○日本民藝館 特別展 開館75周年記念『日本民藝館名品展』(2011年4月5日~6月26日)
日本民藝館は、いつも正面の引き戸を開けて、玄関ホールを目にする瞬間が楽しみでしかたない。開館75周年記念の名品展で、ここに何を持ってくるのだろう?と考えていた。開けると、踊り場には、小さいながら存在感のある木喰仏。壁には拓本が3幅。左右の大字「進悳」「懲忿」は『梁武事仏碑』だと分かった。2008年の『版と拓の美』展で見たとき、原碑がどこにあるのか、調べても分からなかったが、今回貰ったリーフレットに「後に碑が落水したため、日本民藝館所蔵品以外には存在が確認されていません」と書いてあった。そうなのか!
中央は『水牛山刻字・六朝』だという。ネットで調べたら、山東省にある摩崖刻で、拓本の6行52文字が全文らしい。きちんと読解はできないのだが、かすかに意味の分かる箇所、たとえば「観佛」の繰り返しが浮かび上がってきて、不思議な感覚にとらわれる。大般若経のひとつ『文殊師利般若経』の一部らしい。2階に上がってもこの拓本が気になって、最後の「是名観佛」って、何て読み下すんだろうなあ、などと考えあぐねる。2階の階段前には、沖縄の厨子甕(納骨器)が2器、白い素焼きのものと、黒っぽい鉄釉のかかったものが、狛犬のように置かれていた。全体に鎮魂と祈りの雰囲気を感じたのは、考えすぎだろうか。
2階の大展示室は、濱田庄司、河井寛次郎、棟方志功らの「新作工芸」を特集。芹沢介の型絵染による「法然上人御影」が面白いと思った。それと、日本民藝美術館の設立趣意書、柳宗悦による間取りスケッチなどのアーカイブズ資料も。昭和11年の帝都電鉄(いまの京王井の頭線)は「神泉」の次に「一高前」、次に「西駒場」という民藝館のすぐそばの駅があったんだなあ。
併設展のお楽しみは、なんと言っても2階第4室の「日本絵画名品撰」。『築島物語絵巻』は、わりと冒頭に近い2画面を展示。このあと、巻き替えするのだろうか? これって、実は悲惨な内容の物語なのだが…。同じケースに『浦島絵巻』もあって、矢島新氏の云う「箱を開けた浦島に、帯のような煙がとびかかる」(一反木綿かw)図が開いている。大画面の『曽我物語屏風』も面白かったが、私は物語を読んでいないので、イノシシに後ろ向きにまたがっているのは何者?とか、鎧武者のひざにすがる女の子は誰?とか、十分に読み解けないのが残念。
再び1階へ。玄関ホールの右の壁にあったのが『開通褒斜道刻』。いつもより低い位置に掛っていて、細部が見やすいはずなのだが、なんだかよく分からない。もう少し「引き」で見た方が、この作品の魅力は増すと思う。1階第2室の「外邦及びアイヌの工芸」には、フランス、イギリス、スペインなどの西洋食器も並ぶ。なるほど「民藝」って、インターナショナルな概念なんだな、と感じられる。
ところで、ここの展示は、あまり「耐震」に気をつかっている様子がなかったけど、大丈夫なんだろうか。まあ、テグスでがんじがらめにするような無粋さは、ないほうが嬉しいのだけど。
日本民藝館は、いつも正面の引き戸を開けて、玄関ホールを目にする瞬間が楽しみでしかたない。開館75周年記念の名品展で、ここに何を持ってくるのだろう?と考えていた。開けると、踊り場には、小さいながら存在感のある木喰仏。壁には拓本が3幅。左右の大字「進悳」「懲忿」は『梁武事仏碑』だと分かった。2008年の『版と拓の美』展で見たとき、原碑がどこにあるのか、調べても分からなかったが、今回貰ったリーフレットに「後に碑が落水したため、日本民藝館所蔵品以外には存在が確認されていません」と書いてあった。そうなのか!
中央は『水牛山刻字・六朝』だという。ネットで調べたら、山東省にある摩崖刻で、拓本の6行52文字が全文らしい。きちんと読解はできないのだが、かすかに意味の分かる箇所、たとえば「観佛」の繰り返しが浮かび上がってきて、不思議な感覚にとらわれる。大般若経のひとつ『文殊師利般若経』の一部らしい。2階に上がってもこの拓本が気になって、最後の「是名観佛」って、何て読み下すんだろうなあ、などと考えあぐねる。2階の階段前には、沖縄の厨子甕(納骨器)が2器、白い素焼きのものと、黒っぽい鉄釉のかかったものが、狛犬のように置かれていた。全体に鎮魂と祈りの雰囲気を感じたのは、考えすぎだろうか。
2階の大展示室は、濱田庄司、河井寛次郎、棟方志功らの「新作工芸」を特集。芹沢介の型絵染による「法然上人御影」が面白いと思った。それと、日本民藝美術館の設立趣意書、柳宗悦による間取りスケッチなどのアーカイブズ資料も。昭和11年の帝都電鉄(いまの京王井の頭線)は「神泉」の次に「一高前」、次に「西駒場」という民藝館のすぐそばの駅があったんだなあ。
併設展のお楽しみは、なんと言っても2階第4室の「日本絵画名品撰」。『築島物語絵巻』は、わりと冒頭に近い2画面を展示。このあと、巻き替えするのだろうか? これって、実は悲惨な内容の物語なのだが…。同じケースに『浦島絵巻』もあって、矢島新氏の云う「箱を開けた浦島に、帯のような煙がとびかかる」(一反木綿かw)図が開いている。大画面の『曽我物語屏風』も面白かったが、私は物語を読んでいないので、イノシシに後ろ向きにまたがっているのは何者?とか、鎧武者のひざにすがる女の子は誰?とか、十分に読み解けないのが残念。
再び1階へ。玄関ホールの右の壁にあったのが『開通褒斜道刻』。いつもより低い位置に掛っていて、細部が見やすいはずなのだが、なんだかよく分からない。もう少し「引き」で見た方が、この作品の魅力は増すと思う。1階第2室の「外邦及びアイヌの工芸」には、フランス、イギリス、スペインなどの西洋食器も並ぶ。なるほど「民藝」って、インターナショナルな概念なんだな、と感じられる。
ところで、ここの展示は、あまり「耐震」に気をつかっている様子がなかったけど、大丈夫なんだろうか。まあ、テグスでがんじがらめにするような無粋さは、ないほうが嬉しいのだけど。