じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

吉村昭「脱出」

2022-08-19 20:56:19 | Weblog

★ ツクツクボウシが鳴いたかと思えば、連日の雨。昨今は季節の変化が2週間ばかりズレている気がする。夏期講座は残り5日。今年も何とか無事に終えられそうだ。

★ コロナ第7波のせいか、繰り返される物価高騰のせいか、今年の売り上げは昨年には及ばなかったが、何はともあれ、事故もなく終えられれば幸いだ。

★ 今日は吉村昭さんの「脱出」(新潮文庫)から表題作を読んだ。1945年8月15日。玉音放送が流れ、多くの日本人は敗戦を知る。当時日本領だった樺太に住む中学生、光雄もそんな一人だった。

★ 戦争に敗れての終戦は、想定外であった。その上、終戦間際に参戦したソ連が樺太に上陸。聞くところによると男たちはどこかに連れ去られ、婦女子を狙った残虐な行為が繰り返されているという。

★ 光雄が住む寒村にもソ連参戦の情報が伝わっていた。北海道や内地に渡ることを希望する村人もいたが、多くはやっと築き上げた故郷、生活手段を放棄できず、グズグズと楽観的に時間を費やしていた。

★ そして、とうとうソ連兵がやってきた。光雄の村にやってきた兵士たちは紳士的であったが、体躯の大きな異国の兵隊は存在そのものが脅威だった。ここに及んで、村民はこぞって北海道への脱出を試みる。

★ 北海道に辿りつた人々。彼らは今で言う難民だった。生活手段を奪われ、わずかな食糧で何とか食いつなぐ日々。海岸線には多くの死体が打ち上げられていた。

★ 負けないはずの軍隊があっさり打ち負かされるのが衝撃的だった。「負けないはず」というのが庶民の勝手な思い込みだったのか。それとも国家や軍によるマインドコントロールだったのか。こうした隠蔽体質は戦後どれほど改まったのだろうか。

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