じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

中島たい子「漢方小説」

2021-04-25 15:29:18 | Weblog
★ 第3回緊急事態宣言初日。スーパーは意外と空いていた。マクドナルドがイートインを止めたので、ドライブスルーを待つ車が車道にあふれていた。それが原因で、交差点はひどい交通渋滞。

★ 中島たい子さんの「漢方小説」(集英社)を読んだ。第28回(2004年)すばる文学賞受賞作。

★ 映画の脚本などを書いている主人公。冒頭で七転八倒の状態で救急車を待っている。胃のあたりのドキドキが原因で、全身の震えが止まらない。さぞや重病かと検査を重ねるものの、結局原因は不明。4人の医師の診断を受けたが、最後はみんな暗に心療内科の受診を勧めるだけ。そしてたどり着いたのが幼いころから見てもらっていた医院。ここの医師は漢方医だ。

★ 疑心暗鬼で受診するも、病名ははっきりせず、ただ、「水がどうの」「火がどうの」と訳が分からない説明だけ。ともかくもらった薬を飲んでいると、どうも効き目があったようで、発作的な症状は治まってきた。

★ 病は気からと言うが、主人公にはちょっとばかり心当たりがあった。元カレの結婚のニュースがそれだ。無意識とは言え、心に秘め、強がったことが体の変調を引き起こしたのか。

★ 「漢方小説」というタイトル通り、この作品を読むと漢方の概略を知ることができる。そしてその面白さ、不思議さにはまる。西洋医学は病を治すが、東洋医学は対処療法と同時に、病の根本を治す。治すと言っても、それは時々刻々変化しその中で不調となった体のリズム(気の流れ)を整えること。そう言えば、病気と言い、元気と言い、東洋医学の思想は日常語として生きている。

★ 「私の人生を駄作に終わらせたくない」。結局はこの気づきが再生へのきっかけになったようだ。
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栗田有起「ハミザベス」

2021-04-25 01:06:04 | Weblog
★ 緊急事態宣言前日。少々多めに保存食を買い込んで、17日間の籠城戦が始まる。といって、どうやらバッハ会長の来日ありきの日程、2週間余りで感染爆発が収束するとも思えないが。

★ 栗田有起さんの「ハミザベス」(集英社文庫)から表題作を読んだ。第26回(2002年)すばる文学賞受賞作。

★ 中村文則さんや村上龍さん、更には大江健三郎さんの作品のように読んでも読んでもなかなかページが進まない作品もあれば、この作品のようにサッと読み切れるものもある。とにかく短い会話文が多いから、読むのは楽だ。

★ 同時に読んでいる群ようこさんの「パンとスープとネコ日和」(角川春樹事務所)と母娘のシチュエーションが似ているので、少々混乱しながら、こちらの方が先に読み終えた。

★ 死んだと思っていた父親(1歳の時、母と別れていた)が実は生きていて、ところが本当に死んだらしくて、母娘に遺産を残したと連絡があった。20歳の娘には超豪華な高層マンションの部屋と1匹のハムスターを遺したくれた。

★ 名前のなかったハムスター。娘は「ハミザベス」と名付けた。

★ 更年期に苦しむ母と娘の微妙な距離感が描かれていたが、どうも娘の出生には秘密があるようだ。そんな日常が淡々と短い会話で綴られていく。川上未映子さんの「乳と卵」にも通じるものがあるのかな。
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