見もの・読みもの日記

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愛と許しの物語/中華ドラマ『倚天屠龍記』(2019年版)

2019-05-13 23:32:30 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『倚天屠龍記』全50集(2019年、騰訊視頻)

 金庸作『倚天屠龍記』の映像化は、2009年の張紀中プロデュース版以来、10年ぶりらしい。2009年版は2012年くらいにネットで見た。世界遺産の武当山ロケをはじめ、映像は美しかったが、物語は分かりにくかった。その後に原作の翻訳も読んだが、やっぱり腑に落ちなかった。題名の影響で、天下の権力の帰趨を決める、倚天剣と屠龍刀の争奪戦が主題だと誤解してしまうのがいけないのだ。それは物語をまわすための仕掛けに過ぎず、実際のメインテーマは「愛」なのである。今回は、そう思って視聴を始めたので、違和感なく視聴を続けられた。

 本作の物語世界には、正派と邪教という厳格な対立があるように見えて、それを愛によって乗り超えるカップルが次々に登場する。正派・武当七侠のひとり張翠山は、邪教と恐れられる明教(マニ教)の一派・天鷹教の教主の娘・殷素素を愛し、明教の「金毛獅王」謝遜とともに氷火島に流れつく。そこで張翠山と殷素素の子として生まれた張無忌は、謝遜を義父と慕って育ち、本土に帰ったあとは、武当派の師父たちにも、天鷹教の祖父や伯父さんにも可愛がられる。

 また、武当派の殷梨亭は、峨眉派の女侠・紀曉芙と婚約していたが、紀曉芙は、邪教・明教の光明左使こと楊逍を愛し、姿を消す。紀曉芙がひとりで生み育てた女子には「不悔」という名前を付けていた。不悔は張無忌に探し出され、父・楊逍に引き取られる。その不悔が愛したのは、なんと父の恋敵だった殷梨亭。金花婆婆(紫衫龍王)と韓千葉(銀葉先生)の関係、悪の道に踏み込んだ周芷若を気遣い続ける宋青書にも「愛こそ全て」の形象が感じ取れる。そして、明教の教主として武林各派を糾合し、元に対する反乱軍を指揮する張無忌が、同志たちの疑惑や反対を押し切って、元(モンゴル)の郡主・趙敏を選ぶのは、物語の展開上、必然と言える。

 本作で私が一番好きな女性キャラは周芷若。師父の滅絶師太から「峨眉派の栄光を輝かせよ」という呪いをかけられ、手段を選ばない悪行に手を染める。しかし、謝遜に教えられて、最後は悔悟する。謝遜自身も、かつて暴虐と殺戮を繰り返し、多くの敵をつくった前非を悔い、仏門に入って安心を得る。周芷若を演じた祝緒丹という女優さんは、大きな目がチャームポイントで、可愛いだけかと思ったら、邪悪化した後がとても魅力的だった。滅絶師太(周海媚)がギスギスしたおばさんでなく、色っぽい中年美人なのも逆に現実味があってよかった。

 主役・張無忌の曾舜晞(ジョゼフ・ゼン)は、物分かりがよく真面目な好青年ぶりを好演。だが、2009年版の張無忌はもっとチャランポランだった気がする。本作は、お前がいいひと過ぎるから、いろいろ面倒なことが起きるんだよ!と叱りつけたくなることもあった。

 しかし何と言っても本作の収穫は、林雨申が演じた楊逍のイケメンぶり。髭なしの若い頃もいいし、髭ありの中年楊逍もよい。古装劇は初めての俳優さんだそうで、ぜひまた出てほしい。楊逍人気の影に隠れてしまったけど、光明右使・范遥を演じた宗峰岩も、いつもより若々しい役でよかった。他にもこの作品で新たに知った俳優さんが多数。また違う作品で会うのを楽しみにしている。


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