。ある家族は団地を離れ子どもとの同居を選択し、ある家族は、夫婦のどちらかが亡くなり独居となった。

★ そして、団地から一人二人と去っていった。建物は老朽化し、近々取り壊されるらしい。

★ まるで戦後の日本を俯瞰するような物語だった。「うたかた」の人生だけれど、その生に感謝して旅立つ姿が印象的だった。

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