見もの・読みもの日記

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マニ教絵画と曜変天目/藤田美術館展(奈良国立博物館)

2019-04-16 22:26:56 | 行ったもの(美術館・見仏)

奈良国立博物館 特別展『国宝の殿堂 藤田美術館展:曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき』(2019年4月13日~6月9日)

 中之島香雪美術館を出て奈良へ。奈良博へは夕方から入ろうかな、と呑気なことを考えていたが、念のため確認したら(正倉院展以外の)特別展は、土曜夜間開館をやっていないのだった。危ない、危ない。『藤田美術館展』の初日ということで、朝は開館待ちの列もできたようだが、昼過ぎは、特に待たずに入れた。

 会場に入るとすぐ、「曜変天目茶碗はこちらです」という待ち列が見えた。そんなに長くなかったので、とりあえず並ぶ。西新館の中央(お水取りの特集陳列でいつも二月堂の模型が据えられるあたり)に高い壁で囲われた別室ができていて、15分くらいで茶碗の展示ケースに到達した。列に並ぶと、展示ケースの7時の方向くらいから右回りに一周することができる。そんなに混んでいなかったので、列に並ばなくても茶碗の姿を見ることはできるが、やっぱり最前列で覗き込んだほうが曜変天目の醍醐味が分かる。また、覗き込む位置によって、青い輝きの目立つところと目立たないところがあり、たぶん3時の方向くらいに回り込んだときが、一番きれいだった。あと、藤田美術館の展示室では見えにくかった、外側の青い斑点もよく分かった。奈良博の展示技術、さすがである。

 あとは落ち着いて展示を見ていく。第1会場は茶道具、それに茶掛けとなる墨蹟と古筆。藤田伝三郎鍾愛の『交趾大亀香合』ももちろん出ていた。墨蹟では、現存する最古の詩画軸だという『柴門新月図』(15世紀初め)を見られたのが眼福。大燈国師の墨蹟『偈語』もよかった。高野切(第3種)、上畳本三十六歌仙切の大伴家持像もあり。

 続いて物語絵と肖像は、むかしから好きな『阿字義』がたっぷり開いていて、絵だけでなく文章も味わえた。漢字ひらがな混じり(振り仮名はカタカナ)で、平安時代の文章とは思えないほど読みやすい。『玄奘三蔵絵』は巻1,2を展示。旧内山永久寺の障子絵『両部大経感得図』も。あえて感想は描かないが大好きな作品ばかりである。

 東新館に移って最初は仏像。快慶様の地蔵菩薩立像は実に美麗。興福寺伝来の千体聖観音菩薩像の一部は、以前、サントリー美術館の『藤田美術館の至宝』展(2015年)で見たものだ。一本足の怪鳥の背中に乗った『弥勒菩薩交脚坐像』は、藤田美術館の『ザ・コレクション』(2017年)で見て印象深かったもの。

 保存や展示が難しい、大型の資料もいろいろ出ていた。『仏像彩画円柱』8本(鎌倉時代)には驚いた。山城国・東明寺伝来の『四天王像扉絵』(南北朝時代)も初めて見たのではないかと思う。『釈迦文殊普賢像』3幅対(南北朝時代、海龍王寺伝来)もよかったなあ。濃厚に宋風。文殊と普賢が、ゆるいパーマをかけたような髪型をしている。

 しかし、なんといっても私が歓喜したのは『地蔵菩薩像(マニ像)』。行きの新幹線で展覧会の情報を集めていたら、「マニ教の始祖像を初確認 奈良国立博物館で公開」というニュースが流れてきて、驚いていたのだ。作品は、縦が180cmを超える縦長の大幅。赤と白(少し緑が混じる)の華麗な蓮華座に、ゆったりした白衣の人物が座っている。白衣の左右、肩の下と裾近くの計4箇所に赤い四角形が描かれているのがマニの印! 詳しい解説はなかったけれど、すぐに分かって感激した。元~明代(14世紀)の絹本著色である。いま、ドラマ『倚天屠龍記』を視聴中ということもあって、特別に嬉しかった。図録の解説によれば、大和文華館所蔵の六道絵に描かれるマニ像とたいへんよく一致するそうだ。

 法具もたくさん出ていて、特に厨子のコレクションが面白かった。ミニチュア感のある神鹿像を収める『春日厨子』は、背景の御蓋山・春日社景も楽しい。天井に赤龍が描かれているのも見つけた。錦幡は、正倉院宝物で残欠を見たことはあるけど、室町や安土桃山時代のものを見ることは少なくて、興味深かった。

 なお、これで私は昨年購入した「奈良博プレミアムカード」を4展覧会6回使わせてもらった。お値打ち感あり。


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