じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

凪良ゆう「流浪の月」

2022-08-21 22:05:59 | Weblog

★ 東京では「死刑になりたい」と中学生が見知らぬ親子を刺したという。家族を殺害するための予行だったという供述も漏れてくる。最近、ときどき死刑が犯罪の抑止力ではなく、犯罪の動機になるケースを見る。どう対応すれば良いのやら。

★ ともかく中学生が死刑になることはない。彼女はそんなことを知らなかったのか。あるいは何らかの心の病を抱えているのか。余人には分かりかねる彼女なりの理屈があるのか。

★ 久しぶりに長編小説を読み終えた。凪良ゆうさんの「流浪の月」(創元文芸文庫)。

★ 両親がいなくなり居場所のない9歳の少女が、「ロリコン」の大学生と共同生活を始める。少女の名前は更紗。大学生は文(ふみ)という。「ロリコン」といっても、文は少女に性的な興味があるわけではなさそうだ。

★ ただ、そんな二人を世の中は見過ごしてくれない(当然と言えば当然だが)。文は少女を誘拐、監禁した異常性愛者として逮捕され、更紗はかわいそうな被害者として保護される。

★ それから10数年。一時期の喧騒は去ったが、ネット上の情報は生き続けている。更紗は被害に遭ったかわいそうな少女として今も扱われている。彼女自身、何度か恋愛を経験したが、その状況に安住することができないでいる。

★ そして運命は二人を再会させる。そこから物語は大きく動く。

★ 人は自分の枠内で物事を納得しようとする。「ロリコン」の大学生を異常性欲者、少女を被害者と位置付けてしまえば、何となくわかった気になる。実際は違っていても。更紗の葛藤もそこにある。彼女が泣き叫ぼうと誰もわかってはくれない。「洗脳」「マインドコントロール」「ストックホルム症候群」として片付けられてしまう。遂には叫ぶことをやめ、ただ下を向くことに。

★ 月日が過ぎても、世の中は相変わらず二人の事件を面白おかしく取り上げる、しかし、二人はもはやそれほど気にしてない様子。終盤、二人を理解する人物が登場する。良かったなぁと思った。

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