見もの・読みもの日記

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改装を惜しむ/ザ・コレクション(藤田美術館)

2017-04-24 22:35:59 | 行ったもの(美術館・見仏)
藤田美術館 『ザ・コレクション』(2017年3月4日~6月11日/前期:3月4日~4月30日)

 先月、同館が中国美術の名品31点をニューヨークでのオークションに出品し、落札総額2億6千280万ドル(約301億円)を記録したことが、ひとしきりニュースになっていた。収益は施設の建替え等に充てられる予定と聞いて、蔵のような古めかしい展示棟を思い浮かべて、なるほどなあと納得していた。公式サイトのお知らせには「この度、藤田美術館は、施設の全面的な建替えに取り組むこと」になり、「2017年6月12日より休館し、2020年の開館を目指して、現在リニューアル計画を検討して」いると告知している。本展は、休館前のファイナル名品展ということになる。

 前後期で展示品がほぼ入れ替わるので、とりあえず4月中に一度行ってきた。たぶん初見で、妙に印象的だったのは金銅造弥勒菩薩交脚坐像。北魏時代のもの(台座に「大魏神亀元年」の銘)だというが、台座の上に一本足の怪鳥(恐竜みたい)が立っていて、その背中に鼓型の椅子を据えて、弥勒菩薩が腰かけている。菩薩像と鳥は時代や様式が違いので、後世に組み合わせたものか、というが、わけが分からなくて面白かった。

 王朝の香り高い寸松庵色紙と升色紙、十五番歌合の断簡もよかった。上畳本三十六歌仙切の『大伴家持像』は右手の袖を上げて、目の高さに手をかざしている。ん?猿丸太夫のポーズみたいだ。以上、二階。

 一階に降りる。『玄奘三蔵絵』は巻三、雪のベデル峠越えの場面だった。雪原に倒れる人と馬、それでも進む一行。怖い獣(黒豹?)もひそんでいる。『両部大経感得図』も大好きな絵画作品。展示ケースの奥行が薄目で、間近に見られて嬉しかった。「善無畏」図の背景には黒い鵜のような鳥が二羽。「龍猛」図には、よく見ると獅子と、角のまっすぐなガゼルみたいな動物がいる。

 『曜変天目茶碗』にはうっとりした。静嘉堂文庫のものより、かなり小さい感じがしたが、Wikiで見ると口径で1.6cm違うようだ。銀の覆輪のせいで、引き締まった印象に見えるのかもしれない。曜変の斑点も静嘉堂のものより小さく、華やかさに欠けるが、かえってそこがいい。あまり近づいて覗き込まず、少し離れて、青の発色がほんの一部分しか見えない位置で眺めるのが私の好みである。さらにひとまわり小さい『油滴小天目茶碗』もいいなあ。ぐいのみにしたい。金代の茶碗だという。快慶作の木造地蔵菩薩立像は美麗で、『快慶展』への期待が高まった。

 美術館の「中の人」らしい男性が、女性のお客さんを相手に「おかげさまで去年の10倍から30倍」と話していたのは、この展覧会の入場者数かな? 確かにいつもより人が多かった。どんなふうに改装するんですか?と聞かれて「まだ分かりません」みたいなことを話していたけど、この「蔵の中」の雰囲気がなくなっちゃうとしたら、ちょっと残念。最後に(展示品なしで)美術館内部の撮影会をやってくれないかなあ。私は大阪まで行けないけど、誰か写真を撮って記録を残しておいてほしい。

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