見もの・読みもの日記

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千年の趣都・京の雅び/出光美術館

2005-10-14 10:08:59 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館『京の雅び・都のひとびと-琳派と京焼-』

http://www.idemitsu.co.jp/museum/

 最近、充実した展覧会が続く出光美術館だが、今回は、タイトルがあまりよくないと思う。ちょっと漠然としすぎていて、具体的な内容が想像できない。

 しかし、行ってみたら面白かった。近世京都の絵画・陶芸の名品を紹介したもので、特に、俵屋宗達、尾形光琳、野々村仁清など、美術史上のビッグネームにひとりずつスポットを当てた後半は、分かりやすくて面白い。

 前半は、近世初期に流行した金地屏風と、京都の”地場焼き”である楽焼によって、文化都市・京都の総体的な空間イメージに観客を案内する。

 まずは『祇園祭礼図屏風』に注目。左隻のいちばん下に、武士の集団が描かれているのだが、珍妙な”変わり兜”をかぶり、色とりどりの吹流しをなびかせ、アドバルーンのような母衣(ほろ)を背負ったところは、まるでカーニバルの伊達男だ。これって、祭礼用の仮装なのか、当時の武将のあたりまえの姿だったのか、気になる。

 次は楽焼。もともと、豊臣秀吉の命を受け、聚楽第の土を使って焼いたことから、聚楽焼(=楽焼)と呼ばれたそうだ。楽焼をまとまって見るのは、初めての経験だったが、眺めていると、手のひらがムズムズしてくる。伊万里や九谷が「見る」焼き物であるのに対し、楽焼は「触る」焼き物であるためだろう。と思っていたら、京都の楽美術館では、「手にふれる楽茶碗観賞会」を実施しているそうだ。やっぱりね!

 後半。宗達、光琳の魅力は、いまさら説明不要なので略す(お気に入りを1つだけあげると、宗達描く水墨画の虎が超かわいい!)。今回、印象に残ったのは、野々村仁清の陶芸である。京焼色絵の大成者と言われるが、なんというか、マダム好みの作風に思われて、おもしろいと思ったことがなかったのだ。しかし、宗達や光琳作品のそばに置いてみると、なるほど~、と了解するものがあった。

 それにしても、底の知れない、京都文化の厚みと深さ。先だって、オタクの街アキハバラの都市景観を論じて、「官」でも「民」でもなく、個人の趣味が絶対的な支配権を持つ”趣都”と称する論考(森川嘉一郎『趣都の誕生』)を読んだばかりだが、実は、近世までの京都こそ、政治でも経済でもなく、”趣味”によって我が国に君臨し続けた「千年の趣都」と呼べるのではないか、と思った。
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