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見もの・読みもの日記

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「妖かし」大活躍/新・陰陽師(歌舞伎座)

2023-04-27 22:30:36 | 行ったもの2(講演・公演)

歌舞伎座 新開場十周年記念・鳳凰祭四月大歌舞伎:昼の部『新・陰陽師』(4月23日、11:00~)

 夢枕獏の小説『陰陽師 滝夜叉姫』をもとに、市川猿之助が脚本・演出を手掛けた舞台。4月に入ってから、これは見たいなあと思ってチケットを探したら、意外なことにまだ日曜のチケットがあった。残っていたのは1等席だけだったので、けっこうな出費になったが、思い切って購入した。

 本作は、歌舞伎座の新開場杮葺落公演(2013年)から約10年ぶりの上演だが、初演とは全く趣きを変えた「古典歌舞伎仕立て」のスタイルだという。私は初演を見ていないので、比較はできないが、全体としては「古典歌舞伎」の雰囲気が濃いように思った(あまり見ていないけど)。

 発端「賀茂社鳥居前の場」は朱雀帝の御代。東国では不作が続き、苦しい生活を強いられている民人は、左大臣に窮状を訴え出ようとするが、逆に捕えられてしまう。この様子を見ていたのは、平小次郎将門と俵藤太秀郷。将門は直接、東国の民を助けることを、藤太は都の官吏として善政を行うことを誓う。

 それから八年後。東国では将門が挙兵し、新皇を名乗っていた。将門討伐を命じられた藤太は、その務めを引き受ける代わりに、帝の寵愛を受けていた桔梗の内侍を所望する。藤太の願いは聞き届けられ、桔梗は一足先に東国へ下って将門を篭絡することを目指し、陰陽師の芦屋道満は藤太に鏑矢を授ける。場面代わって相馬の内裏。将門のそばには桔梗が侍っていた。将門は、訪ねて来た藤太に毒酒を供するが、桔梗が一計を案じて藤太を救う。将門は討ち取られたが、その首は虚空へ飛び去った。

 二幕目、将門没後の村上帝の御代。将門の軍師だった興世王(おきよおう)が宮中に現れるが、安倍晴明がこれを退ける。続いて、晴明の住まいに訪ねてきた源博雅は、町娘の糸滝を伴っていた。糸滝は、琵琶湖畔の三上山に大百足が出て困っていると告げ、晴明は、藤太に百足退治を頼むことを約束する。続いて、将門の首塚のある一条戻橋。将門の妹である滝夜叉姫と興世王が現れ、将門の首を掘り出す。追ってきた晴明、博雅らは大蝦蟇に襲われるが、晴明はキツネの眷属を召喚して逃れる。

 三幕目、三上山の山腹。山姥に育てられた大蛇丸(おろちまる)が藤太の家来となる。藤太は大百足を討ち取り、宝剣・黄金丸を手に入れる。続いて、貴船岩屋。滝夜叉姫らは将門を生き返らせようとするが、芦屋道満と興世王が将門を鬼とし、この世を魔界とする企みであることを知り、絶望して身投げする。興世王は藤原純友の正体を現し、道満は、晴明らを嘲笑って虚空に消えていく。

 蝦蟇やらムカデやらキツネやら、異類のものたちが跋扈するし、生首は表情豊かに喋るし、雷鳴がとどろき、火花が飛び散り、最後は道満(猿之助)が宙乗りで三階席の彼方へ消えてゆくし、趣向がいっぱいで楽しかった。ただ、私はどうせなら京劇くらい振り切った、アクロバティックな演出が見たいという気がした(ムカデ退治の場面)。それと、滝夜叉姫は、強くてカッコいい悪女かと思ったら(将門の腕を咥えて六方を踏む)、最後は兄の運命を悲しんで、滝壺に身投げしてしまうのが、ちょっと気に入らない。なお、江戸の語りものでは将門の娘だが、本作では将門の妹という設定である。将門は、東国民にとって反逆のヒーローなのに、晴明に簡単に調伏されてしまう(蘇生した肉体を焼かれてしまう)のも納得がいかない。最後は、将門こそ虚空に飛び立ってほしかった。

 私は、国立劇場では何度か歌舞伎を見たことがあるが、歌舞伎座は初めての体験だった。なるほど、お客さんの多くは、演目というより、ひいきの役者さんを見に来るんだなあ、というのがよく分かった。だから楽屋落ち的なくすぐりも大好きなようだ。私は、また歌舞伎座には来るかもしれないが、この世界にはあまり深入りしなくていいかなあ、と思った。


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