見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

墨蹟(鎌倉国宝館)→金沢文庫→横浜ユーラシア文化館

2013-06-16 10:58:22 | 行ったもの(美術館・見仏)
鎌倉国宝館 『常盤山文庫70周年記念名品展 2013-特集 墨蹟-』(2013年5月16日~6月30日)

 週末東京旅行の2日目は鎌倉へ。朝から、今月これは見逃せないだろうと思っていた展覧会に飛び込む。常盤山文庫は、鎌倉山の開発に尽力した故・菅原通済のコレクション。根津美術館で大規模なコレクション展が開かれたことは記憶に新しいが、鎌倉国宝館では、2012年の『米色青磁』展に続く企画となる。だいたい見覚えのある作品が多くて、どれも好き。入場券売り場で「粗品(?)を差し上げております」と封筒を渡され、開けてみたら、ポスターにもなっている無準師範の墨蹟『巡堂』の絵葉書だった。いや私は嬉しいけど。あとで友人と、職場で席を空けるとき机の上に置いていこうか、と話し合った。

 宋元の僧侶の墨蹟は、眺めていると、なんとなく言いたいことが伝わってくる。日本の行政官僚の漢文が、この頃(中世)になると定型化して面白くなくなるのに比べて、話者の息遣いみたいなものが感じられ、現代中国語にかなり近い感じもする。「夏了可有御上洛之由」→夏(安居)が終われば、ご上洛があるとうかがっておりました、って、こう表現するのか~。 易元吉画巻の跋文だという馮子振の墨蹟に惚れ惚れする(画巻は伝わらず)。特別出品だという円覚寺の『仏日庵公物目録』も面白くて、「龍虎二鋪 徽宗○○(読めない)賛御製」などに目がとまった。天神図の墨摺絵、紅摺絵も珍しかった。そう言えば、菅原通済の天神絵コレクション(←菅原つながり)って有名なんだな、確か。

 ついでなので、レポートを書いていなかったが、同館の1つ前の企画『鎌倉の至宝』(2013年4月6日~5月12日)にもちゃんと行って(連休の引っ越しの合間)、青蓮寺の珍しい四臂の十一面観音像を見てきたことも付け加えておこう。「抑揚を抑えたまとまりのよい作風は関東地方より近畿地方によく見られるもの」と解説されていた。確かに西国三十三所巡礼の記憶と響き合うものがあった。腰から下が安定していて、表情も少ない(いわゆる仏頂面)。大きなティアラのような冠が重そうだったが、あれは制作当時のものなのかどうか。

 国宝館を出たあと、鎌倉在住の友人に出てきてもらって、老舗・中華料理の二楽荘でゆっくりランチ。

金沢文庫 特別展『瀬戸神社-海の守護神-』(2013年4月26日~6月9日)

 鎌倉を出て、ちょうど最終日だったこの展覧会に寄ることにする。源頼朝が伊豆三島明神(三島大社)の分霊を祀った神社。私は、金沢文庫から金沢八景まで歩く途中で、何度か前を通った記憶があるが、こんなお宝を持っていたとは。ランチを付き合ってもらった友人が、ミニ「大神社展」みたいな、と言っていたとおり、神像の比率が高くて、興味深かった。随神(随身)像は、寺院でよく見る閻魔王の従者、司録と司命に雰囲気が似ていた。女神像は装束や髪型がわりと和風。私が「唐風」と感じる女神像(ひらひらの襟や袖飾りを付け、髪を結う)と「和風」と感じる女神像って、歴史的には、いつの時代に出現するんだろう?

横浜ユーラシア文化館 開館10周年記念特別展『マルコ・ポーロが見たユーラシア』(2013年4月27日~6月30日)

 友人から招待券をもらったので、閉館30分前に滑り込む。写真パネル程度でお茶を濁す展示かな、と勝手に想像していたが、会場に入ると、ずいぶん古書が並んでいたので、むむ、と考えを改める。15世紀のラテン語刊本(天理図書館蔵)は、残念ながら展示期間が終わっていたが、16世紀のフランス語刊『東方見聞録』は京都外国語大学から。14世紀の中世フランス語写本『世界の記述(=東方見聞録)』はフランス国立図書館から。よく探して、借りてきたなあ。関連して、各種の旅行記あり。元・耶律楚材の『西遊記』(元刊本に由来する鈔本=写本、宮内庁書陵部)、元・汪大淵『島夷志略』(静嘉堂文庫)なんていう諸本が国内にあるとは知らなかった。

 文物ではイスラムの星形タイルを興味深く見た。なるほど、十字形タイルと組み合わせることで壁面が埋まるのか。中華世界におけるキリスト教(景教)やマニ教(明教)については、もっと知りたいな~。オロンスムの考古資料は、以前の特別展を思い出して、懐かしかった。訪ねたことのある都市の風景(杭州、揚州、鎮江など)は懐かしく、未踏の地(泉州)へはひたすら旅心を掻き立てられる展示だった。

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