じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

井上寿一「政友会と民政党」

2017-10-04 12:23:03 | Weblog
☆ 井上寿一さんの「政友会と民政党」(中公新書)を読んだ。非常に勉強になった。

☆ かつて日本に2大政党制の時代があった。

☆ 昭和初期、当時衆議院の勢力は、第一党の政友会が158議席、第二党の憲政会が156議席、第三党の政友本党(政友会から分裂したもの)が88議席。勢力が伯仲する中、政友会が衆議院を解散するのは必至だった。そこで、憲政会と政友本党が合体、1927年(昭和2年)6月1日に「立憲民政党」が結成される。

☆ 「立憲政友会」と「立憲民政党」による2大政党制の誕生である。

☆ 理念を共有しない数合わせの民政党に当時のマスメディアは冷ややかであったが、政友会との対抗を通して民政党は成長していく。(45頁)

☆ 少数与党だった田中義一内閣は、野党の内閣不信任案提出を察知するや、1928年(昭和3年)1月21日に衆議院を解散。第1回目の普通選挙となった結果は、定数466議席に対し、政友会が217議席、民政党が216議席とかろうじて、政友会が第一党を死守した。

☆ 潮目が変わったのは、関東軍による張作霖爆殺事件。天皇に責任を問われた田中義一内閣は総辞職し、大命は民政党の浜口雄幸に下る。

☆ それから議会を中心とした政党政治が数年続くが、浜口首相はテロに倒れる。浜口の後を継いで組閣した若槻礼次郎内閣は満州事変(1931年)への対応で閣内不一致となり総辞職、大命は政友会の犬養毅に下る。

☆ しかし、その犬養も五・一五事件(1937年)で射殺され、内閣は倒壊する。政党政治の終焉と軍部によるファシズムの台頭である。

☆ 井上さんはそうした教訓から、「二大政党制は、政策の優劣を競う政治システムではなくなった。反対党の失点が自党の得点になる。二大政党制の下での党利党略が激しくなる。国民は機能不全に陥った二大政党制を見放した」(242頁)と総括している。


☆ 大日本帝国憲法は、主権が天皇にあり、軍の統帥権も天皇にあった。これは、国民主権、シビリアン・コントロールの日本国憲法の体制とは大きく異なる。しかし、政党政治が堕落し、結局はテロやクーデターによって議会政治が崩壊していった歴史は教訓とすべきであろう。

☆ 戦前の政党政治は、「非常時」という名目で挙国一致内閣へと向かう。

☆ 今回の衆議院選挙、「国難」を叫ぶ総理大臣の言葉がどうも胡散臭く感じる。政党政治を壊したのは政党自身である。この教訓を忘れないでほしいものだ。



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「アーモンド入りチョコレートのワルツ」

2017-10-04 03:19:28 | Weblog
☆ 森絵都さんの「アーモンド入りチョコレートのワルツ」(角川文庫)から表題作を読んだ。

☆ 本を読みながら音楽が聞こえるような素晴らしい作品だった。(実際に登場した曲を聴きながら読んだのだが)

☆ あるピアノ教室。教えているのは絹子先生。主人公の「わたし」とマイペースな友人の君絵は、魔女のような絹子先生に魅かれて、レッスンを続けていた。

☆ 「わたし」は理由をつけてはピアノを弾かず、君絵はわけのわからない即興の歌詞をつけて歌を歌ってばかりだったけれど。

☆ 「わたし」と君絵が中学1年生になった時、事件が起こった。陽気なフランス人が絹子先生の居候になったのだ。そのフランス人、音楽家のサティにそっくりなのだ。「わたし」たちは彼をサティおじさんと呼んだ。

☆ それから起こる楽しくて、でもちょっぴり悲しい物語。

☆ みんな自分らしく生きなさい。アーモンド入りのチョコレートのように。

☆ 余韻が残る作品だった。

☆ 森さんの作品には魅せられてしまう。引き込まれてしまう。無駄な装飾音がない、サティの音楽のような作品だった。さらっとして、スカッとして、最後はほのぼのとした気持ちになった。
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