見もの・読みもの日記

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年の瀬京都旅行:承天閣美術館

2007-12-28 22:21:21 | 行ったもの(美術館・見仏)
■承天閣美術館 開基足利義満公600年遠忌記念『相国寺の禅林文化-室町から近世へ-』(後期)

http://www.shokoku-ji.or.jp/jotenkaku/index.html

 今年5月に新装オープンした承天閣美術館。開館記念の『若冲展』では『釈迦三尊像』と『動植綵絵』に突進してしまったので、ほとんど周りを見ていなかった。今回、あらためて、きれいになった建物に感心した。本展は、相国寺の豊かな禅林文化を紹介するもの。絵画、墨蹟、茶道具など、さまざまな文物が並ぶ。

 前回、すっとばした鹿苑寺大書院の障壁画(若冲筆)も久しぶりに堪能した。『月夜芭蕉図』は、無人の荒野に「婆娑(ばさ)と」(→解説板の表現)立つ芭蕉の大木を描く。「婆娑」とは、蕪村の自賛句の自注に「月婆娑と申事は、冬夜の月光などの木々も荒蕪したる有さまに用ひる候字也。秋の月に用ひず、冬の月に用ひ候字也」とあるそうだが、この画にぴったりくる用語だと思う。私は、アンリ・ルソーの『眠るジプシー女』に漂う、甘い孤独を思い浮かべた。

 それから『葡萄図(葡萄小禽図)』。ここは後水尾天皇の玉座の間であり、「虫食い葉や病斑までも入念に仕上げられた」というが、いいのか、玉座に虫食いや病斑って?! 稀代の芸術家君主なればこそ、それもアリか。余談だが、松岡正剛さんの「千夜千冊」サイトで、熊倉功夫著『後水尾院』という本を見つけた。鹿苑寺サロンについての記述がある。読んでみようかな。

 水墨の『竹虎図』も若冲筆。前日、京博で見た正伝寺の『虎図』(高麗時代)の模写である。なんというグッド・タイミング。当館初公開という『十六羅漢図』(室町時代)は、「和様」(穏やかで、背景や細部の描写を重視)と「唐様」(中心人物の羅漢を強調、魁偉で超現実的)の折衷的な、ちょっと不思議な画風だった。

 墨蹟では、蘭渓道隆の「宋元」に腰砕けになった。世界史の勉強じゃあるまいし。しかし、考えてみれば、蘭渓道隆(1213~1278)は南宋の人。1246年に来日。1234年に金を滅ぼし、実質的に華北を支配していたモンゴルは、1271年に元を名乗り、1279年に南宋を滅ぼす。まもなく滅びる者と滅ぼす者になるはずの2つの国号を、どんな思いで並べてみたのか。なんとも不思議な書である。

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