■大津市歴史博物館 第59回企画展 法然上人没後800年記念・親鸞聖人没後750年記念『阿弥陀さま-極楽浄土への誓い-』(2012年10月13日~11月25日)
最終日に駆け込み参観。大津における浄土信仰の流れ、様々な阿弥陀如来像の姿、さらには大津市内に所在する浄土宗寺院の寺宝の数々を紹介する企画展。正直にいうと、今回は見逃してもいいかなーと思っていた。理由のひとつは、担当者が率直に語っているとおり、「重要文化財や県・市指定といった指定文化財はあまり展示せず、ほとんど未指定作品」だったこと。指定のランクにこだわるわけではないが、絶対見逃せない!と駆けつけたくなるような目玉が見当たらなかった。
それと、より大きな理由は、密教仏とか変化観音の分かりやすい面白さに比べると、阿弥陀さまって、だいたい似たり寄ったりの姿で、どこに注目したらいいのか分からない…と思っていたのだ。まあでも、せっかく関西に来たので寄っていくことにした。
入口で「展示一覧」をもらってびっくりした。100件を超す(展示替あり)出品の所蔵寺院の所在地は、大津市、大津市…のオンパレード。すごいんだな、大津って。ただし、あとでパネルの地図を見て、関東人がイメージする大津(大津駅周辺)より、実際の大津市は、ずいぶん広域であることを確認した。
導入部では、阿弥陀信仰(浄土教)の日本伝来、その根拠地となった比叡山、大津と浄土真宗の密接なかかわりを概観する。法然・親鸞の写実的な木像は、それぞれ小さな姿に気迫がこもっていて、魅力的だった。
金色に輝く浄土を描いた観経変相図(当麻曼荼羅)の優品。季節がら、ちょっとクリスマスっぽいな、などと思う。そして、いよいよ大津市内の阿弥陀さまがズラリとお出まし。全て、螺髪、簡素な衣、右手を胸の前に上げ、左手を垂らした直立像、大きさも同じくらいなので、いつもなら飽きてげんなりするところだ。しかし、解説を読みながら、1体1体見比べていくと、きちんと個性を備えていることが分かってきた。ほかの作品との対照によって、仏師○○系統の作、というような推測が、それぞれに下されている。
個人的には、行快の作風を受け継いでいるという西福寺の阿弥陀さまが好きだ。アクの強さがいいんだよなーと思ったのだが、あとで図録を読んだら「行快の持つ独特のあくの強さは感じさせません」とあった。でも他の阿弥陀さまに比べると、個性は強いと思う。上品寺の阿弥陀さまも好き。張りのある丸顔、ぽってりした唇が特徴的。「仏師善円の作風に近い」のだそうだ。しかし、仏師(工房)によって、これだけ個性があると、施主の側も、どの仏師に造仏を依頼するかは大問題だったろうな、と思った。
別のコーナーに移動して、あれ?と思う。さきほどの一連の像とは逆に、左手を上げ(曲げ)、右手を垂らした、いわゆる「逆手の来迎印」の阿弥陀さまが特集されていた。解説に、この姿は小野市(兵庫県)・浄土寺の阿弥陀如来が著名で、入宋僧・重源のアイディアと考えられている、とあった。おお~、前々日に小野の浄土寺を初拝観したばかりの私は、この会場で、浄土寺の阿弥陀如来に対する言及にふれようとは思ってもいなかったので、奇縁を感じた。「逆手の来迎印」とは、正確には、左手を曲げて仰掌し、第一指・三指を捻じるもの。浄土寺の本尊の手のかたちを思い出そうとするが、記憶がはっきりしない…。中国・宋、朝鮮・高麗の阿弥陀図には多いというから、今度から気をつけてみよう。
鎌倉・南北朝・室町時代の仏画もたくさん出ており、「初公開」が多いことに驚かされた。山越阿弥陀の巨大な頭部だけを描いた図(横川伝来)には笑ってしまった。こんな山越阿弥陀図もあるんだな。
第1室で見落としそうになったのは、西教寺の阿弥陀如来に関するパネル展示。丈六(約2.5メートル)の本尊は、平安時代の飛天光背を備えている。この本尊と飛天および化仏(作風が少しずつ異なる)を臨場感豊かに、パーツごとの拡大写真を配置して見せてくれたもので、とっても面白かった。
第2室は、大津市内の浄土宗寺院が所蔵するさまざまな宝物を紹介。ここも「初公開」多し。乗念寺の古様の聖観音立像、いいなあ。めずらしい木造達磨大師像(南北朝時代。目が大きく、肉付きがよくて若々しい。無髯)もあったが、寺院名非公開とのこと。六道絵や十六羅漢図(どちらも新知恩院)も素晴らしかった。
最後に、ものすごいキラキラの阿弥陀三尊像があって、なんだろう、新造の仏像かしら、と思って近づいたら「浄国寺・鎌倉時代」とあって、びっくりした。つるつるの金箔を施し、頭髪も青く塗られているが、像そのものは鎌倉後期の院派の可能性があり、さらに繊細な金銅光背(金のレースみたい!)も当時のものだそうだ。
やっぱり大津はすごい地域である。貴重な文化財をまとめて拝見することができて、大満足だが、次は、自分の足で大津市内の各寺院を、実際に訪ね歩いてみたいと思った。
最終日に駆け込み参観。大津における浄土信仰の流れ、様々な阿弥陀如来像の姿、さらには大津市内に所在する浄土宗寺院の寺宝の数々を紹介する企画展。正直にいうと、今回は見逃してもいいかなーと思っていた。理由のひとつは、担当者が率直に語っているとおり、「重要文化財や県・市指定といった指定文化財はあまり展示せず、ほとんど未指定作品」だったこと。指定のランクにこだわるわけではないが、絶対見逃せない!と駆けつけたくなるような目玉が見当たらなかった。
それと、より大きな理由は、密教仏とか変化観音の分かりやすい面白さに比べると、阿弥陀さまって、だいたい似たり寄ったりの姿で、どこに注目したらいいのか分からない…と思っていたのだ。まあでも、せっかく関西に来たので寄っていくことにした。
入口で「展示一覧」をもらってびっくりした。100件を超す(展示替あり)出品の所蔵寺院の所在地は、大津市、大津市…のオンパレード。すごいんだな、大津って。ただし、あとでパネルの地図を見て、関東人がイメージする大津(大津駅周辺)より、実際の大津市は、ずいぶん広域であることを確認した。
導入部では、阿弥陀信仰(浄土教)の日本伝来、その根拠地となった比叡山、大津と浄土真宗の密接なかかわりを概観する。法然・親鸞の写実的な木像は、それぞれ小さな姿に気迫がこもっていて、魅力的だった。
金色に輝く浄土を描いた観経変相図(当麻曼荼羅)の優品。季節がら、ちょっとクリスマスっぽいな、などと思う。そして、いよいよ大津市内の阿弥陀さまがズラリとお出まし。全て、螺髪、簡素な衣、右手を胸の前に上げ、左手を垂らした直立像、大きさも同じくらいなので、いつもなら飽きてげんなりするところだ。しかし、解説を読みながら、1体1体見比べていくと、きちんと個性を備えていることが分かってきた。ほかの作品との対照によって、仏師○○系統の作、というような推測が、それぞれに下されている。
個人的には、行快の作風を受け継いでいるという西福寺の阿弥陀さまが好きだ。アクの強さがいいんだよなーと思ったのだが、あとで図録を読んだら「行快の持つ独特のあくの強さは感じさせません」とあった。でも他の阿弥陀さまに比べると、個性は強いと思う。上品寺の阿弥陀さまも好き。張りのある丸顔、ぽってりした唇が特徴的。「仏師善円の作風に近い」のだそうだ。しかし、仏師(工房)によって、これだけ個性があると、施主の側も、どの仏師に造仏を依頼するかは大問題だったろうな、と思った。
別のコーナーに移動して、あれ?と思う。さきほどの一連の像とは逆に、左手を上げ(曲げ)、右手を垂らした、いわゆる「逆手の来迎印」の阿弥陀さまが特集されていた。解説に、この姿は小野市(兵庫県)・浄土寺の阿弥陀如来が著名で、入宋僧・重源のアイディアと考えられている、とあった。おお~、前々日に小野の浄土寺を初拝観したばかりの私は、この会場で、浄土寺の阿弥陀如来に対する言及にふれようとは思ってもいなかったので、奇縁を感じた。「逆手の来迎印」とは、正確には、左手を曲げて仰掌し、第一指・三指を捻じるもの。浄土寺の本尊の手のかたちを思い出そうとするが、記憶がはっきりしない…。中国・宋、朝鮮・高麗の阿弥陀図には多いというから、今度から気をつけてみよう。
鎌倉・南北朝・室町時代の仏画もたくさん出ており、「初公開」が多いことに驚かされた。山越阿弥陀の巨大な頭部だけを描いた図(横川伝来)には笑ってしまった。こんな山越阿弥陀図もあるんだな。
第1室で見落としそうになったのは、西教寺の阿弥陀如来に関するパネル展示。丈六(約2.5メートル)の本尊は、平安時代の飛天光背を備えている。この本尊と飛天および化仏(作風が少しずつ異なる)を臨場感豊かに、パーツごとの拡大写真を配置して見せてくれたもので、とっても面白かった。
第2室は、大津市内の浄土宗寺院が所蔵するさまざまな宝物を紹介。ここも「初公開」多し。乗念寺の古様の聖観音立像、いいなあ。めずらしい木造達磨大師像(南北朝時代。目が大きく、肉付きがよくて若々しい。無髯)もあったが、寺院名非公開とのこと。六道絵や十六羅漢図(どちらも新知恩院)も素晴らしかった。
最後に、ものすごいキラキラの阿弥陀三尊像があって、なんだろう、新造の仏像かしら、と思って近づいたら「浄国寺・鎌倉時代」とあって、びっくりした。つるつるの金箔を施し、頭髪も青く塗られているが、像そのものは鎌倉後期の院派の可能性があり、さらに繊細な金銅光背(金のレースみたい!)も当時のものだそうだ。
やっぱり大津はすごい地域である。貴重な文化財をまとめて拝見することができて、大満足だが、次は、自分の足で大津市内の各寺院を、実際に訪ね歩いてみたいと思った。