○東京都写真美術館 『夜明けまえ-知られざる日本写真開拓史I.関東編』
http://www.syabi.com/
近代史に興味を持つようになって、近代独特の歴史資料「古写真」が気になるようになった。上記サイトの宣言によれば、東京都写真美術館は「日本全国にある博物館、文書館、郷土資料館等の機関が所蔵する幕末・明治期の写真資料を調査し、体系化する『日本写真開拓史』シリーズを」開催するという。これは、何年かかるか分からないけど、ぜひ完遂してほしい、壮大な計画だと思う。
第1弾「関東編」の展覧会は、関東圏に点在する1500ヵ所の関係機関(美術館、博物館、図書館、大学史料室など)の調査をもとに、選りすぐった300点余りが展示されている。
冒頭を飾るのは、文久2年(1862)、第2回遣欧使節一行がパリのナダールの写真館で撮影したもの。鶏卵紙のオリジナルプリントには、エンボスで「Nadar」のサインが押されている。赤み(茶色)がった色味は古風だが、被写体の聡明そうな目の輝きは、はっきり伝わってくる。昭和63年に複製されたゼラチン・シルバー・プリントの無機質だが、どこかぼやけた感じと比べてみると、写真は「新しければいい」ものではないことが、よく分かる。
「鎧姿の河津伊豆守」いいなあ。パリまで、こんな装束を持っていったのか。鎧兜姿で、照れたように微笑んでいる表情が、とても人間的でいい。
明治期に入ると、小型判(名刺大)とはいえ、たくさんの個人写真が残っている。無名の人々、さらにその老母や妻の肖像も多い。おもしろいのは、これらの写真が表からも裏からも見えるように展示されていること。裏側には、写真館の広告が入り、さらに持ち主や被写体に関する、様々な書き入れが残されている。
コレクションとして興味深いまとまりは、明治24年(1891)の濃尾大震災を写した写真の数々。いずれも、おめでたい記念写真のように、麗々しい枠付きの台紙に貼られていることに最初は戸惑った。枠外には「尾張名古屋”早取写真師”中村牧陽写」とある。「早取」と言っても、今日のスナップのようなわけにはいかなかっただろうが、よく撮ったなあ、呆然自失の被災者の中に入っていって。この頃から、写真が「報道」のツールとして機能し始めていたことが分かる。20枚に及ぶこのコレクション、所蔵先は「日本赤十字看護大学史料室」とあった。よく考えてみれば納得だが、意外なところに意外な記録があるものである。
近代初期の日本人写真家のディレクトリーがついた『研究報告』が500円。何かに使えそうな気がしたので、買ってきてしまった。名前の判明している写真家は、けっこう事蹟や系譜の調べが付いていることが分かった。
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近代史に興味を持つようになって、近代独特の歴史資料「古写真」が気になるようになった。上記サイトの宣言によれば、東京都写真美術館は「日本全国にある博物館、文書館、郷土資料館等の機関が所蔵する幕末・明治期の写真資料を調査し、体系化する『日本写真開拓史』シリーズを」開催するという。これは、何年かかるか分からないけど、ぜひ完遂してほしい、壮大な計画だと思う。
第1弾「関東編」の展覧会は、関東圏に点在する1500ヵ所の関係機関(美術館、博物館、図書館、大学史料室など)の調査をもとに、選りすぐった300点余りが展示されている。
冒頭を飾るのは、文久2年(1862)、第2回遣欧使節一行がパリのナダールの写真館で撮影したもの。鶏卵紙のオリジナルプリントには、エンボスで「Nadar」のサインが押されている。赤み(茶色)がった色味は古風だが、被写体の聡明そうな目の輝きは、はっきり伝わってくる。昭和63年に複製されたゼラチン・シルバー・プリントの無機質だが、どこかぼやけた感じと比べてみると、写真は「新しければいい」ものではないことが、よく分かる。
「鎧姿の河津伊豆守」いいなあ。パリまで、こんな装束を持っていったのか。鎧兜姿で、照れたように微笑んでいる表情が、とても人間的でいい。
明治期に入ると、小型判(名刺大)とはいえ、たくさんの個人写真が残っている。無名の人々、さらにその老母や妻の肖像も多い。おもしろいのは、これらの写真が表からも裏からも見えるように展示されていること。裏側には、写真館の広告が入り、さらに持ち主や被写体に関する、様々な書き入れが残されている。
コレクションとして興味深いまとまりは、明治24年(1891)の濃尾大震災を写した写真の数々。いずれも、おめでたい記念写真のように、麗々しい枠付きの台紙に貼られていることに最初は戸惑った。枠外には「尾張名古屋”早取写真師”中村牧陽写」とある。「早取」と言っても、今日のスナップのようなわけにはいかなかっただろうが、よく撮ったなあ、呆然自失の被災者の中に入っていって。この頃から、写真が「報道」のツールとして機能し始めていたことが分かる。20枚に及ぶこのコレクション、所蔵先は「日本赤十字看護大学史料室」とあった。よく考えてみれば納得だが、意外なところに意外な記録があるものである。
近代初期の日本人写真家のディレクトリーがついた『研究報告』が500円。何かに使えそうな気がしたので、買ってきてしまった。名前の判明している写真家は、けっこう事蹟や系譜の調べが付いていることが分かった。