見もの・読みもの日記

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知られざる名品も/琳派と印象派(アーティゾン美術館)

2021-01-20 21:52:53 | 行ったもの(美術館・見仏)

アーティゾン美術館 『琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術』(2020年11月14日~2021年1月24日)

 去年くらいから、聞いたことのない美術館の展覧会が話題になっているなと思っていたら、2015年5月から休館していたブリヂストン美術館が、2020年1月に「アーティゾン美術館」として開館していた。

 本展は、京都の町人文化として生まれ、江戸(現在の東京)に引き継がれた琳派と、19世紀後半のフランス・パリに誕生した印象派、東⻄の都市文化が生んだ天才画家たちの作品を通して、大都市ならではの洗練された美意識の到達点を比較しつつ見渡そうとする試みである。

 私は2006年に石橋財団の設立50周年を記念して、旧ブリヂストン美術館が開催した『雪舟からボロックまで』を見ており、西洋美術の美術館だと思っていた同館に、雪舟、応挙などの日本・東洋美術がら所蔵されていることを知って、けっこう驚いた記憶がある。本展では、さらに国内の寺院、美術館、博物館からの出陳を加え、国宝2点、重要文化財7点を含む約100点の作品で構成されている。

 冒頭に展示されていたのは歴博の『江戸図屏風』。赤い傘に顔を隠した家光らしき人物が描かれているもの。酒井抱一の『夏図』3幅(十二ヶ月図のうち)は笹に巻き付いた麦藁の蛇がかわいい。伝・宗達筆の伊勢物語色紙のうち、鹿皮の行縢(むかばき)をつけた狩装束(頭は立烏帽子)の貴公子が黒馬にまたがる「初冠」は個人蔵。縁側に座った男が、簾の中の女と対峙する「彦星」(アーティゾン美術館蔵)はどんな物語だったかしら。

 相国寺の『蔦の細道図屏風』や根津美術館の『白楽天図屏風』も来ていて、なんだかとても得をした気分になった。極めつけは宗達の『風神雷神図屏風』(建仁寺所蔵、12/22-1/24展示)だろう。新年からこんな名宝を見られるなんて、大幸運だと思った。屏風の前にドガ作の小さな踊り子の彫像が2点並べてあったのは、風神雷神と躍動感を競わせようとしているみたいで面白かった。

 アーティゾン美術館の所蔵品で印象的だったのは、光琳の『孔雀立葵図屏風』。金地で左隻は紅白の立葵、右隻は金地に墨画(淡彩?)で雌雄の孔雀を描く。わざと彩色を避けた右隻が豪華で上品。伊年印『源氏物語図 浮舟、夢浮橋』は小さな画面に山・川・船・車・紅葉などが装飾的に配置されている。しかし船の中の男女、これ物語的にはかなり緊張のシーンのはず。視覚的な美しさによって物語の残酷さが増す。

 とても気になったのは宗達工房の『保元平治物語絵扇絵』3面。1枚目は青い衣の男が、横たわる白い衣の男の肩を抱えて(袖で頭を隠すようにして)泣いているのである。あとで自分のブログを読んだら、2006年の『雪舟からボロックまで』のときも、私はこの扇面絵に反応していた。好みは変わらないものだな。

 いま買ってきた図録を見ながら記事を書いているのだが、図録は、琳派作品と印象派作品が交互に登場する構成になっている。会場は、残念ながら、それほど混淆的でなく、前半は琳派の間に、たまに印象派が混じる程度、後半はほぼ全て印象派だった。やはり画材が違うと適切な環境も違うだろうから、混ぜて展示は難しいのかなと思う。


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