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南蛮屏風と初期洋風画が多数/交流の軌跡(中之島香雪美術館)

2019-10-25 23:04:03 | 行ったもの(美術館・見仏)

中之島香雪美術館 特別展『交流の軌跡-初期洋風画から輸出漆器まで』(2019年10月12日~12月8日)

 よく晴れた日曜日は大阪でスタート。本展は、香雪美術館が所蔵する『レパント戦闘図・世界地図屏風』(重要文化財)を軸に、西洋製銅版画に典拠を求められる初期洋風画から輸出漆器までを展示し、近世の海外文化交流の軌跡を美術の世界からたどる。私の大好物のテーマなので、とても楽しみにしていた。

 会場に入ると、いきなり先頭に『レパント戦闘図・世界地図屏風』! 見ものの1点が後のほうにあると、疲れたり時間がなくなったりするので、こういうストレートな姿勢は好ましいと思う。この屏風を初めて見たのは、2006年、歴博の『鉄炮伝来』展。2007年のサントリー美術館『BIOMBO』展でも見ており、三度目だと思う。たぶん香雪美術館ではもう少し展示されているのではないかと思うが、なかなか見に行く機会がなかった。交通の便のよい大阪・中之島で、こうして展示してくれるのは本当にありがたい。いやーしかし「戦闘」というには、きらびやかでのどかで不思議な絵だ。いちおう流血して倒れている兵士もいるのだが目立たない。馬に乗ったローマ兵は、かなり颯爽としているが、トルコ軍の乗りものになっている象が、風船みたいに丸々して可愛らしすぎる。よく見るとローマ兵は多くの松明を掲げているが、これも赤いチューリップみたい。

 この絵の部分々々は、もとになった銅版画が推定されている。ジウリオ・ロマーノ原画の1枚ものの銅版画『ザマの戦い』(1602年)には、ハンニバル軍の戦象が敵兵に襲いかかる様子が描かれており、象の装備や兵士の姿勢は似ているものの、この阿鼻叫喚の図が、あの福々しいゾウさんになるのかと思うと可笑しかった。ローマ皇帝と馬車の図は、かなり銅版画に迫っていると思う。

 『レパント戦闘図・世界地図屏風』の左隻は17世紀初頭の世界地図。かなり海岸線が正確になってきている感じがする。その一方、内陸の色分けは大胆で、アメリカの北部に横から見た山々が描かれていたり、海洋に金色の帯みたいなものが流れていたり、よく分からないのも面白い。

 さらに貼交形式で6×2=12人の王侯を描いた『泰西王侯図屏風』(長崎歴史文化館)の右隻、『洋人奏楽図屏風』(MOA美術館)の右隻、洋装の美女を単独で描く『洋風女性図』(堺市博物館、初見)など、興味深い、めったに見られない作品が続いた。

 江戸時代の日本人の心をとらえた銅板画家、ヨーハン・エリアス・リーディンガー(1698-1767)という名前は初めて知った。動物や狩猟をテーマとした銅版画集を多数出版しており、司馬江漢、小田野直武、亜欧堂田善らに模写されている。初期洋風画(油彩)の若杉五十八『西洋人物図』、荒木如元『鷹匠図』もリーディンガーに倣ったもの。

 司馬江漢、石川大浪については、初めて見る資料が多くて楽しかった。二人とも習作的なスケッチがとても魅力的。石川大波の『素描集』は、イタリア人画家の素描集に倣って、肖像画の描き方を練習したもの。ペン画かと思ったら、墨筆の模写というのが信じられない。江漢は『銃を持つ人物』とか『西洋職人図』の訥々とした雰囲気が、江漢らしくなくて逆によい。淡彩の『異国風景図』も魅力的。これら、全て「個人蔵」らしいのだが、誰かのコレクションなのだろうか。

 なお、ところどころに配された輸出漆器も美しかった。日本風の意匠を凝らした南蛮漆器だけでなく、海上に西洋風の帆船が並んだ「海戦図」を蒔絵で表した一群の作品があることを初めて知った。18世紀末に制作されているから意外と古い。日本の伝統蒔絵では使用しない金属粉を用いるなど、工夫が見られるそうだ。また、19世紀(江戸~明治)には、写真を螺鈿で再現した『長崎風物図螺鈿箱』がつくられている。ピンクや紫など、色が豊富で華やかな長崎螺鈿(長崎漆器)は知っていたが、こんな冒険的な作品があったとは初めて知った。最近見る、写真をそのままプリントしたクッキーや煎餅くらいの衝撃である。


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