見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年8月関西旅行:大阪市美、藤田美術館

2022-08-19 22:47:48 | 行ったもの(美術館・見仏)

大阪市立美術館 特別展『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』(2022年7月16日~9月25日)

 お盆旅行2日目は大阪から。修復後、所蔵館以外で初公開となるフェルメールの『窓辺で手紙を読む女』に加え、オランダ絵画黄金期を彩る珠玉の名品約70点を展示する。この展覧会も、1~4月の東京都美術館を見逃したので、大阪で見ることにした。お盆のせいか、あまり混んでいなくて快適だった。冒頭から、よく知らない画家の小品が続くのだが、「寓意」の解説がとても面白かった。鶏を手渡す行為は性愛を意味するとか、片方だけの靴は処女性の喪失の象徴とか…。猫は官能的誘惑の象徴、楽器を演奏する女性は男性を誘惑する娼婦など、まあ「分かる」ものもあれば、蔦に覆われた枯木は不道徳な男女関係を表わす、なんて、日本人にはちょっと想像できないものもあった。「すべてのオランダ絵画になんらかの寓意が込められているわけではないが」という断り書きもあって、苦笑してしまった。これらは、所蔵館の学芸員さんが原文を書いているのかな?

 また『冬の川景色』(ヤン・ファン・ホイエン、1643年)だったと思うが、1550年~1700年のヨーロッパ北西部は小氷河期だったという解説に膝を打った。17世紀オランダ絵画には、雪遊びやスケートを描いた作品が多い印象を持っていたので。

 最後の部屋に展示されていたのが『窓辺で手紙を読む女』。窓辺で手紙を読む女性の横顔を描いた作品だが、無機質な灰色の壁にキューピッドの画中画が描かれていたことが分かり、近年、上塗りを取り除いて、当初の姿に修復(復原)する作業が行われたという。会場には、修復前の縮小複製画も展示されており、両者を見比べることができる。修復作業によって、手前の机か寝台の上の毛織物の赤と青が鮮やかになり、窓の外も明るくなって、全体に華やかな印象になった感じがした。キューピッドは、愛の勝利の寓意だというが、主題が分かりやす過ぎて、消してみたくなる気持ちもわかる。

藤田美術館 『水』(2022年7月1日~9月30日)『花』(6月1日~8月31日)『獣』(8月1日~10月31日)

 大規模改修工事のため休館していた同館が、2022年4月にリニューアルオープンしていた。地下駅の大阪城北詰で下車して階段を上がると、いきなり、見たこともないモダンな施設が現れて、あっけにとられてしまった。

 ガラスに囲まれた、開放的なロビーに入ると、固定の受付デスクはなく、カフェエプロンのような制服の女性が「こんにちは~」と近づいてくる。新幹線の車内販売みたいなモバイル端末で入館チケットを購入するのだが、「できればキャッシュレスで」と言われたので、パスモで決済する。また、自分のスマホで館内Wifiに接続し、QRコードを読み込み、藤田美術館のサイトにアクセスするよう誘導される。館内に展示解説は用意していないので、必要があれば、サイトの情報を見るよう指導された。そして展示室へ。この入口は、以前の施設から移築したもので、懐かしかった。

 現在の展示は「水」「花」「獣」の3つのテーマで約30件。「水」には『玄奘三蔵絵』が出ている。第6巻はナーランダの寺院で、庭に多頭のマーライオンみたいな噴水あり。建物の中に水を張った泉殿が珍しいけど、中国ドラマには時々出てくる造りだ。第9巻は龍頭の船で川下り。「花」には寸松庵色紙(素性・こづたへば おのがはかぜに ちる花を たれにおほせて ここらなくらむ)と升色紙(清原深養父・山桜見て/はるがすみ なにかくすらん やまざくら ちるまをだにも みるべきものを)が出ていた。寸松庵色紙の字姿が好き。「獣」では、精巧なフィギュアみたいな神鹿を収めた『春日厨子』と、ちょっとこわもての『春日明神影向像』が印象に残った。

 なお、館内Wifiでアクセスしたときは、展示品一覧のページ(例:花)から個別作品の詳細解説を開けたのだが、自宅のネットでアクセスすると、詳細解説に飛べないようになっている。え?意図的?と思ったが、Googleで「藤田美術館△寸松庵色紙」を検索すると、ちゃんと詳細解説ページが出てくるのでいいことにする。

 しかし最近の美術館のリニューアルは、展示品の数を減らす傾向にあるのが残念である。私は欲張りなので、できれば1回の入館で、なるべくたくさんの展示品を見たいのだ。館内カフェ「あみじま茶屋」のお値段は、まあまあリーズナブルなので、いずれ機会があれば使ってみよう。

 次は、奈良に向かった。


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