見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

謎解きは半歩ずつ/中華ドラマ『慶余年2』

2024-07-15 21:58:33 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『慶余年』第2季:全36集(上海騰訊企鵝影視文化伝播有限公司他、2024年)

 2019年の第1季から待つこと5年、ようやく続編が公開された。私は配信開始から少し遅れて視聴を始めたので、第1季と比べて評価を受けていることは、漏れ聞こえていた。しかしそれは期待値が上がり過ぎた結果で、公平に見れば、十分おもしろかったと思う。

 南慶国の勅使として北斉国に送られた范閑は、その帰路、二皇子の使者・謝必安から二皇子の謀略の次第を聴かされ、同僚・言冰雲の刃を受けて倒れる(ここまでが第1季)。范閑死すの報せは、たちまち南慶国に伝わるが、これは范閑と言冰雲が仕組んだ芝居だった。范閑はひそかに南慶国に潜入し、二皇子に捕えられたと思しい、亡き滕梓荊の妻子を探すが見つからない。

 范閑は再び勅使の列に戻り、生きていたことを明らかにして堂々の帰国。皇帝を偽った罪は不問に付され、監査院一処の主務に任命される。さらに科挙の責任者の大役を果たして宮廷の重臣となり、林婉児との結婚も許される。この厚遇には理由があり、范閑が慶帝と葉軽眉(監査院の創設者)の間の子供だったことが本人に明かされ、周囲も知るところとなる。

 おもしろくないのは、范閑と敵対する二皇子。都を追放された長公主とのつながりも消えていない。一方、太子とその生母の皇后は、二皇子一派に対抗するため范閑との友好関係を保っていたが、范閑も皇子の一人と知って動揺する。慶帝は、范閑以外の臣下や皇族たちへの冷酷な振舞いを徐々に垣間見せる。

 林婉児と結婚した范閑は、南慶国の財力の根本である「内庫」を相続するが、その内庫には全く資産がないことが判明する。そこで南慶国の商人たちに投資を呼びかけ、当面の資金を調達するとともに、内庫の商品を製造している江南の実情を探りに出かける。江南で范閑を待ち受けていたのは、この地方を牛耳る明家の老婦人と息子の当主・明青達。范閑は旅立ち前に慶帝を狙った刺客と大立ち回りを演じて負傷し、まだ内力が回復していない。あわやの危機を救ったのは、北斉国から駆けつけた海棠朶朶。持つべきものは友人である。

 というのがだいたいの粗筋だが、問題は何ひとつ解決せず(むしろ雪だるま式に増えて)第三季に持ち越した印象である。まあ范閑の父親が明らかになり、林婉児と結婚したことが多少の「進展」と見做せないわけではないが。滕梓荊の妻子の安否は不明のまま。監査院院長の陳萍萍が何を考えているかは相変わらず謎(今季は妙に筋トレに励んでいたのと贅沢な私生活を送る自宅が出て来た)。范閑の守護者・五竹は、彼にそっくりの「神廟使者」との一戦があって、尋常の人間ではない(ロポットかアンドロイド?)ことだけは明らかになった。科挙の縁で范閑の門下生になった史闡立の活躍はこれからかな。彼の故郷・史家鎮は、長公主と二皇子が私腹を肥やすための密貿易の現場だったが、太子が捜査の手を伸ばしたときは、村ごと焼き滅ぼされていた。この真相究明も道半ば。

 北斉行で活躍した高達の出番が序盤だけだったのは残念。新たな登場人物では、辺境暮らしが長く、太子と二皇子の権力争いから一歩身を引いた大皇子に好感を持った。大皇子に嫁入り予定の北斉大公主は、美人なのにちょっとトロくて微笑ましい。演じる毛暁彤うまいなあ。監査院一処で范閑の下僚となった鄧子越を演じる余皑磊も好きな俳優さんなので嬉しい。陳萍萍や范閑らの収賄・蓄財を批判して慶帝に嫌われ、あっという前に消された硬骨の老臣・頼名成を畢彦君など、名優を贅沢に使うドラマである。明青達の寧理は第三季の活躍に期待していいのだろうか。

 第一季に比べるとアクション(武闘)シーンは少なめだったが、見せ場(范閑vs刺客、五竹vs神廟使者)はスリリングで手抜きがない。あと、若若がただの貞淑な女子ではなく、外科医の才能に目覚めるのも面白かった。

 本編が、大学生の長慶が葉教授に読ませる創作物語の形式を取っているのは第一季と同じ。ただ冒頭で葉教授が周りの人々に「范閑は死んだんですか?」と繰り返し聞かれていたり、第二季を読み終わったあと「また何年も待たされるの…」とため息をつくなど、メタ物語に念が入っている。第三季、配役をなるべく変えずに作ってほしいなあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする